【2歳馬ジャッジ】現2歳世代芝部門最高指数を記録したモリアーナの能力はGⅠ級
山崎エリカ
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現2歳世代、芝部門最高指数を記録 8月2週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。札幌ではコスモス賞でモリアーナが現2歳世代芝部門最高指数を記録、新潟では評判馬ダノンザタイガーが2戦目で勝ち上がるなどした8月13日、14日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
8月13日(土) 新潟2R 優勝馬 ダノンザタイガー 指数-5 評価B
6月東京の新馬戦では圧倒的な1番人気に支持されながら、出遅れたこともあり2着止まりだったダノンザタイガー。今回は前走時以上に支持を集め、その期待に応えて勝利した。前走は良くなかったスタートも改善され、16番枠から中団外を追走、直線ではしっかり伸びて勝利した。指数もこの時期の未勝利戦としては悪くない。
ただ今回は出遅れることなく、おおよそ能力を出し切ったレース内容。現状では昇級後即通用かというと微妙なところもある。評判馬で重賞での活躍が期待されている馬だけに、今回は辛目の評価にした。
8月13日(土) 新潟5R 優勝馬 エナジーチャイム 指数-4 評価A
4番枠から好発を切ってハナを主張したエナジーチャイム。マイペースの逃げで最後の直線でも淡々と走っていたが、外からショウナンアレクサが迫ってくるとエンジン点火。フットワークが速くなり、そこからは2頭のマッチレース。上位2頭で3着以下を6馬身引き離してのゴールだった。
走破タイムの1分34秒8はこの週の新潟では悪くない。ラスト2Fは11秒0-11秒3。逃げる競馬でそれなりに速い走破タイムだったことを考えれば、減速度合は少ないと言える。今回の上位2頭は今後かなりの活躍が期待できそうだ。
8月13日(土) 新潟6R 優勝馬 ハーエクセレンシー 指数-3 評価A
12番枠から五分のスタートを切ったが、先手を主張する内の馬たちを行かせ、道中は中団の外を進み、3角過ぎから位置を押し上げて4角では大外。直線では長く良い脚を使い、内の馬たちを突き放して勝利した。
ラスト2Fは11秒5-11秒3。古馬のレースを含めてラスト1Fが減速決着になりやすい新潟芝1400mで、このラスト2Fの数字は高く評価できる。あまり人気がなさそうな馬ではあるが、今後が楽しみだ。
8月14日(日) 新潟5R 優勝馬 ヒシルリアン 指数-2 評価A
5番枠からスタートを決め、2番手外で折り合ってレースの流れに乗ったヒシルリアン。ラスト2Fで気合をつけられるとグンと伸び、外から迫る馬たちを完封した。
走破タイムは1分50秒8、上がり3Fタイムは34秒2と平凡だが、ラスト2Fは11秒3-11秒4とほぼ減速せず。何よりも2番手からしっかり伸びたレース内容は数字以上に価値がある。
8月13日(土) 小倉2R 優勝馬 トールキン 指数-6 評価A
前走は7月小倉のタガノタントが勝利した新馬戦で2着だったトールキン。この新馬戦は3着以下が6馬身以上離れ、なかなかの走破タイムで好指数決着だった。
スタートはそこまで速くないが、今回はスピードの違いで11番枠から逃げる競馬。結果は2着に2馬身半差をつけて圧勝、ここでは役者が違ったようだ。指数も新馬戦からしっかりと上昇させた。未勝利クラスとしては指数も良い。ここからは距離も含めてクリアしなければならない課題も多いが、上のクラスでも通用するスピード馬だ。
8月13日(土) 小倉5R 優勝馬 メイショウコギク 指数-4 評価A
12番枠から好ダッシュでハナを主張したメイショウコギク。そこからは脚をタメながらマイペース。最後の直線で追い出されると一気に加速し後続を突き離した。一瞬で加速したのもあり内ラチに接触する場面もあったが、独走で6馬身差の圧勝。
ラスト2Fは11秒0-11秒6と減速。そこまで余裕があったわけではないが、最後の直線であっという間に後続を引き離したスピードや、2着に6馬身差つけたことは高く評価できる。一瞬のスピードはかなりあり、差す競馬ならばもう一段階上のレベルの走りができそうに感じる。勝ち負けを繰り返しながら、かなり上のクラスに行けそうだ。
8月13日(土) 小倉9R 優勝馬 ミカッテヨンデイイ 指数-9 評価A
新馬戦3着、次走の未勝利戦はラスト100mからよく伸びたものの3着と、未勝利馬としてはここまでの2戦は指数が良い部類の馬。しかし、今回はいきなりのオープンに格上挑戦。今回、新馬戦を好指数勝ちしたタガノタントを除けば、実質未勝利クラスのようなメンバー構成ではあったが、9番枠から好位の外でレースの流れに乗り、勝利したことには驚かされた。
指数もそれなりのものを記録。エンジンの掛かりの遅さが改善されて一戦ごとの上昇度が著しい。この勢いだと小倉2歳Sでもチャンスは十分ある。
8月14日(日) 小倉1R 優勝馬 オバケノキンタ 指数-2 評価B
このレースは九州産馬の未勝利戦。オバケノキンタはダートの新馬戦で4着、次走は芝で2着という成績で今回はデビュー3戦目。初芝の前走は押してもテンに行けなかったが、今回は大外10番枠からトップスタートを切り好位馬群の外につけ、4角手前で早くも先頭に立った。最後の直線では内から盛り返されたが、結果2馬身半差をつけ快勝した。
今回の指数は一般馬の未勝利戦でも勝利可能なレベル。ただし、一戦ごとのレース内容の上昇度が大きく、将来的には一般馬に混じっても通用する力はある。
8月14日(日) 小倉2R 優勝馬 ロードラディウス 指数-6 評価A
7月小倉のラヴェルが勝利した新馬戦で4着、今回はデビュー2戦目。大外7番枠から好発を切って行きっぷり良く上がり、2番手外を追走した。向正面でピヌスアモリスが外から捲り気味に上がり、3角で突かれたため早めに動かざるを得ず、4角では早々と先頭に立った。しかし、そこから後続の追撃を封じ1着。
このレースは新馬戦で2着だった馬が2頭出走しており、それらを2、3着に退けたことは高く評価できる。結果として本馬が今回で記録した指数もなかなか高いものとなった。レース内容は新馬戦から良化している。勝ったり負けたりしながら、かなり上のクラスを狙っていける素材だ。
8月14日(日) 小倉5R 優勝馬 バルサムノート 指数-2 評価B
4番枠から好スタートを決め序盤は3頭のハナ争いに加わったが、1角で一列下げて2列目の3番手でレースを進めたバルサムノート。1角過ぎで前2頭の馬との間隔が十分ではなかったため、前の馬の尻尾に反応して外に膨らみ、そこから立て直して2角に入っていくロスがあった。しかし、最後の直線では中目からしっかり脚を伸ばして勝利した。
ラスト2Fは11秒1-11秒5。好位から伸びて上がり3Fタイム最速タイを記録したレースは好内容だった。指数以上のものを感じる。現状トップクラスにはやや足りない印象もあるが、成長力はありそうなので、叩かれながらジワジワ上昇していきそうだ。
8月13日(土) 札幌1R 優勝馬 トーセンウォルト 指数-5 評価B
新馬戦で6着、連闘の未勝利戦を2着という成績だったトーセンウォルト。今回はデビュー3戦目。8番枠からまずまずのスタートを切り、1角で内へ潜り込んだ。好位の後ろからラチ沿いをジワジワと上がっていき、距離損のない競馬。4角2列目から直線で逃げ馬の外に出されると、しっかり伸びて勝利した。
今回は連闘で2着と好走した直後の一戦で、強行軍のローテーション。そこに不安があったが、体質がかなり強い馬のようで、疲れを感じさせない走りだった。今回で記録した指数は未勝利クラスとしては悪くない。叩かれながらの活躍を期待したい。
8月13日(土) 札幌9R 優勝馬 モリアーナ 指数-12 評価AAA
モリアーナは6月東京開幕週の新馬戦でラスト2F11秒0-11秒1を記録し、3馬身差で圧勝した馬。異様な迫力とスピードから評価AAにしたが、やはりAAA評価にすべきだったかと思い続けていた馬だ。今回は大外9番枠から出遅れたが、速い二の脚で好位に取りついていく競馬。道中2番手、4角手前で逃げ馬を潰して先頭に立ち、そのまま押し切って楽々と勝利した。
今回記録した指数は、現2歳世代最高値のもの。出遅れを挽回して位置を取るロス。前走から馬場がタフになり、さらに距離も1F延びるとなると、できれば待機策をした方がベターだったレース展開。しかし、それらの不利をすべてクリアしての勝利は、まだまだ今回が天井の走りではなかったことを強く印象付けた。
本馬はこの後は阪神JFに直行予定。レース間隔が開く臨戦となると息持ちの面でやや不安はあるが、次走はこの馬の本来の能力を出し切るために待機策をとってくるだろう。東京の新馬戦で見せた強烈な瞬発力が再現される可能性は高い。阪神JFが重馬場や不良馬場になれば直行ローテのマイナス面が出やすくなるが、良馬場なら能力はある程度発揮できるだろう。
今年の『2歳馬ジャッジ』は東京開幕週が終わった時点で、もうほとんど完結してしまったのではないか? ノッキングポイント、モリアーナを上回る馬がこの後そうそう出現するものではないだろうと見ていたが、やはりその予感は当たっていたのかもしれない。
8月14日(日) 札幌1R 優勝馬 キガン 指数-5 評価B
新馬戦では好位から伸びきれず3着だったキガン。今回は7番枠からアオって出遅れ、中団中目からの競馬。3角で徐々に外に出されて4角では外を回り、直線でさらに馬場の良い外に出されると一気に伸びて差し切った。
本馬は2着以下には差をつけており、指数も上々。出遅れのロスをクリアしての勝利は見事だったが、馬場と展開に恵まれた面は否めない。勝ち負けを繰り返しながら、上のクラスを狙う馬だろう。
8月14日(日) 札幌5R 優勝馬 アスクメークシェア 指数-3 評価B
10番枠から出遅れたが、1角で内に入れて好位を追走したアスクメークシェア。向正面で外から捲ってくる馬がおり、3角過ぎから最後の直線序盤までは動けなかった。しかし、馬群がわずかにバラけるとその内目を機敏に捌いてよく伸び、ゴール寸前で差し切り1着。
ラスト2Fは12秒2-12秒3。ほぼ減速しなかったことは評価できる。最後の直線では外から伸びたエンライトメントがいったん完全に抜け出したところを、内から一瞬で差し切ったレース内容には、決め手の鋭さも感じた。叩かれながら上を目指す馬になりそうだ。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)モリアーナの指数「-12」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.2秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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