【AJCC】実績組のボッケリーニ、マイネルウィルトスを信頼 中山の馬場傾向には要注意
勝木淳
ⒸSPAIA
近年はやや小粒に
早いもので1回中山は最終週を迎える。競馬の正月気分もここまで。次開催はGⅠが待っている。
冬の中山を締めくくるのは伝統のGⅡ・アメリカジョッキークラブカップ、略してAJCC。かつては有馬記念から折り返す馬が多く、実績ある馬の参戦が目立ち、堅い重賞として知られていた。しかし、近年はレース後に近郊の牧場へ放牧に出て、しっかり休む期間を設けるスタイルが主流になり、GⅠ後の続戦というケースは珍しくなった。AJCCもGⅡにしてはやや小粒なメンバーで行われる年が増え、その分、馬券的には難しくなった。データは過去10年分を使用する。
直近の10年で1番人気は【2-3-0-5】勝率20.0%、複勝率50.0%とそこまで信頼できない。2番人気【3-0-1-6】勝率30.0%、複勝率40.0%と合わせればそれなりだが、7番人気【2-1-1-6】勝率20.0%、複勝率40.0%など伏兵台頭の可能性は年々高まっている。
若い実績馬の姿が見えなくなった分、6歳【4-2-3-29】勝率10.5%、複勝率23.7%とベテランの勢いがいい。5歳【3-1-3-21】勝率10.7%、複勝率25.0%もよく、4歳は【2-4-3-16】勝率8.0%、複勝率36.0%と勝ち切れない。7歳以上も【1-3-1-49】勝率1.9%、複勝率9.3%と存在感を示している。
ベテランが総じて強いのは、冬の中山開催最終日と関係がある。休眠期の芝は天候が悪化せずとも回復できず、開催が進むにつれ傷みが目立ってくる。荒れた馬場で時計を要するため、パワーとスタミナ優先の競馬になりやすく、ベテランに出番がまわってくる。ただし、今年の中山芝は開幕週が高速馬場だった。例年通り時計がかかってくるのか疑問だ。悪天候で開催されない限り、ある程度速いまま最終週を迎える可能性がある。それを考えると、そこまでベテラン勢に出番が回ってこないかもしれない点は注意したい。
高速決着歓迎のボッケリーニ
とはいえ、今年もボッケリーニ、マイネルウィルトスなどベテラン勢が主力を形成する。時計勝負になった際、対応できる馬を探すのも難しいかもしれない。そこで、前走傾向などを確認し、データ面から候補を探ってみよう。
AJCCの立ち位置が変わりつつあるものの、基本は前走GⅠが【5-3-2-27】勝率13.5%、複勝率27.0%と中心になる。GⅠの内訳をみると、有馬記念【2-0-0-10】勝率、複勝率16.7%、菊花賞【1-3-0-6】勝率10.0%、複勝率40.0%が主要ルートだ。ショウナンバシットのジャパンCは【0-0-2-3】複勝率40.0%、モリアーナの秋華賞は出走馬なし。今年は前走GⅠ組を中心に考えていいものか、迷うところだ。ちなみにショウナンバシットはジャパンC11着だが、ジャパンC10着以下は【0-0-2-2】。昨年ユーバーレーベンがジャパンC10着から巻き返した。
前走GⅡ【2-0-2-22】勝率7.7%、複勝率15.4%はマイネルウィルトス、チャックネイトなど前走好走馬がいる。マイネルウィルトスの前走ステイヤーズSは【1-0-0-9】。15年にはクリールカイザーが3着から巻き返して勝利しており、マイネルウィルトスもチャンスだ。2走前はアルゼンチン共和国杯2着、長期休養前は目黒記念2着など東京の芝2500m重賞に実績があった。速い馬場に対応できるスタミナ型で、高速馬場だった開幕週のステイヤーズS好走も追い風になる。条件的に合いそうだ。
チャックネイトのアルゼンチン共和国杯は【0-0-1-7】。21年3着ラストドラフトはアルゼンチン共和国杯2着から。チャックネイトもデータ的に分が悪いものの可能性はある。4勝中3勝は東京や中京で、中山向きではなさそうだが、これも高速馬場なら話は変わるかもしれない。
前走GⅢ【1-6-4-28】勝率2.6%、複勝率28.2%は複勝圏であれば検討すべきだろう。ボッケリーニのチャレンジCは【0-2-0-4】複勝率33.3%。内訳は3着【0-1-0-0】、10着以下【0-1-0-1】。2着以内の出走はゼロだが、ボッケリーニは実績では最上位といっていい。中山は日経賞2年連続2着、AJCCは22年3着で適性もある。鳴尾記念勝ちは1:59.1、チャレンジC2着は1:58.8で、高速決着も歓迎だ。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『キタサンブラック伝説 王道を駆け抜けたみんなの愛馬』(星海社新書)に寄稿。
《関連記事》
・【競馬】東大HCが阪神巧者を徹底検証 国分恭介騎手は「逃げ」で回収率1000%超え
・武豊騎手、JRA重賞350勝までの道のり 節目の重賞勝利を振り返る
・2023年に産駒がデビューする新種牡馬まとめ 日本馬の筆頭・レイデオロは「ディープ牝馬」との配合で期待
おすすめ記事