「武豊騎手ら3期生が7000勝」「武幸四郎騎手が2日目で重賞制覇」など 新人騎手記録を振り返る

東大ホースメンクラブ

新人騎手に関するデータインフォグラフィックⒸSPAIA

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騎手デビュー2日目で初重賞制覇

春は出会いと別れの季節。先週で日本競馬を代表する名伯楽・藤沢和雄調教師など7名が現役を引退した一方、今週は今村聖奈騎手や角田大河騎手、馬術選手からの転身という異色の経歴を持つ小牧加矢太騎手など、計10名の新人騎手がデビューする。未来の日本競馬を背負って立つルーキーの活躍に期待したい。

今週のコラムは「新人騎手」をテーマに、デビュー後すぐに輝きを見せたジョッキーたちや過去の世代別成績を振り返る。また、馬券の見地からは新人騎手とどう付き合っていくべきか、データを紐解いていこう。

なお、データは1986年以降。「新人騎手」は競馬学校卒業後デビューした騎手を指す。したがって安藤勝己騎手や戸崎圭太騎手など地方から移籍した騎手や、ルメール騎手やデムーロ騎手のJRA通年免許初年度は除く。

1年目から活躍した主な騎手ⒸSPAIA


まずはデビュー年に輝きを放ったジョッキーたちを紹介する。

第一に名前が挙がるのはレジェンド武豊騎手。やがて天才の名をほしいままにする名手はデビュー年から69勝を挙げ、新人最多勝記録を実に27年ぶりに更新。10月には京都大賞典をトウカイローマンで制して重賞初制覇を果たせば、翌週の京都新聞杯もレオテンザンで勝利。年間最終騎乗で掉尾を飾った阪神牝馬特別と合わせて重賞3勝をマークした。その後の活躍は周知の通り。これからも幾多の記録を打ち立てていくことだろう。

福永祐一騎手もあの福永洋一の息子として華々しいデビューを飾った。初騎乗初勝利を決めると続く2戦目も逃げ切って連勝、翌週の日曜日には騎乗機会3連勝を記録。3月だけで12勝を挙げたが、これは1986年以降の新人騎手として史上最多。実働9ヶ月で53勝を積み上げた。リーディング上位に常時名を連ねるトップジョッキーに成長し、2020年にはコントレイルに騎乗して無敗三冠を達成した。

デビュー週の衝撃では武豊騎手の弟、武幸四郎元騎手(現調教師)も決して劣らない。土曜・日曜に13鞍の騎乗を終えて未勝利のまま臨んだマイラーズC、11番人気に甘んじていたオースミタイクーンとのコンビで直線抜け出し快勝。初勝利を重賞で飾った(もちろん重賞初騎乗)。デビュー2日目にしての重賞制覇はJRA史上最速記録として今も破られていない。

同馬とのコンビではセントウルSも勝ち、有馬記念でも5着に大健闘と抜群の相性を誇った。この年は兄の初年度と同じ重賞3勝を含む37勝という数字を残している。

上記3人を超える勝利数を稼いだのが三浦皇成騎手。3月は4勝にとどまったものの、8月の14勝を皮切りに4か月連続で2桁勝利とスパートをかけ、武豊騎手が持つ記録を大幅に上回る91勝の金字塔を打ち立てた。歴代のルーキーと比べて圧倒的な騎乗数を力に変えた快記録。フィフスペトルでの函館2歳S制覇など上級条件でも良績を重ねた。

長らくルーキーイヤーの勝利数を超えられなかったものの、2019年に102勝とデビュー13年目にしてキャリアハイを更新。次なる目標である中央GⅠタイトル奪取の日も近い。

「黄金世代」になれ! 2019年デビュー第35期生

初年度に顕著な活躍を見せた世代ⒸSPAIA


次に競馬学校を卒業した期別に成績を確認し、活躍が目立った世代を取り上げる。

まずは武豊騎手を筆頭とする3期生。69勝でトップの同騎手に続き、忘れてはいけないのが蛯名正義騎手。勝利数自体は塩村克己騎手(33勝)に次ぐ30勝も、勝率・連対率・複勝率は全て世代トップと、才能の萌芽を見せていた。やがて世代合計で7000の勝ちを連ねることとなる伝説的な世代である。

4年後の7期生もタレントぞろい。39勝で最多勝の藤田伸二騎手をメインに、ブゼンキャンドルやメイショウドトウでターフを沸かせた安田康彦騎手(21勝)、ウオッカとの64年ぶりの牝馬ダービー制覇・ディープスカイで翌年も連覇、1500勝ジョッキー四位洋文騎手(10勝)が脇を固める豪華な布陣だ。

ご存じ「花の12期生」は福永祐一騎手(53勝)・和田竜二騎手(33勝)がツートップ。3年後の春のクラシック、桜花賞(プリモディーネ)と皐月賞(テイエムオペラオー)でともにGⅠ初制覇を飾ったシーンが思い出される。その他柴田大知騎手(27勝)や古川吉洋騎手(21勝)も例年なら主役級の活躍を見せ、ルーキーイヤーに世代合計で200勝近い成績を残した。

近年では2019年デビュー組の35期生が抜けている。斎藤新騎手(42勝)や岩田望来騎手(37勝)に加え、菅原明良騎手(31勝)と団野大成騎手(26勝)も結果を出した。わずか7人で152勝の実績がフロックではなかったことを、まだ4年目ながらここに亀田温心騎手を加えた5名が重賞勝利ジョッキーとなった事実が証明している。正真正銘の「黄金世代」への道を各人が突き進んでいる。

さて、今年デビューする10名の騎手たちは上記の華々しい世代に匹敵する結果を残すことが出来るのか。これからの活躍に注目したい。

馬券の上ではまだまだ

新人騎手3月の成績ⒸSPAIA


最後に過去10年のルーキーが3月に残した成績を分析し、馬券での付き合い方を考察。デビュー月にあたる3月の複勝率はわずか11.1%。いきなり通用するほど甘い世界ではないことが現れており、基本的には買い控えるのが正しいスタンスだ。

唯一例外的に買っていいのは人気を集めている時で、3番人気以内に限れば中堅騎手と同程度の複勝率51.1%をマークしている。ルーキーでも人気を集めるほどの、いわゆる「ご祝儀」的な馬ではそれなりに結果が出ている。オッズが甘ければ踏み込んで買うといいだろう。

平場の競走では3キロ、今年1名がデビューする女性騎手の場合は4キロの減量を得ての騎乗となるが、減量特典のあるレースに限ってもあまり結果が出ておらず、回収率も低い。真に減量が意味を持つのはルーキーがレースの流れを把握していくもう少し後の時期になっているようだ。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。


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