【エルムS】マリーンSを0.6秒差Vのペプチドナイルが中心 逆転候補はセキフウ

勝木淳

2023年エルムSに関するデータ,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

大沼S、マリーンSを振り返る

北海道のダート戦線は大沼S、マリーンSと函館でオープン・L競走が続き、エルムSでクライマックスを迎える。1回函館3週目の大沼Sは別定戦で行われ、主導権を握ったペプチドナイルがメイショウユズルハら好位勢の仕掛けやセキフウの末脚を封じ、3馬身差勝利した。

続くマリーンSはハンデ戦。ペプチドナイルは斤量0.5キロ増、セキフウは1.5キロ減で同斤に。メイショウユズルハは2キロ減って、上記2頭より2.5キロも軽かったが、後方から競馬を進め、11着大敗と一歩後退した。マリーンSを制したのは、またもマイペースを決めたペプチドナイル。セキフウはこの馬を意識し、大沼Sより前で進めるも、最後600mは同タイムになってしまい、決め手を繰り出せず3着まで。2着はペプチドナイルに積極的について行った57キロのルコルセールだった。

その着差は3馬身半差もあり、別定戦に変わる最終戦のペプチドナイル優位は動かない。あるとすれば、函館よりコーナーが緩く、後ろが動きやすい札幌に変わることでの逆転か、重賞のここに照準を定めたシリーズ外からの参戦組だろう。データは過去10年のうち、函館施行の2013、2021年を除く8回分を使用する。

エルムSの人気別成績,ⒸSPAIA


人気別では1番人気【1-1-2-4】勝率12.5%、複勝率50.0%より2番人気【3-1-1-3】勝率37.5%、複勝率62.5%が目立つ。ただし、前走マリーンSだった1番人気は【1-1-0-0】と崩れていない。2番人気も前走マリーンSは【3-0-1-0】なので、マリーンS経由の上位人気馬は手堅い。1、2番人気でマリーンSか大沼S以外だと【0-1-1-7】。シリーズ外から重賞目がけて飛び込んでくる実績馬は好走できない場合が多い。

9番人気まで勝ち馬を出しており、ポツポツと穴が出る傾向もあるが、基本的には4番人気【1-1-1-5】勝率12.5%、複勝率37.5%までが中心と考えていい。

エルムSの年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢の傾向は4歳【2-2-1-11】勝率12.5%、複勝率31.3%、5歳【5-2-2-18】勝率18.5%、複勝率33.3%が中心で、やや5歳が優勢だ。6歳【1-2-4-24】勝率3.2%、複勝率22.6%などダート重賞らしくベテランもしっかり拾っておこう。

マリーンS以外は前走GⅢ組に注意

基本的には冒頭で触れたマリーンS組の取捨がカギを握るが、ではほかの組はマークする必要はないのか。前走成績の傾向を拾いながら、確かめていく。

エルムSの前走クラス別成績,ⒸSPAIA


まず前走地方【1-0-3-15】勝率5.3%、複勝率21.1%から。1勝は前年東京大賞典からきた14年ローマンレジェンドでレアパターンだ。残りは7月マーキュリーC【0-0-2-4】、3月の名古屋大賞典【0-0-1-0】。ペイシャエスのダイオライト記念は出走がない。

昨年の宝塚記念除外以来の復帰戦となるオーソリティは当然ながらデータでは判断できない。脚元を考慮してのダート参戦という事情を踏まえれば、ここは「無事に復帰戦を」という立ち位置でいることにする。

エルムSの前走レース別(GⅢ)成績,ⒸSPAIA


前走GⅢ【1-5-2-22】勝率3.3%、複勝率26.7%から注目しよう。勝ち馬は1頭だが、2着は半数以上の5頭を出しており、馬券的には外せない。そのレース内訳は平安S【1-2-1-3】勝率14.3%、複勝率57.1%、プロキオンS【0-2-0-7】複勝率22.2%、アンタレスS【0-1-1-6】複勝率25.0%。平安Sは1、2着【0-2-0-1】、6着以下【1-0-1-1】と二極化する。

今年は6着ゲンパチルシファー、7着カフジオクタゴン、13着ロードヴァレンチが該当する。ゲンパチルシファーは小倉ダート1700mのプロキオンS勝ちがあり、距離短縮は面白い。カフジオクタゴンは2000m前後にツボがあるスタミナタイプで、1700mはハイペースになればという条件がつく。ロードヴァレンチは平安Sのように先手をとりたいタイプで、ペプチドナイルと脚質が重なる点が気になる。また、アンタレスSは1、2着【0-1-1-0】、6着以下【0-0-0-6】で好走が条件なので、12着ロードブレスは苦しいだろう。

エルムSの前走マリーンSでの着順別成績,ⒸSPAIA


それでは前走マリーンS【5-2-1-28】勝率13.9%、複勝率22.2%について掘り下げる。着順内訳は1着【2-1-0-3】勝率33.3%、複勝率50.0%、2着【2-1-0-2】勝率40.0%、複勝率60.0%、3着【1-0-0-3】勝率、複勝率25.0%と、単勝ならマリーンS3着以内が条件になる。5着以下は【0-0-0-18】。候補はペプチドナイル、ルコルセール、セキフウ、アシャカトブに絞られる。

位置取りを見ると、マリーンSで逃げ・先行だった馬が2勝、差し・まくり3勝と若干、差してきた馬がいい。これは函館よりコーナーが大回りで動きやすい札幌に変わることも大きい。逆転候補はセキフウだろうか。一方、マリーンSで0.6以上着差をつけて勝つと【1-1-0-0】。勝っても0.5以下だと【1-0-0-3】なので、2着に0.6差つけたペプチドナイルも負けていない。この辺はデータ的には拮抗だ。

しかしながら、ペプチドナイルは今度こそ、かなりマークされる公算が高い。ロードヴァレンチなどが絡んできそうで、ここがポイントになるだろう。とはいえ、マリーンSの1:43.0は良馬場としては優秀で、17年テイエムジンソク1:42.9に次ぐ好記録。裏付けは十分ある。テイエムジンソクは次走エルムS2着。重馬場で1:40.9の高速決着になり、コリアCを勝つロンドンタウンの大駆けに屈した。だが、テイエムジンソクもさらに次走のみやこSを勝利しており、ペプチドナイルもエルムSでマークされながら好走できれば、未来は明るい。

エルムSに関するデータ、インフォグラフィック,ⒸSPAIA


ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『ゴールドシップ伝説 愛さずにいられない反逆児』(星海社新書)に寄稿。



《関連記事》
3連単の最高額は1460万40円 2022年中央競馬の高額配当ランキング
武豊騎手、JRA重賞350勝までの道のり 節目の重賞勝利を振り返る
2023年に産駒がデビューする新種牡馬まとめ 日本馬の筆頭・レイデオロは「ディープ牝馬」との配合で期待

おすすめ記事