【エルムS】歴代最速上がりの優勝馬と最多勝騎手とは 「記録」を振り返る

緒方きしん

2023年エルムステークスの「記録」,ⒸSPAIA

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脅威の末脚、メイショウトウコン

過去にアドマイヤドンやプリエミネンスらを輩出しているダート重賞エルムS。今回は、その馬券圏内に入った馬たちを見返し、その思い出を振り返っていく。なお、以下は重賞に設定された1996年以降のデータを参考にしている。

エルムSで馬券圏内に入った馬たちのなかで、上がり最速タイムを叩き出したのはメイショウトウコンの34.5。2番手が35.4、3番手が35.5であることからも、その速さが分かる。メイショウトウコンの制した2007年エルムSは、後に歴史的名牝アーモンドアイの母となるフサイチパンドラが引っ張る縦長の展開。後方待機策をとったメイショウトウコンは、終盤で猛烈に捲ると、そのまま2着に3馬身半差をつけた。当時すでに平安S、東海Sと重賞2勝をあげており、斤量はメンバー最大の58キロだったが、それを物ともしない圧勝劇だった。

メイショウトウコンはマヤノトップガン産駒で、デビューは芝1800m戦、芝では18戦1勝という戦績だった。4歳夏に初めてダート戦を使われると、そこから5戦連続で上がり最速を繰り出し、平安S勝利を含む5戦4勝2着1回。一気に重賞馬の仲間入りを果たした。

総賞金43,763万円は、同産駒で歴代2位。同1位はプリサイスマシーン。同馬は川崎デビューで南関のダート戦を5連勝して中央へ移籍。中日新聞杯連覇やスワンS制覇など、芝レースへの挑戦で実績を残した。芝→ダートというメイショウトウコンとは逆の道のりだった。ちなみに、母父マヤノトップガンの中央重賞制覇は今のところ2019年武蔵野Sのワンダーリーデルがあげた1勝のみ。地方交流を含めると2021年JDDのキャッスルトップが加わり、ダート界での存在感を高めている。


最多勝は5勝の岩田康誠騎手

エルムSの最多勝ジョッキーは、岩田康誠騎手。2008年フェラーリピサで初勝利をあげると、2017年ロンドンタウンでの勝利まで、合計5勝をあげている。圧巻は2012年からの4年間で、ローマンレジェンド1着→エーシンモアオバー2着→ローマンレジェンド1着→ジェベルムーサ1着と、ほぼ完璧な戦績だ。

ローマンレジェンドもメイショウトウコンと同じく芝→ダートの路線変更を経験した馬で、デビューから2戦は芝レースに出走していた。岩田騎手と初コンビを組んだ3戦目でダートに挑戦すると、終始先頭を走りながらも上がり最速を繰り出し、後続に6馬身差をつけるという圧巻の競馬を見せた。そこから7戦6勝2着1回と安定した成績を残した。エルムSは重賞初挑戦ながらも単勝1.5倍の圧倒的人気。エスポワールシチーらを一蹴して重賞ウイナーとなった。

岩田騎手がエルムSでの5勝目をあげた際のコンビは、2017年ロンドンタウン。同馬は現役時代に一貫してダート戦のみを使われていた。エルムSを4番人気で勝利すると、韓国へと飛び、コリアCを制した。引退後は日本で種牡馬となっていたが、昨年末に韓国へ輸出。父カネヒキリの血を広げようと日々邁進中だ。

今年もエスポワールシチー産駒やメイショウサムソン産駒といった馬たちがエルムSへの出走を狙っている。カネヒキリ産駒ロンドンタウンのように、ここから世界へと羽ばたく名馬が登場するのだろうか、期待しながら見守りたい。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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