【宝塚記念】本格化ムードの牝馬、複回収率211%条件満たすGⅠ馬…… データで導く穴馬候補3頭

鈴木ユウヤ

2023年宝塚記念-データで探す穴馬,ⒸSPAIA

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データで見る「穴候補3頭」

早いもので2023年上半期の中央競馬もいよいよフィナーレを迎える。今週日曜日の阪神メインは宝塚記念。芝2200mで行われる春のグランプリレースだ。

中心はもちろんイクイノックスだろう。昨春のクラシックで連続2着だった世代の有力馬は、ひと夏越して完全覚醒。天皇賞(秋)、有馬記念で古馬を撃破すると、年明け初戦のドバイシーマクラシックは逃げの手に出て、ほぼ馬なりで大楽勝。それもレコードタイムのおまけつきだった。

強いて懸念を挙げるなら今回が初の関西圏出走となることぐらいだが、現在栗東トレセンで調整されており長距離輸送もない。ちなみにC.ルメール騎手がJRAの芝GⅠで1番人気に騎乗した際の成績は【25-6-10-15】で勝率44.6%。単勝オッズが3倍を切るようなら【23-3-6-8】勝率57.5%とさらに上昇し、単勝回収率も114%に達する。信頼度は高い。

ただし、想定2番人気以下はGⅠ馬7頭を含む大混戦状態。高配当の余地は残されている。あなたの、そしてわたしの夢が走る宝塚記念。ここでは様々なデータを駆使して、3頭の穴馬候補を導き出した。


「夏は牝馬」の格言通り スルーセブンシーズ

まず1頭目はスルーセブンシーズだ。5歳を迎えた今期は2戦2勝、前走の中山牝馬Sで重賞初制覇を達成した。牝馬限定のハンデGⅢとあって破った相手は目立たないが、勝ち時計1.46.5、上がり33.8秒は馬場が速かったとはいえ優秀。中山芝1800mを走破時計1.47.0以下、上がり33秒台で勝った馬は過去にヴィクトワールピサとウインブライトしかいない。

宝塚記念 性別成績(過去10年),ⒸSPAIA


データで言うと、宝塚記念は牝馬の回収率が高いのが特徴。過去10年で【4-1-6-15】複勝率42.3%、単回収率140%、複回収率186%をマークしている(牡・セン馬は単39%、複66%)。これは相対的に牝馬が有利とされる「夏場」のレースであることに加え、牝馬は消耗度の高い天皇賞(春)を使わないことが多く、余力を残して出走してくることも関係していそうだ。

牝馬のうち、前走で「3着以内」の結果を残せていれば【4-0-3-6】複勝率53.8%とさらに好走率がアップ。今年の出走馬ではスルーセブンシーズだけがこれに当てはまる。父は5歳で春秋グランプリ制覇を成し遂げたドリームジャーニー。その血がついに覚醒の時を迎えるかもしれない。


春天大敗馬が適距離で反撃 アスクビクターモア

2頭目は穴と呼べるオッズになるか微妙だが、アスクビクターモアを取り上げよう。菊花賞で晴れてGⅠ馬の仲間入りとなったが、日経賞は不良馬場と出遅れが重なり、天皇賞(春)は稍重馬場に2周目3角で前が下がってくる不利も受けての11着に終わっている。

同年天皇賞(春)での着順別成績(過去10年),ⒸSPAIA


過去10年の宝塚記念における、同年天皇賞(春)に出走していた馬の成績をチェックする。天皇賞で3着以内だった馬は【1-0-1-13】複勝率13.3%、単回収率28%、複回収率22%と不振で妙味もない。対照的に、同4着以下の馬は【4-3-1-22】複勝率26.7%、単回収率109%、複回収率133%と黒字圏内に入っている。そもそもレース距離が1000mも違うのだから、連続好走が難しく、適性外の条件で負けた馬の反撃が多いのも当然といえば当然だろう。15年のラブリーデイ(阪神大賞典6着→天皇賞(春)8着→鳴尾記念1着→宝塚記念1着)などは典型例だ。

さらに言うと、天皇賞で4着以下に負けた中でも、「シンプルに力が足りない馬」を避ければより好走確率がアップする。具体的には、天皇賞で10番人気以下だった馬を除外すると【4-3-1-11】複勝率42.1%、単回収率173%、複回収率211%だ。

今年は7番人気4着ブレークアップと4番人気11着アスクビクターモアが該当するが、距離に泣いた、という意味で後者をピックアップした。菊花賞を制してはいるが、本領は中距離のスピード馬場を先行する形だろう。昨年の日本ダービーでは1000m通過58.9秒のハイペースを先行して、2着イクイノックスと2馬身差の3着。ここ2戦の大敗で見限られるようならオイシイはずだ。


ジャパンC覇者を侮るな ヴェラアズール

最後はヴェラアズールを挙げる。昨年春に主戦場をダートから芝に変えると、秘めた才能が開花。6戦連続上がり最速、ジューンSから3連勝で一気にジャパンC戴冠まで駆け上がった。

ジャパンC勝ち馬の翌年成績(2000年以降、JRAのみ),ⒸSPAIA


高額賞金の上にマギレが起こりにくい東京芝2400mを舞台とするジャパンCは、フロックで勝てるようなレースではない。それを示すひとつの証拠として、ジャパンC優勝馬(2000年以降)の翌年JRA成績を見ると【12-11-10-22】で複勝率60.0%の好成績となっている。

このうち、馬券の上で特に狙えるのは「直前のレースで4着以下に敗れた」ケース。【5-4-1-8】で複勝率55.6%自体は先の数字とさほど変わらないが、敗戦直後で人気を落とす分、単回収率99%、複回収率136%と妙味が出る。まさに今回のヴェラアズールのパターンだ。

昨年の有馬記念の大敗は道中かなり折り合いを欠いた影響もあったか。ドバイワールドカップ13着はメイダンの砂が合わなかったと片付けていいだろう。今度こそ、ジャパンC覇者の本来の姿が見られるのではないか。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、Twitterやブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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