【皐月賞】「中山芝2000mのモレイラ」は複勝率90%! データで導く穴馬候補3頭

鈴木ユウヤ

皐月賞 データで導く穴馬候補3頭,ⒸSPAIA

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データで見る「穴候補3頭」

2025年牡馬クラシックの第一弾・皐月賞が行われる。今年はなんといってもクロワデュノールが堂々の主役。デビューから無傷3連勝中の暫定王者であり、負かした馬たちがその後続々とOPや重賞を勝ったことで、間接的にもその強さを証明している。

一方、2番手以下は各路線からタレントが集い、どういう人気順になるかすら読めない混戦模様。いわゆる「ヒモ荒れ」の予感を漂わせるメンバー構成だ。今週も様々な切り口のデータを駆使して3頭の穴候補を導き出した。


前走「上がり4位以下で重賞V」なら複回収率196% ファウストラーゼン

まず1頭目はファウストラーゼン。暮れのホープフルSはマクリ戦法で17番人気の低評価をくつがえす3着激走、3歳初戦の弥生賞でも再びマクリを打って勝利した。


皐月賞 前走重賞での内容別成績,ⒸSPAIA


皐月賞は素直に、直近で好走してきた馬を信頼していいレース。前走が重賞以外の馬は過去10年【0-1-0-40】なので除外するとして、重賞組のうち前走1着なら【7-7-6-31】複勝率39.2%、単回収率140%に複回収率も118%とヒネりは不要。重賞で勝ってきた馬を買えば十分プラスが出る計算だ。

ところで、その重賞を勝った際の「上がり」に注目すると興味深い傾向がある。前走上がり3位以内だった馬は【6-4-3-25】複勝率34.2%、複回収率91%なのに対し、同4位以下だと【1-3-3-6】複勝率53.8%、複回収率196%の好成績。「遅めの上がりで重賞を勝った馬」の方が好走率、回収率ともに高いのだ。

前哨戦は少頭数かつ緩めの流れになるレースが多く、そこで速い末脚を使ってスパっと差し切ってきた馬が「強い」と思われて人気にもなる。しかし、本番は一気にペースが締まるため、溜めて切れるタイプは苦戦しやすいのだと推測される。

今回のメンバーで「上がり4位以下での重賞勝ち」に該当するのは、ピコチャンブラックとファウストラーゼンの2頭。ここではレースレベルも加味して後者を選ぶ。

弥生賞は稍重で1000m通過60.9秒と決して遅くない流れ。そこでマクリを敢行し、残り1000mから11.5-11.7-12.4-12.1-12.7とかなり早仕掛けの展開になった。

一般論として、こういう展開では先に動いた馬が苦しくなるものだが、ファウストラーゼンは直線で一度並ばれたヴィンセンシオをむしろ差し返すように勝った。持久力はケタ外れだ。スタミナ比べの土俵に他馬を引きずり込めれば一発あっていい。


「マイル戦で勝ったことがある馬」を狙え! カラマティアノス

2頭目はカラマティアノスを取り上げる。こうやまき賞勝ちから臨んだ共同通信杯で2着に入り、重賞でも通用する力を示した。

格言で「最も速い馬が勝つ」と称される皐月賞だが、これはある程度正しい。小回り多頭数という条件ゆえに序盤からポジション争いが激化しやすく、良馬場なら例年、1000m通過58~59秒前後の流れになる。そして「速いペースへの対応力」という意味で、マイル寄りの適性を持つ馬がしばしば活躍する。

たとえばロゴタイプやイスラボニータ、アルアインといった勝ち馬は古馬になってマイルGⅠでも好走したし、17年2着ペルシアンナイト、19年3着ダノンキングリー、そして昨年3着のジャンタルマンタルもその後マイルGⅠを勝った。


皐月賞 芝1600mでの勝利歴有無別成績,ⒸSPAIA


この点について、実際にデータで示す。過去10年の当レースで「芝1600mで勝利歴があった馬」は【3-2-6-25】複勝率30.6%、複回収率113%と黒字を計上している。反対に「なかった馬」は【7-8-4-117】複勝率14.0%、複回収率42%と一目瞭然だ。2000m戦なのにマイル実績がキーになる。

また「芝1600mで勝利歴があった馬」のうち、「前走0.4秒以上負けた馬」を除けば【3-2-5-18】複勝率35.7%、複回収率132%とさらに精度が上がる。マイル適性と近況の好走で絞り込もう。

今年は3頭が該当するが、なかでもカラマティアノスが面白そうだ。勝ち上がりには3戦を要したが、初戦は直線詰まり、2戦目はスローペースのイン前決着に外から追い込む強い3着だった。

共同通信杯は近年非常にメンバーレベルが高くなる一戦で、今年はレースレコードタイの1:46.0が出た。そこでの0秒1差2着は価値が高い。勝ったマスカレードボールはホープフルSで11着と崩れたように中山コースへの不安を抱えており、それならばコチラを狙ってみたい。


中山芝2000mではマジックマンに逆らうな ミュージアムマイル

ラストの1頭はミュージアムマイル。朝日杯FS2着の実績馬だ。前走の弥生賞は4着に敗れたが、本番は今回の来日でGⅠを早くも2勝しているジョアン・モレイラ騎手にスイッチして臨む。


J.モレイラ騎手の中山騎乗成績,ⒸSPAIA


「モレイラが乗るから買い」と書くのは芸がない気もするのだが、事実、中山では特にスゴいのだから仕方ない。

モレイラ騎手の中山通算成績は【29-16-9-23】複勝率70.1%と驚異的なもの。短距離ならまだ付け入るスキもあるが、芝1800m以上になると【12-7-2-3】複勝率87.5%でほぼ馬券に絡み、芝2000mは【4-3-2-1】複勝率90.0%、複回収率134%だ。にわかに信じがたいくらいの数字を残している。

もちろん人気馬にばかり乗っている側面はあるのだが、実は4番人気以下に限っても【0-3-1-1】複勝率80.0%をマーク。思えば昨年の皐月賞も7番人気コスモキュランダに騎乗して2着。伏兵でも“マジックマン”に逆らうのは無謀だ。

ミュージアムマイル自身も京都芝2000mの黄菊賞を2:00.0の時計で3馬身差勝ち。これは2歳コースレコードに0.2秒差と迫る好タイムだった。朝日杯FSは出遅れから序盤忙しそうなレースぶりでも2着確保。GⅠでやれるだけの能力はある。

《ライタープロフィール》
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、Xやブログ『競馬ナイト』で発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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