【プロキオンS】昨年は3連単194万円! コースデータで浮上するのはラーゴムとニューモニュメント
勝木淳
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コース傾向は上位人気堅実も
プロキオンはこいぬ座でもっとも明るい恒星であり、シリウス、ベテルギウスとともに冬の大三角を形成する。ベテルギウスはリステッドだが、シリウス、プロキオンはともに重賞。ダートのオープン、重賞シリーズとして冬の大三角は使用されている。
しかし、その名通り、冬の大三角は北半球の12~3月に観測。プロキオンは夏、シリウスは秋のはじめ、レース名とマッチする時期に行われるのはリステッドのベテルギウスSだけだったりする。このミスマッチは施行当時、プロキオンSは4月の阪神、シリウスSが12月の阪神で行われ、施行時期の変更を繰り返し、現在の位置に収まったことにより生じた。ミスマッチは刻まれた歴史の痕跡でもある。冬から初春に戻るときは来るだろうか。
今年も昨年に続き、7月中京は小倉に代替。プロキオンSもダート1400mから1700mに距離変更される。うっかりしないようにしたい。ここでは過去10年間、夏の小倉古馬3勝クラス以上、ダート1700m戦の32レースをサンプルに好走パターンについて考えていく。
夏の小倉ダート1700mといえば、スピード志向の舞台。突然の雨や東シナ海から吹きつける熱風が湿り気を運んでくるゆえに冬ほど乾燥しないからだ。スタミナよりスピード志向となると、紛れが少なくなるのか、1番人気【5-4-5-18】勝率15.6%、複勝率43.8%、2番人気【10-8-3-11】勝率31.3%、複勝率65.6%と上位人気が強い。3勝クラス以上のダート中距離というと、波乱決着のイメージがあるが、このコースではどうだろうか。とはいえ、昨年のプロキオンSは9、14、12番人気で大波乱。一般的な傾向として頭に入れておこう。
3勝クラス以上となると、3歳はそもそも数が少なく、7月JDD、8月レパードSと限定重賞が続くので、【0-0-2-6】複勝率25.0%にとどまる。主力は4歳【14-12-8-61】勝率14.7%、複勝率35.8%、5歳【11-15-14-127】勝率6.6%、複勝率24.0%のふた世代。スピード志向らしく若い馬が有利だが、6歳【6-2-7-89】勝率5.8%、複勝率14.4%まではケアが必要。ダートはベテランの猛者もまたしぶとい。
スピード優先、先行争いがポイント
さらにコース傾向について掘り下げてみたい。枠番と種牡馬成績から見えてくることがあるようなので、ここを調べる。
枠番別成績で気になるのは、まず1枠が【0-3-4-38】複勝率15.6%と勝ち馬が当該条件では10年間出ておらず、かつ複勝率も高くはないという点。小回りダート1700mはどのコースも1コーナーまでの先行争いが激しくなりやすく、1枠はよほどダッシュを効かせないと、先行しづらい。実際、逃げ【0-0-0-6】、先行【0-1-1-5】と数も多くない。逃げたとしても好走はなく、なかなかマイペースに持ち込めない。
一方で2枠は【7-4-3-36】勝率14.0%、複勝率28.0%と好成績。ほかには4枠、5枠の成績がよく、8枠も【5-3-7-48】勝率7.9%、複勝率23.8%とまずまず。1コーナーまでスムーズに進められるかどうかが重要だ。
次に種牡馬別成績。今年の出走予定馬ではサンライズノヴァのゴールドアリュールが【4-1-3-13】勝率19.0%、複勝率38.1%で着度数別トップ。さすがはダートのチャンピオン種牡馬。世代が限られ、出走数は少なくなっていくが、見逃せない。ついでネオユニヴァース【4-0-2-19】勝率16.0%、複勝率24.0%、クロフネ【2-4-2-17】勝率8.0%、複勝率32.0%と芝ダート兼用タイプが続く。
さらにラーゴムのオルフェーヴル【2-3-0-2】勝率28.6%、複勝率71.4%、ヒストリーメイカーのエンパイアメーカー【2-1-0-9】勝率16.7%、複勝率25.0%、ニューモニュメントのヘニーヒューズ【1-2-0-7】勝率10.0%、複勝率30.0%が上位十傑入り。ダートでも比較的スピード優先の種牡馬が並ぶ点も特徴。小倉ダート1700、特に上級条件となれば、スピードは不可欠でそういった戦歴の馬を探したい。
スピード優先だからこそ、前走芝が【3-2-1-15】勝率14.3%、複勝率28.6%と好成績。下級条件なら芝からダート替わりで一変はあるが、上級条件でもそれが有効なコースは多くはない。
20年桜島S、初ダートで快勝したマルシュロレーヌを忘れてはいけない。同じ矢作厩舎が今年、ユニコーンライオンを送る。長期休養明けなので、またニュアンスは異なるが、鳴尾記念勝ち、宝塚記念2着馬をダートに出走させる、なにかを感じるべきか。
また昨年のプロキオンSも前走芝のトップウイナーが14番人気2着と穴をあけた。ちなみに前走芝、かつ距離短縮は【2-2-1-8】勝率15.4%、複勝率38.5%と上昇する。
前走がダートだった馬たちの距離成績はどうだろうか。前走ダートかつ1700m未満は【2-7-3-77】勝率2.2%、複勝率13.5%、1700m【10-12-9-101】勝率7.6%、複勝率23.5%、1700m超【16-11-19-151】勝率8.1%、複勝率23.4%。やはり距離延長で前走よりスタミナを求められるより、短縮によってスピードを求められる臨戦過程が優位。今回延長のサンライズノヴァ、メイショウウズマサ、エアアルマスはデータから評価を下げたい。
短縮組について前走着順をみると、連勝は少ないものの、2~5着が複勝率が高く、2~4着は勝率15%以上と好成績。マリーンSと両にらみのニューモニュメントを狙いたい。また前走同距離だったラーゴムはダート転向2戦目でOP勝ちと勢いに乗る。マルシュロレーヌと同じオルフェーヴル産駒であり、ここも有力だ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。
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