【シンザン記念】モーリス産駒が好相性も、少頭数がカギに 有力馬の血統解説

坂上明大

2023年シンザン記念の傾向と血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

2020年世代の3歳重賞初戦・シンザン記念。オルフェーヴルやジェンティルドンナ、そしてアーモンドアイといったのちの三冠馬がステップにした出世レースですが、今年も京都競馬場改修工事の影響により中京芝1600mを舞台に行われます。中京芝1600mに強い血統を中心に、シンザン記念のレース傾向を整理していきましょう。

中京芝1600mを舞台に行われた直近2年で好走が目立つ血統はSadler's Wellsノーザンテースト。東京や阪神のマイル戦とは異なり、タフな消耗戦になりやすいのが中京芝1600m重賞の特徴。シンザン記念においても、2021年は前後半4F46.3-47.0の前傾0.7秒、2022年は同47.0-47.1の前傾0.1秒、と3歳限定戦としては非常にタフなペースで流れており、日本の主流血統よりも消耗戦に強い血統の活躍が目立つ傾向にあります。そして、両血脈は同コースで行われる中京記念や京都金杯でも多数の好走馬を出しており、その点からもヨーロッパで繫栄するようなタフな血脈が狙い目といえるでしょう。

シンザン記念近2年の血統別成績,ⒸSPAIA



ちなみに、具体的な種牡馬を挙げるならダイワメジャーモーリスに注目。データは過去10年間に中京芝1600mで行われた1勝クラス以上の世代限定戦を対象に、10走以上のサンプルがある種牡馬の成績を載せています。ダイワメジャーは勝率36.8%という驚異的な数字を記録しており、モーリスについても単勝回収率、複勝回収率ともに100%超という好成績を残しています。そして、両種牡馬は(中京開催の)シンザン記念でも勝ち馬を出しており、特にモーリスについては馬券圏内馬6頭中3頭を占めるという素晴らしい成績を残しています。

中京芝1600m世代限定戦の種牡馬別成績,ⒸSPAIA



ただ、1点だけ注意したいのは今年は少頭数戦になるということ。頭数が少なければペースが落ち着く可能性も高くなるため、そうなるとディープインパクトを中心とした日本の主流血統の好走率が高くなりそうです。

血統解説

・ライトクオンタム
ディープインパクトのラストクロップ。母父父Elusive Qualityは父の瞬発力源を刺激するニックス血統で、420キロ台の小柄な馬体からも本質的には中距離で瞬発力を活かす競馬がベストでしょう。直近2年のシンザン記念とは相性が悪いタイプですが、逆にスローペースになれば最上位に評価したい素質馬です。

・ペースセッティング
母ジェットセッティングは2016年愛1000ギニー優勝馬で、父Showcasingは2009年ミドルパークS3着馬。Danzigの4×5やZafonicの3×4などスピード血脈を豊富に併せ持ち、スプリント戦をひと息で走り抜ける形がベストの配合形です。前走からさらに200m延びる点はプラスとは言えず、今回は展開の助けが欲しいところです。

・クファシル
母母は女帝エアグルーヴ、母は2012年マーメイドS勝ち馬グルヴェイグ、半姉に2021年ローズS勝ち馬アンドヴァラナウトがいる良血馬。本馬はこのレースと相性の良いモーリスを父に持ち、ノーザンテーストを5×4でインブリード。心身ともに幼さが目立つ初戦の内容ではありましたが、スケールや適性面については今回のメンバーでもトップクラスの一頭といえるでしょう。

2023年シンザン記念、有力馬の血統解説,ⒸSPAIA



ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。



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