【皐月賞】不動の主役はクロワデュノール 逆転候補筆頭はエリキング、直近のトレンド「共同通信杯組」の取捨は?
勝木淳

ⒸSPAIA
衆目一致の主役は崩れない
牡馬クラシック戦線を引っ張るクロワデュノールは不思議な馬だ。ホープフルSから皐月賞まで休む間、その強さを戦わずして証明している。
昨年のホープフルS組は2着ジョバンニ(若葉S)、3着ファウストラーゼン(弥生賞ディープインパクト記念、以下弥生賞)、4着ジュタ(若駒S)、11着マスカレードボール(共同通信杯)、13着ピコチャンブラック(スプリングS)と、クロワデュノールに敗れた馬たちが3歳になってオープン、重賞を勝ちまくった。休む間にこれだけ評価が上昇するのも珍しい。
牡馬クラシックの起点は間違いなくホープフルS。中盤に12.7が連続して入るなど、前半のペースは決して速くない。1000m通過は1:01.4だった。しかし、後半1000mは12.0-11.6-11.7-11.9-11.9。1000mに及ぶロングスパートは、出走馬の力量を浮き彫りにするのに十分だった。
2馬身差快勝のクロワデュノールには余裕すら感じた。近年は瞬発力より持続力に重きを置く。いかにロングスパートでゴールまで駆けられるか。ここに能力の基準がある。破ったライバルたちが活躍しただけではない。その破った内容に価値がある。
クロワデュノールが主役に君臨し続けるのか、はたまた待ったをかける馬が現れるのか。注目のクラシック第一戦を過去10年分のデータで分析する。
皐月賞が終わらないと、クラシックの勢力図は明確にならない。そんな昨年のような図式が多く、皐月賞で序列がはっきりするというのが最近の傾向。その分、皐月賞の人気は難しい。
今年のような年は多くなく、1番人気【2-0-3-5】勝率20.0%、複勝率50.0%を筆頭に、2番人気も【3-1-0-6】勝率30.0%、複勝率40.0%で3番人気【1-3-2-4】勝率10.0%、複勝率60.0%と、上位人気は拮抗している。
以下は5番人気、7番人気、8番人気、9番人気が1勝ずつと混戦。今年は抜けた存在がおり、ここまで混戦にはならないか。
ちなみに、単勝オッズ2.9倍以下の1番人気は【2-0-1-1】。皐月賞の時点で衆目一致の主役は簡単には崩れない。
クロワデュノール逆転候補はエリキング
ローテーションの変革、その象徴が牡牝クラシック。まだまだ成長途上の若駒だからこそ、その才能の芽をつぶさない。経験と休養のメリハリをつけ、3歳春までの消耗を抑え、効率よく賞金を加算する。これが至上命題だ。
その理想形がクロワデュノール。新馬勝ち後、夏は休み、東京スポーツ杯2歳Sで出走に必要な賞金を積み、暮れのGⅠで経験も積ませる。ここまでは非の打ち所がない。
クロワデュノールの前走ホープフルSは【2-0-0-4】勝率、複勝率33.3%で、必勝ローテとはいえない。
ただし、ホープフルSで1番人気1着なら【2-0-0-2】。ホープフルSがGⅠに昇格して以降では、サートゥルナーリアとコントレイルが連勝で第一冠を勝ちとり、敗れたのは牝馬のレガレイラが唯一。クロワデュノールも問題はなかろう。
昨年ジャスティンミラノが勝った前走共同通信杯は【5-0-4-12】勝率23.8%、複勝率42.9%となっており、これもトレンドのひとつ。
共同通信杯組は1着【3-0-2-4】勝率33.3%、複勝率55.6%で2着も【2-0-1-3】勝率33.3%、複勝率50.0%と、狙いは賞金加算圏内だった。3着以下も【0-0-1-5】となくはないが、1着や2着には及ばない。
また1、2着の差は確率上さほどないのもポイントで、マスカレードボールだけではなく、カラマティアノスも侮れない。
近年は影が薄くなった弥生賞は【0-5-2-32】複勝率17.9%だが、もともと同舞台の皐月賞よりもダービーにつながるトライアルでもあった。
スローのトライアルに対し本番はペースが速く、同じ舞台でもまるで違うレースになりやすい。一方、スローの経験は2400mでの“溜め”に結びつく、というのが主な要因だ。
そんな弥生賞組の好走の目安は鞍上。乗り替わりが【0-3-1-10】複勝率28.6%とよく、継続は【0-2-1-22】複勝率12.0%と数値がダウン。クラシックの乗り替わりはイメージ的によくないが、弥生賞組の皐月賞に関しては別だ。J.モレイラ騎手が騎乗予定のミュージアムマイルや、坂井瑠星騎手に戻るジュタあたりか。
前走スプリングSは【1-1-2-32】勝率2.8%、複勝率11.1%となっているが、ここも1着【0-0-2-6】複勝率25.0%と2着【1-1-0-6】勝率12.5%、複勝率25.0%まで。3着以下は【0-0-0-20】だ。今年でいえばピコチャンブラック、フクノブルーレイクまでだろう。3着キングスコールはデータ上、厳しいか。
最後に、骨折休養明けのエリキングについて。前走が前年11月の重賞以来となると【0-1-0-1】ですべて東スポ杯組。2着はご存じイクイノックスだ。
イクイノックスは東スポ杯でのダメージが大きく、立ち上げに時間がかかってのローテーション。エリキングはケガによる休養なので一緒にはできないが、休養前は新馬、オープン、重賞と3連勝。世代筆頭格だったのは事実で、プロフィールとしてはクロワデュノールには決して見劣らない。
ちなみに、野路菊Sと京都2歳Sでエリキングの2戦連続2着だったのがジョバンニ。こちらもジョバンニが若葉Sを勝ったことで、評価はあがった。
《ライタープロフィール》
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースオーサーを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
《関連記事》
・【皐月賞】特別登録馬一覧
・【皐月賞】過去10年のレースデータ
・安定のルメール騎手、頭にしたい川田将雅騎手 東大HCが「3歳重賞に強い騎手、調教師、種牡馬」を調査