1位は「1.8秒差」つけたサイレンススズカ&メジロブライトの伝説2レース! JRA平地重賞の着差ランキング
高橋楓
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語り継がれる2レース! サイレンススズカの金鯱賞&メジロブライトのステイヤーズS
勝っても負けても納得が出来た馬。その名は「ツインターボ」。1993年、七夕賞制覇の勢いそのままに挑んだオールカマーは今でも忘れられない。
3コーナーを迎えた段階で一体何馬身離しているか分からない程の大逃げを披露し、2着ハシルショウグンに0.9秒差もつける圧勝劇。3着以下に同年の天皇賞(春)を制しているライスシャワー、AJCC勝ち馬ホワイトストーン、3歳時に無敗で桜花賞を制しオークス2着のシスタートウショウ。
なにせ10着馬までが重賞勝ち馬という超ハイレベルな一戦だった。そのメンバーを完封しただけに印象に残っている。今回は「圧勝劇」をキーワードに、JRA平地重賞における最大着差勝利を調べてみた。
1984年、JRAにグレード制が導入されて以降、平地重賞で2着以下を1.7秒以上離して勝ったのは4例しかない。
1998年金鯱賞 サイレンススズカ(1.8秒差)
1997年ステイヤーズS メジロブライト(1.8秒差)
1989年弥生賞 レインボーアンバー(1.7秒差)
1987年札幌記念 フォスタームサシ(1.7秒差)
当然、掲示板での着差は「大差」。これは10馬身以上離して勝った際に表示される。やはり特筆されるのは、1.8秒差の2レースになるだろう。
サイレンススズカの圧勝劇! 「伝説」となった1998年金鯱賞!
もし、今この問いかけがあったら皆はどうするだろう。「全盛期のサイレンススズカが左回り2000mの重賞を走ります。単勝オッズは2.0倍です。賭けますか?」私なら全財産をかき集め単勝1点勝負をする。しかし、これは今だから言えることで、当時の私には無論できなかった。何故なら本命を別の馬につけていたからだ。それほど1998年の金鯱賞は好メンバーだった。
京都金杯、京都記念制覇を含む5連勝中、社台レースホースのミッドナイトベット。岡部幸雄騎乗でアルゼンチン共和国杯制覇を含む4連勝中、かつデビュー以来全て3着以内のタイキエルドラド。その年の中京記念の勝ち馬で前年のマイルチャンピオンシップ3着のトーヨーレインボー。前年に福島で重賞を連勝し直近の中京重賞で2着、4着と好走を続けるテイエムオオアラシ。そして、前年にとんでもない末脚を連発し重賞3連勝で菊花賞を制しているマチカネフクキタル。
私の本命はマチカネフクキタルだった。同馬は神戸新聞杯でサイレンススズカを一瞬で交わし、1馬身以上の差をつけて勝っていた。サイレンススズカはいくら強い勝ち方で3連勝中だったとはいえ、全て1800m戦。相手関係を考えると2.0倍という単勝オッズは妥当だった。しかし、だからこそこのレースは伝説となるのだ。
前半の1000mを58.1秒というタイムで後続を突き放し、残り800mを過ぎても10馬身以上の差をつけていた。最後の直線を向いた時には競馬場中から拍手と、衝撃の笑い声すら聞こえる状況。最後まで差は縮まる事無く「1.8秒差」の圧勝劇で閉幕。ファンの心に強く焼き付いたレースだった。
必要なのは一言だけ「強い!」 1997年ステイヤーズS
「そんなとこまでお父さんに似なくてもよいのに」当時、菊花賞が終わった時に私が呟いた一言だ。父メジロライアンは皐月賞3着、日本ダービー2着、菊花賞3着。その子メジロブライトは皐月賞4着、日本ダービー3着、菊花賞3着。どちらも常に上位人気に支持されていながら栄光にあと一歩届かなかった。
春はサニーブライアンの引き立て役に回り、悲願を期待された秋はマチカネフクキタルの切れ味に屈するという、如何にも惜しい馬というのが本音だった。そんな本馬が次走にステイヤーズSを選択してきた。まさに背水の陣。
来春の古馬GⅠ戦線でスター街道を歩むためには負けられない一戦。対戦相手も同級生で青葉賞の勝ち馬トキオエクセレント、昨年の覇者サージュウェルズ以外は重賞馬が見当たらない事でますます拍車がかかった。しかし、レースが終わった時には私は身動きがとれなかった。「強すぎる」という言葉とともに。
曇天の、いかにも暮れの中山競馬場という雰囲気の中、初コンビの河内洋騎手のムチに応え大楽勝を演じたのだ。しかもエンジンがかかりだし、突き放したのはラスト200mを過ぎてから。まるでゲームのレースを見ている様な感覚だった。ゴールした時には「1.8秒差」の圧勝。相手関係ではない、この馬の本気を出した時のポテンシャルの凄まじさを垣間見たレースだった。
2000年以降の着差ランキング! トップは同タイムで3レース!
さて、1.7秒以上の着差がついたレースは全て20世紀。21世紀に入ってからの最大着差はというと「1.5秒」となる。3レースあるのだが奇しくも全て2003年の出来事だ。
・有馬記念 シンボリクリスエス
・ジャパンカップ タップダンスシチー
・エルムステークス アドマイヤドン
やはりジャパンカップと有馬記念が印象深い。まず11月30日に重馬場のジャパンカップでタップダンスシチーが9馬身差(1.5秒差)の影をも踏ませぬ逃走劇を披露すると、12月28日の有馬記念では引退レースとなるシンボリクリスエスがお返しとばかりにレコードタイムを記録しながらの9馬身差(1.5秒差)の圧勝。
スティルインラブの牝馬三冠、ネオユニヴァースの牡馬二冠、春にはヒシミラクルの大活躍など賑やかだった2003年の競馬界を締めくくるに相応しい、年末の2レースだった。
《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレース、競輪の記事を中心に執筆している。
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