【有馬記念】中心は10年で4勝、7連対の3歳馬 展開のカギを握るのはタイトルホルダー
勝木淳
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最近は堅調な決着多く
2023年も無事に有馬記念を迎える。その後もホープフルSがあり、東京大賞典もあり、その翌日も競馬は行われ、正月も競馬があるので、馬券納めも馬券初めもなにもないが、有馬記念がやってくると、ふと、ひと息つきたくなる。競馬の忘年会は1年間競馬をがんばってきたファンへ贈る、関係者からのクリスマスプレゼントだ。
なお、クリスマスイブの有馬記念は2000年以降3回あり、テイエムオペラオー、ディープインパクト、キタサンブラックとその年を象徴する馬が1番人気で勝った。データは過去10年分を使用する。
かつては大穴馬券が出現する年末の宝くじのようなこともあったが、近年は1番人気【6-1-1-2】勝率60.0%、複勝率80.0%と圧倒的だ。1番人気が勝ち、多くの人が馬券を的中させ、ハッピーエンドへ。これが最近の有馬記念でもある。
2、3番人気それぞれ【1-1-3-5】勝率10.0%、複勝率50.0%で、基本は上位人気で手堅く攻めたい。6番人気以下の馬券絡みもあるにはあるが、確率的に狙いたいほどでもない。5番人気以内を組み合わせる。これが基本線だ。
ここ2年3歳馬が連勝中で、3歳【4-3-2-16】勝率16.0%、複勝率36.0%が馬券の中心になる。タスティエーラ、ソールオリエンスのクラシックホースが登録した今年、まずは斤量差2キロの3歳から検討した方がよさそうだ。古馬勢は4歳【2-4-2-37】勝率4.4%、複勝率17.8%、5歳【4-3-5-45】勝率7.0%、複勝率21.1%とわずかに5歳勢が上もほぼ互角。斤量差がある3歳以外は五分とみていい。
中山芝2500mのスタート地点は外回り3コーナーの手前。発馬後すぐにコーナーに突入するため、8枠【0-0-1-19】複勝率5.0%、7枠【0-1-3-16】複勝率20.0%と外枠の成績が悪い。位置取り争いで外を通らざるを得ない外枠は位置をとりにくく、さらにうまく隊列に入れないと序盤で馬のリズムを整えられず、体力を消耗してしまう。乗り方が難しい枠だということは忘れないでおこう。5枠から内側に大きな隔たりはなく、6枠から外に向けて徐々に割り引いていこう。
兄アイアンバローズが踏ん張れば、ジャスティンパレスが台頭
イクイノックス、リバティアイランドこそいないものの、この秋見せ場を作った馬や実績馬が相当そろい、今年は実力伯仲、馬券偏差値高めの争いになりそうだ。ここからは前走成績を参考にしっかりチェックしよう。
前走国内GⅠは【7-8-8-89】勝率6.3%、複勝率20.5%と最有力。残る好走例は前走海外【2-1-2-5】勝率20.0%、複勝率50.0%が大半を占める。スルーセブンシーズの凱旋門賞が【1-1-2-5】勝率11.1%、複勝率44.4%。タイトルホルダーやディープボンドがこのローテで負けており、基本はダメージを心配したくなる。スルーセブンシーズは4着と最後まで力を出し切った印象もあり、どこまで回復しているか、状態面を見極めよう。なお、ウインマリリンの米国遠征組は出走がない。引退レースであり、無理な仕上げはなさそうだ。
スルーセブンシーズの父ドリームジャーニーは09年宝塚記念、有馬記念の勝ち馬で、グランプリに滅法強いステイゴールド系。逆境に強く、最後の最後もっとも苦しい場面で火事場の馬鹿力的強さを発揮する。スルーセブンシーズもここ2走はそんな走りを見せていて、見限れない。年明けは3勝クラスに所属しており、今年最大の上がり馬でもある。勢いは侮れない。
話を国内戦線に戻そう。前走GⅠの内訳は天皇賞(秋)【3-2-1-12】勝率16.7%、複勝率33.3%、ジャパンC【2-2-4-44】勝率3.8%、複勝率15.4%、菊花賞【2-2-2-7】勝率15.4%、複勝率46.2%が基本路線で、エリザベス女王杯【0-2-1-21】複勝率12.5%まで。
天皇賞(秋)は3着以内【3-1-1-2】なので、好走が条件になる。ジャスティンパレスは流れが厳しくなりスタミナ勝負になれば台頭しそうだ。タイトルホルダーと兄アイアンバローズがどこまで意識し合うのか。弟としては兄にがんばってもらいたい。
間隔が中3週と詰まるジャパンCはやや分が悪い。着順内訳も必ずしも上位好走が条件でもなく、5着【0-1-0-1】以内はゾーンに入る。スターズオンアース、ドウデュース、タイトルホルダーは候補だ。ルメール騎手に戻るスターズオンアース、武豊騎手が帰ってくるドウデュース、そして引退レースのタイトルホルダー。三者三様で面白い。
タイトルホルダーは昨年、凱旋門賞帰りで状態面に不安があったが、今年は順調にきた。有馬記念は前半の流れ次第で長距離寄りか中距離寄りか、問われる適性が入れ替わる。自身が残るには前半から厳しい流れを演出したいところだろう。
3歳も流れ次第
菊花賞は勝ち馬が優勢で、2着【0-1-0-0】、3着【0-0-0-3】。4着馬から勝ち馬(18年ブラストワンピース)も出ており、3着馬がダメというのもおかしな話ではある。今年のクラシックは皐月賞がハイペース、ダービーが平均寄りのスローペース、菊花賞もスロー。体力勝負ならソールオリエンス、切れ味勝負というか、位置取り優先ならタスティエーラだろう。どちらの父も宝塚記念か有馬記念を勝っており、早めに仕掛ける展開は合う。
最後に伏兵の資格を持つエリザベス女王杯組にも触れる。牝馬は2019年勝ち馬リスグラシュー以降、4年連続で馬券に絡んでおり、トレンドでもある。同レース組の着順内訳は2着以内【0-1-1-5】、3、4着【0-0-0-6】、6~9着【0-1-0-4】。今年の該当馬、3着ハーパー、4着ライラックはデータ上苦しく、牝馬を買うなら別路線組のスターズオンアースかスルーセブンシーズだろう。
上記の通り、有馬記念は流れ次第で適性が大きく変わる。昨年のようなスローなら中距離タイプ、平均以上に流れれば最後は体力勝負になり、ステイヤーに微笑む。さて、今年はどうなるのか。まずはここを読み切ってほしい。タイトルホルダーが万全ならスローはなさそうだが、同馬はここ2年、そこまで飛ばしていない。日経賞もスローを演出しており、どちらに出るのか読みにくい。力関係が拮抗している今年は展開の読みが馬券に大きくつながるだろう。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
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