今村聖奈騎手だけじゃない! 国内外で活躍する「女性騎手」とその歴史

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世界と日本の主な女性騎手,ⒸSPAIA

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14年ぶりの偉業

世界と日本の主な女性騎手,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


先週の小倉日曜メインレース、CBC賞を制したのはテイエムスパーダ。48kgの軽斤量を生かした今村聖奈騎手の気風のいい逃げが1分5秒8のスーパーレコード決着を生んだ。

重賞初騎乗初制覇は2008年愛知杯をセラフィックロンプで制した宮崎北斗騎手以来、実に14年ぶりの快挙。女性騎手としては史上初の偉業となった。

現在JRAでは今村騎手のほか、藤田菜七子騎手、古川奈穂騎手、永島まなみ騎手の計4人の女性ジョッキーが手綱をとっている。2019年にJRAが女性騎手に2kgの減量特典を設定、地方競馬もこれに追随したこともあり、今後ますますの活躍が期待できるだろう。今週は日本だけでなく世界にも目を向けた「女性騎手」の歴史を振り返っていく(数字は2022年7月6日現在)。

10人を超える日本の現役女性騎手

主な日本の女性騎手,ⒸSPAIA


まずは日本における女性騎手の歴史を振り返っていこう。

戦前における斉藤澄子騎手のデビュー不認可に始まり、本邦の競馬界では長らく女性差別が影を落としていた。JRA史上初の女性騎手の誕生は1996年。福永祐一騎手や和田竜二騎手を出した「競馬学校花の12期生」から細江純子騎手、牧原(現姓:増沢)由貴子騎手、田村真来騎手の3人がデビューした。

抜群の知名度を誇る細江純子騎手はJRA通算14勝、シンガポールへの遠征での勝利などパイオニアとして様々な足跡を残した。怪我による早期引退後も様々なメディアで活躍し、唯一無二のキャリアを築いている。

牧原由貴子騎手はデビュー年の3月に新馬戦を勝利し、JRA史上初の日本人女性騎手勝利を達成。デビュー年に9勝、2年目には11勝を挙げ、以降は怪我の影響もあって伸び悩んだものの最終的に34勝をマーク、これは現在でもJRA女性騎手歴代2位の記録だ。

その後2000年代にかけて3人の女性騎手が誕生し、そのうちの一人である西原(現姓:前原)玲奈騎手は引退後に梅田智之厩舎の調教助手に転身。鬼の末脚ショウナンマイティ、2015年の桜花賞馬レッツゴードンキなどを手がけている。

そして2016年に藤田菜七子騎手がデビュー。牧原騎手の引退後、JRA所属の女性騎手が3年ぶりに誕生した。デビュー年は6勝に終わったものの、以後14勝→27勝→43勝と素晴らしい数字を残した。2019年はコパノキッキングとのコンビで、GⅠフェブラリーSに出走(5着)、大井・東京盃で女性騎手交流重賞初制覇、GⅢカペラSで中央所属の女性騎手史上初のJRA重賞制覇を達成。歴史的な一年となった。

以後古川騎手、永島騎手、今村騎手が加わり、今村騎手は早くも通算19勝とスーパールーキーぶりを披露している。CBC賞制覇はさらなる高みへのスタートに過ぎないだろう。GⅠの舞台で表彰台の頂点に立つ日もそう遠くないかもしれない。

JRAでは来日した騎手も含め、計34人の女性騎手が騎乗し、現在まで通算299勝。記念すべき300勝目を達成するのはどのジョッキーか注目したい。

地方競馬の女性騎手トップランナーは名古屋の宮下瞳騎手。現役引退、出産を経て再度復帰し前人未到の地方競馬通算1000勝を積み上げている。近年では園田所属の佐々木世麗騎手が女性騎手史上最速の通算100勝を達成、所属変更もあり2年目の今年は成績を落としているが、立て直しを見守りたいところだ。

海外の著名な女性騎手たち

世界の主な女性騎手たち,ⒸSPAIA


次に世界の女性騎手についても概観していく。

文句なしの頂点に君臨するのがジュリー・クローン騎手(アメリカ)。1993年のベルモントSでコロニアルアッフェアーに騎乗して勝利、女性騎手として史上初のアメリカ三冠レース制覇を決めた。2003年のBCジュヴェナイルフィリーズもハーフブライドルドで制すなど数々のGⅠ勝利を重ね、3000を超える勝ち鞍を残して引退。サラトガ・競馬の殿堂に女性騎手として初めて彼女の名前が刻まれた。1990年には来日し2勝、ジャパンカップにも騎乗している。

リサ・オールプレス騎手(ニュージーランド)は現役女性騎手として一線級に君臨する名ジョッキー。藤田菜七子騎手の憧れの存在である彼女は自国リーディングを4回獲得し、2021/22シーズンも現在2位につけている。その他英米でGⅠを3勝したヘイリー・ターナー騎手(イギリス)、2021年に女性騎手として初めてグランドナショナルを勝ったレイチェル・ブラックモア騎手(アイルランド)などが著名だ。

JRAでは2002年の中山大障害をギルデッドエージで勝ったロシェル・ロケット騎手(ニュージーランド)が現在でも女性騎手唯一のGⅠ勝利。近年ではワールドオールスタージョッキーズに出場したミカエル・ミシェル騎手(フランス)がNAR短期免許を取得、南関東で30勝を挙げて短期免許取得外国人騎手の最多勝記録を更新している。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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