2023年に産駒がデビューする新種牡馬まとめ　日本馬の筆頭・レイデオロは「ディープ牝馬」との配合で期待

2023/01/10 06:00

緒方きしん

ⒸSPAIA

2023年の新種牡馬を紹介

今回は、2023年に産駒がデビューを迎える新種牡馬たちを紹介する。種付け料・種付け数から高い評価がうかがえるのはどの馬だろうか。

超豪華！　期待大の輸入種牡馬たち

ディープインパクト・キングカメハメハという二大種牡馬が世を去り、種牡馬の戦国時代とも言える生産界。その中で、改めて存在感を示しているのが輸入種牡馬である。そもそも日本競馬界は、サンデーサイレンスをはじめ、テスコボーイ、ノーザンテースト、トニービン、ブライアンズタイムといった輸入種牡馬たちが支えてきたと言っても良いほどだ。

昨年は新種牡馬ドレフォンが皐月賞馬ジオグリフを輩出。他にもアメリカンペイトリオットがスプリングS勝ち馬ビーアストニッシド、ザファクターがラジオNIKKEI賞2着馬ショウナンマグマを輩出している。

そして今年の新輸入種牡馬たちのラインナップは、昨年を超える実績を残しそうな雰囲気が漂っている。その筆頭は、ブリックスアンドモルタル。ブリーダーズカップターフやペガサスワールドカップターフといった芝の大レースを制して年度代表馬にも選出されたアメリカの名馬が、名門・社台スタリオンステーションにて種牡馬入りを果たしている。

柔軟性の高い馬体、Storm Birdの3×3というスピードを感じさせる配合、父に大種牡馬Giant's Causewayがいる血統と、実績面のほかにプラス要素が多いのも特徴。やや晩成の感はあるが、初年度からクラシック路線での活躍が期待される。初年度から、ブリッツフィナーレ（キセキの母）やオーマイベイビー（ステラヴェローチェの母）、サトノユリア（ジュンライトボルトの叔母、エアグルーヴの孫）などディープインパクトの血が入った良繁殖たち、マイネカンナやフォーエバーマーク、アニメイトバイオといった重賞馬たちとの配合が積極的にされた。中でもマーメイドS勝ち馬マキシマムドパリとの牡馬にはセレクトセールで1億3500万の値がついている。

現役時代の実績という意味ではブリックスアンドモルタル以上とも言えるのが、カリフォルニアクローム、アニマルキングダムという2頭のケンタッキーダービー馬。ドバイワールドカップを連覇したサンダースノーも、日本のアウォーディーと対戦した馬として記憶に残っているファンも多いだろう。すでにアメリカで種牡馬実績を残しているニューイヤーズデイにも国内外から熱い視線が送られるはずだ。

国内実績馬がズラリ

対する日本馬たちも豪華絢爛。特に、ダービー馬レイデオロに集まる期待は非常に高い。昨年のセレクトセールではラルケットの2021（ステルヴィオの半弟）に、その日の落札価格にして4番目の2億2000万という高値がついた。ディープインパクトと同じ牝系でありつつ、サンデーサイレンスを持たない血統のレイデオロは、現役時代から種牡馬としての活躍を確信する声があがっていたほど。ダービーと天皇賞（秋）を制し、ジャパンCや有馬記念でも2着と中距離の王道路線で活躍してきたが、自身を超える産駒を送り出したいところだ。

レイデオロとディープインパクト産駒牝馬の配合ならばディープインパクトの母である歴史的名牝ウインドインハーヘアの4×3が実現するという点も魅力で、この牝系クロスを求めて多くの牝馬が集まった。ジャパンCと秋華賞を制したショウナンパンドラ、オークス馬シンハライト、ヴィクトリアマイルを連覇したヴィルシーナ、エリザベス女王杯勝ち馬ラキシスといったディープ牝馬たちとの産駒に期待したい。

レイデオロが制したダービーで2着だったスワーヴリチャード（父ハーツクライ）も、大阪杯・ジャパンC制覇の実績とともに種牡馬入り。そして同じくハーツクライ産駒のジャパンC勝ち馬シュヴァルグランも今年が産駒デビュー年と、ハーツクライ後継種牡馬争いも盛り上がりを見せてきている。すでにGⅠ馬ダノンザキッドを輩出したジャスタウェイ以上の活躍を目指す。シュヴァルグラン産駒には、セレクトセールで9800万もの落札価格となった牝馬（ラリズの2021）も控えている。

ダート馬では、フェブラリーS勝ち馬モーニンが多くの牝馬を集めた。デビューから4連勝、UAEダービー2着のエピカリスも類稀な素質馬であり、自身の果たせなかったGⅠ制覇の夢を産駒に託す。

第二のシルバーステートを狙うディープ種牡馬たちも

ディープインパクト産駒の新種牡馬で1番多くの牝馬を集めたのは、良血馬アルアイン。こちらは皐月賞・大阪杯という実績に加え、母に米GⅠ馬ドバイマジェスティ、弟にダービー馬シャフリヤールという血統的な裏付けがあることも魅力だ。シャフリヤールが現役のうちに種牡馬としてスタートダッシュを切りたいところ。オールザウェイベイビー（朝日杯FS勝ち馬ゴスホークケンの母）のように、ディープインパクトと配合されていた良血牝馬たちが回ってきていることからも、いきなり活躍馬を出しそうな雰囲気はある。

ダービー馬ロジャーバローズにも、当然ながら高いレベルでの活躍を願う。12番人気の伏兵評価でダービーを制したのが結果的にラストランとなったことでその強さは意見が分かれるところかもしれないが、近親に歴史的名馬ジェンティルドンナや重賞馬ドナウブルーがいる良血は疑いようもない。ジェンティルドンナは母としてもエリザベス女王杯の勝ち馬ジェラルディーナを輩出していて、今後も牝系が繁栄していくことが見込まれる。ロジャーバローズも父系として血を広めていくポテンシャルはあるはずだ。

昨年は重賞未出走馬のシルバーステートが、初年度からウォーターナビレラを輩出し話題となった。数えきれないほどのGⅠ馬がいるディープインパクト産駒たちを相手に、自身の血統と素質で活躍馬を出すタイプのディープインパクト種牡馬も探したい。その筆頭はヘンリーバローズ。シルバーステートの全弟という血統馬であり、2戦1勝で引退。その1敗ものちのダービー馬ワグネリアンと、戦績的には底を見せていない。ダービー3着で引退となったアドミラブルも、フサイチコンコルド・ヴィクトリーらを輩出しているバレークイーンの牝系で、血統的な魅力は高い。ミッキーグローリーやサトノアレスもきっかけひとつで大物を出しても不思議はない存在だ。

種付け数トップはレイデオロ

【種付け数上位馬の種付け料】
レイデオロ　600万円(受胎確認後)　196頭
モーニン　50万円(受胎条件)　190頭
ブリックスアンドモルタル　600万円(受胎確認後)　178頭
ニューイヤーズデイ　300万円(受胎確認後)　158頭
カリフォルニアクローム　400万円(受胎条件)　143頭
サンダースノー　250万円(出生条件)　152頭
シュヴァルグラン　80万円(受胎条件)　128頭
スワーヴリチャード　200万円(受胎確認後)　123頭
アニマルキングダム　120万円(前払不受胎返還)　117頭
アルアイン　120万円(受胎条件)　104頭

今年の新種牡馬で種付け頭数トップはレイデオロの196頭。2022年から700万円と種付け料があがっていることからも、産駒の順調さが伺える。ルーラーシップ、ロードカナロアといったサンデーサイレンスを持たないキングカメハメハ後継種牡馬たちとの戦いに向けて好発進と言えるだろう。

モーニンは、その種付け料のお買い得感も産駒を集めるのに一役買った印象を受ける。ダート種牡馬としての地位を確立するためにも、中央に活躍馬を送り込みたい。

そしてそこからはブリックスアンドモルタル、ニューイヤーズデイ、カリフォルニアクローム、サンダースノーと輸入種牡馬がズラリと並ぶ。ハーツクライ産駒の2頭を挟み、さらにアニマルキングダムが続く流れで、どの輸入種牡馬が覇権を握るかにも注目が集まる。

ディープインパクト系種牡馬はアルアインの104頭が最多で、今年はハーツクライ系種牡馬に押され気味になるかもしれない。キタサンブラック産駒をはじめ、すでにデビューしている先輩の種牡馬たちに立ち向かうのは一体どの馬になるだろうか。

《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

2023年に産駒がデビューする新種牡馬まとめ 日本馬の筆頭・レイデオロは「ディープ牝馬」との配合で期待