武豊騎手、JRA重賞350勝までの道のり 節目の重賞勝利を振り返る

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デビューから37年、空前の大記録

先週のシンザン記念は牝馬ライトクオンタムが勝利。スタートで後手を踏み後方からの組み立てを余儀なくされながら、直線では大外から圧巻の末脚で差し切った。過去に同レースを制した牝馬にはアーモンドアイやジェンティルドンナといった超A級が並んでおり、これからのキャリアにも期待が高まる。

鞍上の武豊騎手は昨年の日本ダービー以来の重賞制覇でJRA重賞350勝を飾った。自らが手綱をとったディープインパクトのラストクロップへの騎乗で決めるあたり、改めて唯一無二のスター性を感じるところだ。

今週は武豊騎手の偉大な記録にちなみ、区切りの重賞制覇となったレースを調査。デビューから37年、数々の名馬と歩んできた蹄跡をたどっていく。

重賞初勝利は淀のターフで

武豊騎手 区切りのJRA重賞勝利(1),ⒸSPAIA


<武豊騎手 区切りのJRA重賞勝利(1)>
1勝目:1987年京都大賞典(トウカイローマン)
50勝目:1993年札幌記念(ナリタチカラ)
100勝目:1997年北九州記念(ダンディコマンド)
150勝目:2001年NHKマイルC(クロフネ)

デビュー初年度、記念すべき重賞初勝利を飾ったのは京都大賞典。騎乗馬はトウカイローマン、3年前のオークス馬だった。道中4番手から大外を手応え十分に進出、直線では最内を突くペルシアンパーソの追い上げをこらえて押し切った。この勝利を皮切りに、武豊騎手は京都大賞典を実に9勝と大得意にしている。ちなみに同馬はJRA顕彰馬・トウカイテイオーのおばでもある。

50勝目はデビュー7年目の札幌記念。ナリタチカラとのコンビで中団待機から3角でマクり、最後まで末脚を伸ばす強い内容で勝利。初の重賞タイトルをプレゼントした。暮れには同馬とのコンビで香港国際カップにも挑戦している(7着)。この年はベガで二冠を達成したほか、早くも4度目のリーディングジョッキーに輝いた。

続く100勝目は快速馬ダンディコマンドで制した北九州記念(当時は1800m)。度重なる骨折に泣いた大器は前半5F58秒8のハイペースでハナを叩き、パルスビート以下の後続を寄せ付けずにコースレコードで逃げ切った。武豊騎手は2週前の宝塚記念をマーベラスサンデーで制し重賞99勝としており、リーチをかけて一発で決める形となった。

150勝目は21世紀最初の年、GⅠ・NHKマイルC。滞在していたフランスから帰国して騎乗した規格外の外国産馬クロフネは4角10番手から豪脚一閃、逃げた2着グラスエイコウオー、2番手から粘り込んだ3着サマーキャンドルを飲み込んでいく。単勝1.2倍の大本命に支持したファンの期待をさらに上回る走りだった。同馬は次走、この年から外国産馬に開放されたダービーに挑むも5着。しかしその半年後、主戦場をまさかのダートに移し、日本競馬史上に残る伝説を残すこととなる。

350勝、その先へ

武豊騎手 区切りのJRA重賞勝利(2),ⒸSPAIA


<武豊騎手 区切りのJRA重賞勝利(2)>
200勝目:2005年アーリントンC(ビッグプラネット)
250勝目:2007年ジャパンCダート(ヴァーミリアン)
300勝目:2015年シリウスS(アウォーディー)
350勝目:2023年シンザン記念(ライトクオンタム)

2003年のフェブラリーSをゴールドアリュールで制し、岡部幸雄騎手を上回る重賞166勝目に達して以降、誰もが見たことのない領域を突き進んできた武豊騎手。200勝目はキャリア絶頂期といえる2005年のアーリントンC、名牝ロンドンブリッジの仔ビッグプラネットの逃げ切りだった。同馬はこの勝利以降長い低迷期を迎えるが、翌年の京都金杯で復活を果たしている。

250勝目はわずか2年後、ヴァーミリアンと1番人気に応えたジャパンCダート。東京ダート2100mで施行された最後のレースを2分6秒7のコースレコードで駆け抜けた。足かけ7年の現役生活でGⅠ級競走9勝という大記録を残す同馬にとってこれが初のJRAダートGⅠ制覇。JBCクラシック3連覇、ドバイワールドC挑戦などダート界の主役を張った名馬だった。

2010年の落馬事故による大ケガ、それに伴うスランプを乗り越えてつかんだ重賞300勝目は2015年シリウスS。騎乗したアウォーディーは前走準オープンを勝ち上がったばかり、しかもダート2戦目という経歴ながら、3角から進出して大外一気の強い競馬で快勝した。同馬とのコンビでは翌年のJBCクラシックも勝ち、以後ダートGⅠに名を連ねる強豪として活躍した。

それから8年の時を経てたどり着いた350勝目は前述の通り、先週のシンザン記念となる。今年の3月で54歳ながら衰えを知らぬ騎乗ぶりはまさしく日本競馬の生けるレジェンド。さらなる勝ち星を積み重ねるシーンを楽しみにしたい。

武豊騎手JRA重賞350勝までの道のり,インフォグラフィック,🄫SPAIA

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《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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