【新潟2歳S】今年はデータ上まれに見る大混戦 シーウィザード、アイスグリーンなど候補多数

勝木淳

新潟2歳Sインフォグラフィック,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

今年は秋に備える高評価馬が多く

あと8カ月。これが3歳春クラシック開幕までに残された時間。まだ2歳夏、新馬戦がはじまって2カ月半しか経っていないが、我々馬券を買う側と競走馬を管理する側の時間感覚には隔たりがある。

多くの競馬関係者に話を伺う機会を得たなかで、感じたことは我々と関係者の競馬観、とらえ方には開きがあるということ。おそらく馬券を買う側とは軸が違う。クラブ馬主の隆盛など、使う側の意図を垣間見る機会が増え、その軸のズレは部分的には解消しつつある。それでも時間の経過間隔はかなり違う。

この時期、新馬戦を勝ちあがった馬の関係者はクラシックに向けて、どのタイミングで賞金を加算し、出走権を獲得するかに頭を悩ませる。もちろん、賞金加算は早い時期にこしたことはないが、デビュー間もない頃に無理な出走をすれば、肝心な時期に体調を狂わせかねない。

外回りマイル戦で行われる新潟2歳Sは実力を証明するにはうってつけの舞台である反面、走りすぎてその後、体調を乱す馬、成績が下降する馬も多い。拙速に賞金加算を目指さず、2歳秋まで成長を待つ。そう考える陣営が今年は多いようで、新潟2歳Sは例年の好走データに合致する理想的な馬が見当たらない。少し例年とは違うアプローチをする必要がある。過去10年間のデータを使用し、今年の新潟2歳Sを分析していく。


過去10年新潟2歳S人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気は【4-3-0-3】勝率40.0%、複勝率70.0%とまずます。紛れのないコースで2歳夏時点での実力差がわりと素直に出る。3番人気【5-1-1-3】勝率50.0%、複勝率70.0%までが好成績で、3番人気以内は【10-5-4-11】。4番人気以下は2、3着であればといったところ。例年の図式であれば大荒れは少ない。


過去10年新潟2歳S脚質別成績,ⒸSPAIA


新潟マイルは外回り650m超の直線が待ち構える舞台。毎年、決め手比べになりやすく、その分、序盤から脚を溜める組が優勢。逃げ【0-1-1-8】複勝率20.0%、先行【1-2-3-30】勝率2.8%、複勝率16.7%に対し、中団【6-4-5-51】勝率9.1%、複勝率22.7%で後方も【3-3-1-33】勝率7.5%、複勝率17.5%と走る。同舞台で行われる古馬の関屋記念に比べると、先行勢には厳しく、上がり600m最速はこの10年、【7-2-1-0】と馬券圏内を外していない。

もちろん、キャリアの浅い組同士なので、このレースで差し、上がり最速を記録する馬を事前に探すのは難しい。なので前走に注目すると、前走中団は【6-3-1-36】勝率13.0%、複勝率21.7%、また上がり最速は【8-6-4-53】勝率11.3%、複勝率25.4%、2位【2-4-6-23】勝率5.7%、複勝率34.3%。前走で鋭い末脚を見せたかどうかは重要になる。上がり最速はロードディフィート、アイスグリーン、チカポコなどが該当するが、どうだろうか。


例年ならデータ上は厳しいが

上がり最速を記録した上記3頭は1200~1400mや1800mでのもの。これも例年とは少し異なり、マイルの新馬を勝った馬が見当たらない。この点も踏まえ、前走成績の傾向をみていこう。


過去10年新潟2歳S前走クラス別成績,ⒸSPAIA


前走新馬が【7-7-7-65】勝率8.1%、複勝率24.4%。例年は1戦1勝馬を中心に考える。今年もシーウィザード、バグラダスなど候補はいる。


過去10年新潟2歳S前走新馬組コース別成績,ⒸSPAIA


ところが、その新馬組のコース別成績は中京芝1400m【2-1-1-3】勝率28.6%、複勝率57.1%、新潟芝1600m【2-0-1-9】勝率16.7%、複勝率25.0%、中京芝1600m【2-0-0-5】勝率、複勝率28.6%など左回りの1400~1600mの新馬を勝った馬が上位を占める。今年はここに該当する馬がいない。どの馬も秋に備える公算で、これが今年の新潟2歳Sを例年とは違うものに変えた。

チカポコの福島芝1200mは【0-0-2-5】複勝率28.6%。例年注目する舞台ではないが、今年は注目しておきたい。チカポコは開幕週2日目の新馬で前後半600m35.1-35.3、1.10.4。同日3歳未勝利が1.09.2なので、さほど好記録ではないが、バランスのとれたラップ、後半600m12.0-11.5-11.8を好位5番手から差し切り勝ちはセンスを感じさせる。スプリンタータイプではなさそうだ。

シーウィザードの函館芝1800mは過去10年出走なし。同馬の新馬は中盤で13秒台が3度続く緩い流れ。逃げてラスト400m11.3-11.4はデビュー戦としては能力の片鱗を見せたともいえるが、重賞でここまでマイペースに持ち込めるか。父ビーチパトロールは本馬とデイドリームビーチの2勝。現役時代は北米芝2000m以上のGⅠ・3勝。その父キングマンボ系レモンドロップキッドは種牡馬になったアポロキングダムや連勝中のレモンポップの父。ダートの活躍馬ばかりだが、距離は1600mが【4-1-0-9】でトップ。未知な面が多く、そこが魅力でもある。


過去10年新潟2歳S前走未勝利組距離別成績,ⒸSPAIA


新馬組に合致する馬が少ないならば、前走未勝利【3-3-2-32】勝率7.5%、複勝率20.0%もチェックしたい。その前走距離は同距離の1600mが【3-0-2-9】勝率21.4%、複勝率35.7%と断然。1600m未満【0-1-0-12】複勝率7.7%、1600m超【0-2-0-11】複勝率15.4%。短縮はアイスグリーン、グラニット、延長はロードディフィートなどが該当。若駒特有の距離変化への対応が課題になりそうだ。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。


新潟2歳Sインフォグラフィック2,ⒸSPAIA




《関連記事》
トップはキタサンブラックの18億7684万円 アーモンドアイは何位?競走馬JRA獲得賞金ランキング
2022年上半期のGⅠデータまとめ 「平地は1番人気全敗」「武豊騎手がダービー6勝目」
クラブ選びや出資馬選定など一口馬主の始め方をご紹介! 毎月かかる費用などお金事情も詳しく解説

おすすめ記事