将来のクラシックホースはデビュー戦で見抜けるか? 3歳限定GⅠ馬の8割以上が新馬勝ち

SPAIA編集部

3歳限定GⅠ優勝馬のデビュー戦上がり3Fタイム,ⒸSPAIA

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3歳限定GⅠ馬のデビュー戦は

夏競馬も終盤に差し掛かり、2歳戦線が本格化してきた。今年も、新馬戦開幕週に東京の芝マイル戦を制したノッキングポイントや、7月30日の新潟でJRA史上最速タイとなる上がり3F31.4秒で勝利したリバティアイランドなど、早くも将来を嘱望される若駒が登場している。

しかし、たった一戦や二戦の内容からその後のキャリアをどの程度推し量れるのかについて、疑問の余地もあるだろう。そこで今回は、クラシックやNHKマイルカップなど3歳GⅠを制した馬たちの新馬戦を振り返り、どのような実戦デビューを果たしていたのか分析してみた。

3歳限定GⅠ優勝馬のデビュー戦の着順,ⒸSPAIA


2017年以降に3歳限定GⅠ(皐月賞、日本ダービー、菊花賞、桜花賞、オークス、秋華賞、NHKマイルC)を制した馬は計33頭。デビュー戦の着順は以下のようになる。

1着 28頭 コントレイル、デアリングタクトなど
2着 3頭 アーモンドアイ、スターズオンアースなど
3着 1頭 エポカドーロ
7着 1頭 アカイトリノムスメ

馬券に絡めなかった馬で3歳GⅠを制したのは、昨年の秋華賞馬アカイトリノムスメのみ。新馬戦で敗れた5頭のうち、4頭は2戦目、残るディアドラも3戦目で勝ち上がっている。実に84.8%の馬が新馬勝ち、97.0%の馬が2戦以内に初勝利という計算だ。大舞台を目指すには早いうちから賞金を加算し、じっくりと調整することが近年は重要になっている。

新馬戦の上がり3Fタイムに注目

3歳限定GⅠ優勝馬のデビュー戦の上がり3ハロンタイム,ⒸSPAIA


同じく33頭について新馬戦の上がり3Fタイムを6段階に分けて見ていく。

32.9秒以下 2頭(ワグネリアン、スターズオンアース)
33.0秒~33.4秒 2頭(アドマイヤマーズ、ジオグリフ)
33.5秒~33.9秒 5頭(コントレイル、グランアレグリアほか)
34.0秒~34.4秒 8頭(アーモンドアイ、ドウデュースほか)
34.5秒~34.9秒 7頭(デアリングタクト、シャフリヤールほか)
35.0秒以上 9頭(ロジャーバローズ、タイトルホルダーほか)

以上のようになる。半数近い16頭は34.5秒以上かかっていて、上がりが遅いからといってクラシックに手が届かないということはないようだ。

ただし、際立った末脚を発揮した馬の将来性にはやはり高い期待がかかる。2017年から2021年までの夏競馬期間に、新潟マイル戦以外で上がり3F最速かつ32.9秒以下を記録したのはワグネリアン、ロックディスタウン、スターズオンアースの3頭だけ。

ワグネリアンは2018年のダービー馬、スターズオンアースも2022年春の牝馬二冠を制している。上がりタイムはレース展開や馬場状態、脚質で大きく変化するものだが、デビュー戦で32.9秒以下を記録した馬は、翌年まで覚えておきたい。

3歳限定GⅠ優勝馬のデビュー戦上がり3Fタイム,ⒸSPAIA

秋華賞と菊花賞、デビュー戦から見える傾向は

秋華賞馬のデビュー戦結果,ⒸSPAIA


時期的に最も遠い三冠目、秋華賞と菊花賞の勝ち馬でもデビュー戦に特徴はあるのだろうか。まず2017年以降に秋華賞を制した馬のデビュー戦を着順、上がり3Fタイム、上がり順位から見ていこう。

2017年 ディアドラ 中京芝1400m 2着(35.2秒・順位4位)
2018年 アーモンドアイ 新潟芝1400m 2着(34.3秒・順位1位)
2019年 クロノジェネシス 小倉芝1800m 1着(34.5秒・順位1位)
2020年 デアリングタクト 京都芝1600m 1着(34.8秒・順位1位)
2021年 アカイトリノムスメ 新潟芝1600m 7着(34.3秒・順位5位)

クロノジェネシス以外の4頭がマイル以下でデビュー。デビュー戦で勝ち上がった馬ばかりではなく、また上がり順位にも目立ったものはない。前述のディアドラ以外は、2戦目までに勝ち上がっていることが共通点。もう少し範囲を広げて2012年からも見てみる。

2012年 ジェンティルドンナ 京都芝1600m 2着(36.7秒・順位2位)
2013年 メイショウマンボ 京都芝1400m 1着(35.2秒・順位1位)
2014年 ショウナンパンドラ 阪神芝1800m 2着(33.4秒・順位1位)
2015年 ミッキークイーン 阪神芝1400m 2着(33.7秒・順位1位)
2016年 ヴィブロス 京都芝1600m 2着(35.0秒・順位5位)

こちらの5頭も2戦目までに勝ち上がり。それも含め大きく傾向は変わらない。ちなみにジェンティルドンナの36.7秒は、レース当日に雨が降り終日不良馬場だった中でのタイムだ。過去10年に広げてもデータ上は大きな変化はなく、秋華賞においてはデビュー戦からの明確なデータは読み取れず。なので、芝デビューで2走以内の勝ち上がりが望ましいものの、例外が出る可能性はあると思っていいだろう。


菊花賞馬のデビュー戦結果,ⒸSPAIA


次に菊花賞。こちらも2017年以降の5頭を見ていく。

2017年 キセキ 阪神芝1800m 1着(34.5秒・順位1位)
2018年 フィエールマン 東京芝1800m 1着(34.2秒・順位4位)
2019年 ワールドプレミア 京都芝1800m 1着(34.9秒・順位2位)
2020年 コントレイル 阪神芝1800m 1着(33.5秒・順位1位)
2021年 タイトルホルダー 中山芝1800m 1着(35.9秒・順位3位)

年明けデビューとなったフィエールマンを含め、全馬が芝1800mでデビューし1着。よく格言で「菊花賞は強い馬が勝つ」というが、それをなぞるかのようにデビュー戦から結果を残していた。上がり3Fについては3000mの長距離レースということもあり、あまり気にする必要はなさそうだ。強いて言うなら、35秒は切って順位4位以内ではあって欲しいところ。秋華賞同様、こちらも範囲を広げて見ていく。

2012年 ゴールドシップ 函館芝1800m 1着(34.9秒・順位1位)
2013年 エピファネイア 京都芝1800m 1着(33.5秒・順位1位)
2014年 トーホウジャッカル 京都芝1800m 10着(34.1秒・順位1位)
2015年 キタサンブラック 東京芝1800m 1着(34.2秒・順位2位)
2016年 サトノダイヤモンド 京都芝2000m 1着(34.8秒・順位1位)

近10年に広げても1800m以外でデビューしたのはサトノダイヤモンド1頭だけ。デビュー戦で負けたのは、日本ダービー前日にデビューし、そこからわずか149日の史上最速記録で菊花賞を制したトーホウジャッカルのみ。芝1800mのデビュー戦を上がり3F34.9秒以下で勝った馬は、過去10年で27頭出走して7勝、勝率25.9%の好成績となっていて、菊花賞を予想する際には注意してみたい。

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