【スプリンターズS】GⅠの厳しい流れでこそ良さが生きる Cアナライズからはアグリを推奨

貴シンジ

スプリンターズS、主な前走レース別成績(過去10年),ⒸSPAIA

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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す

先週のオールカマーはジェラルディーナを推奨し3番人気6着。今回も早めに動く競馬をしたがラストの坂で脚が上がってしまった。さて、今回は10月1日(日)中山競馬場で行われるスプリンターズSについて下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走不利データ」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった19頭を検討対象とし、過去10年分のデータを使用する。

重要データ:それぞれのステップごとの好走パターン

前走レース別成績,ⒸSPAIA


スプリンターズSは秋の最強スプリンター決定戦。前走のレース別で見ると大きく分けて3つのパターンからの好走が多い。1つ目はセントウルS組。スプリンターズS最大の前哨戦だけあり、ここからは5頭の勝ち馬が出ている。成績は【5-4-2-42】で単勝回収率31%、複勝回収率82%となっている。5頭も勝ち馬が出ているにも関わらず、これだけ単勝回収率が低いのは人気馬が勝利しているということだ。

勝った5頭は全て3番人気以内。人気馬ということは前走着順もよく、セントウルSからの勝ち馬で前走最低着順だったのは15年ストレイトガールの4着。とはいえ同馬は当日も1番人気で、セントウルS組は人気かつ前走でも好走している馬を狙うのが良いだろう。今回で言えばテイエムスパーダが勝っているが、人気になるのは2着のアグリ。従って同組からはアグリを狙い馬として挙げておきたい。

2つ目は安田記念組。ここは該当馬の少ない組だが2勝していて、【2-1-1-6】で複勝率は40.0%もある。ただ単勝回収率は54%。勝ったのは20年グランアレグリア、17年レッドファルクスの2頭で両馬とも当日1番人気。安田記念でも前者は1着、後者は3着と好走していた。今回はメイケイエールが安田記念からの臨戦だが同レース15着かつ当日も上位人気にはならない可能性が高い。ここからの推奨馬はなしで良いだろう。

最後は夏競馬のキーンランドC、北九州記念、CBC賞の3つのレースからの臨戦。サマースプリントシリーズに含まれるレースだが、【3-2-5-57】で単勝回収率は113%となっている。3、8、13番人気が勝利していて、3着以内で見てもかなり穴馬が絡んでいる。前走着順で見ても6着以下から2頭の勝ち馬が出ていて、凡走していたとしても侮れない組だ。予想をする上で前走着順にとらわれず、前走からの上積みを考える必要がある組だろう。

前走不利データ:北九州記念のモズメイメイ

モズメイメイの前走は北九州記念10着。葵Sを勝利していたことから当日は2番人気だったが、人気に応えることはできなかった。そもそも北九州記念は3歳馬の相性が悪く、過去10年で【1-1-2-17】で単勝回収率41%、複勝回収率44%と低調だった。

スプリンターズSは勝ち馬こそ1頭しか出ていないが、過去10年の3歳馬成績は【1-2-1-15】で複勝率21.1%、複勝回収率103%。夏に一戦しか使ってないことからもここに照準を合わせており、古馬と一度戦った上積みは大きいだろう。

血統解説:アグリ、ママコチャ

・アグリ
4代母イブニングエアーを根幹としてアメリカやヨーロッパで牝系が広がっており、ロングアイランドH(GⅡ・芝12F)勝ち馬で英オークス3着のMidnight Line、21年のウッディ・スティーヴンS(GⅠ・ダート7F)勝ち馬Drain the Clock、ジョッキークラブS(GⅡ・芝12F)とプリンセスオブウェールズタタソールズS(GⅡ・芝12F)勝ち馬で、2020年バーデン大賞(GⅠ・芝12F)で2着のCommunique、武豊騎手騎乗でアベイユドロンシャン賞(GⅠ・芝5F)を勝利したImperial Beautyなどが出ている。

本馬の近いところでは祖母TogetherがクイーンエリザベスⅡ世チャレンジカップS(GⅠ・芝9F)勝ち、その3/4同血の半兄Jan Vermeerがクリテリウム国際(GⅠ・芝8F)を勝利していて活力の高さは十分だろう。

基本的にスタミナがある馬が多いが、距離適性に関してはつけられる種牡馬に影響を受けやすいのが特徴の一つ。アグリはカラヴァッジオの産駒でScat Daddyの影響が強く、スピードを全面に押し出したスプリンタータイプに出た。とはいえこの牝系なら1400~1600mも対応可能でタフな展開は得意。GⅠの厳しい流れになればより良さが出るだろう。

10/9の新馬戦にはアグリの母オールドタイムワルツの全妹であるキャントバイミーラヴとNo Nay Neverを掛け合わせたアンドアイラヴハーが出走予定。字面上はアグリと3/4同血になるためこちらも要注目の一頭だ。

アグリの血統表,ⒸSPAIA


・ママコチャ
日本での牝祖は3代母ウェイブウィンドだが、祖母シラユキヒメがその後継として一族の枝を伸ばしている。この一族は日本に入ってくる前は7代母Milongaを根幹として繁栄を見せ、同馬自身はイタリアオークス2着の実績がある一流馬。アメリカで広がったファミリーではあるものの、ダート一辺倒というわけではなくMilongaの良さを継承した芝向きの産駒も輩出している。

日本では18年キーンランドC勝ちのナックビーナスもこのファミリーだ。持続力を生かして競馬をするタイプが多く、成長力を兼ね備えている馬が多いのが特徴。ソダシの全妹ということでデビュー時から注目されている一頭だ。父がクロフネで牡馬であればダート特化タイプになっていた可能性が高いが、牝馬に出たことで柔らかさが牡馬よりあり、芝でOPクラスまで上り詰めた。姉同様高速馬場への適性は高く、体型的にもよく似ている。

本質的なスプリンターというよりは、気性面もあってスプリントを使っているというタイプ。身体つきだけ見ればもう少し距離があったほうが実力は発揮しやすい。また先週の雨で多少馬場が痛んで時計がかかる馬場状態になれば、より好走パターンからは外れてくるだろう。

ママコチャの血統表,ⒸSPAIA


Cアナライズではアグリを推奨

今回のCアナライズではアグリを推奨する。前走は33.5-33.7とスプリント重賞にしてはかなりゆったりとしたペースでテイエムスパーダにまんまと逃げきられてしまった。しかし、上がり3F最速の2着とスプリント戦でもトップレベルの実力があることを示した。

差し馬だけに追走力が求められるGⅠでは、本馬はついていけない不安もあるが、血統的にはそういうタフな展開でこそ良さが生きるタイプ。ここは名手・横山典弘騎手の久々のGⅠタイトル獲得に期待したい。サマースプリントシリーズ組からは前走不利データを持っているモズメイメイを特注馬としてピックアップしておく。

【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。

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