2022年下半期のGⅠデータまとめ 「3歳馬が古馬撃破」「外国人ジョッキーが躍動」

東大ホースメンクラブ

2022年下半期GⅠのデータまとめ,ⒸSPAIA

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盛り上がりを見せた秋GⅠ

年内最後のJRA・GⅠホープフルSをドゥラエレーデが制し、2022年の中央競馬が幕を閉じた。

3歳牡牝三冠のフィナーレ、秋古馬三冠をはじめとする3歳馬と古馬との直接対決など盛り上がりがピークに達する時期とあって、今年も白熱のレースが繰り広げられた。今後さらなる活躍に期待できるスターホースが数多く出現し、来年以降にも楽しみが広がるところだ。

今週のコラムでは下半期のJRA・GⅠ 13レースと地方JpnⅠ・GⅠ、海外GⅠを振り返る。まずはJRA・GⅠから古馬混合戦について成績を確認する。

猛威をふるった3歳馬、外国人ジョッキー

2022年下半期のJRA・古馬混合GⅠデータ,ⒸSPAIA



<2022年下半期のJRA・古馬混合GⅠ 主なデータ>
1番人気【2-1-0-5】勝率25.0%/連対率37.5%/複勝率37.5%
3歳馬【3-4-2-16】勝率12.0%/連対率28.0%/複勝率36.0%
ルメール騎手【2-0-0-4】勝率33.3%/連対率33.3%/複勝率33.3%
短期免許外国人騎手【3-2-2-13】勝率15.0%/連対率25.0%/複勝率35.0%

まずは古馬混合GⅠ・8レースについて確認する。

昨年12月から続いていた平地GⅠの1番人気連敗記録は天皇賞(秋)のイクイノックスが止め、有馬記念も同馬が1番人気の支持に応えて楽勝したもののの、全体では依然として低調な数字。本命党にとっては受難、穴党にとっては垂涎の2022年シーズンだったのではないか。

もう一つの大きな変化として、3歳馬の躍進が目立つ秋でもあった。前述したイクイノックスの2勝、セリフォスのマイルCS制覇、その他2着4回と計7連対。同時期の古馬混合GⅠでの3歳馬の連対数としては、過去10年で最多だった。2歳戦から育成のサイクルが前倒しされている傾向と合致するように、早い段階で古馬とも渡り合える実力の持ち主が増えてきているのだろう。来年以降もぜひ覚えておきたいデータだ。

ジョッキー別では外国人騎手の存在感が際立っていた。イクイノックスの手綱を取ったルメール騎手、短期免許で来日したムーア騎手、レーン騎手、C.デムーロ騎手がそれぞれ1勝、M.デムーロ騎手もエリザベス女王杯でライラックを12番人気ながら2着に激走させた。この5人で【5-3-2-12】複勝率45.5%、単勝回収率121%、複勝回収率144%と黒字域。ビッグレースは騎手で狙う戦略もまだまだ健在のようだ。

しかしその影でGⅠ初制覇を飾るジョッキーも。スプリンターズSで好枠のジャンダルムを導いた荻野極騎手、チャンピオンズCでジュンライトボルトに砂の王者の称号を贈った石川裕紀人騎手の騎乗は見事だった。

最後にオジュウチョウサンのラストランとなった中山大障害。絶対王者は果敢に中団前目からプレッシャーをかけ続け、最後は力尽きたものの意地の走りを見せた。新王者ニシノデイジーへバトンをつなぐ美しい散り際を忘れない。

2022年下半期のJRA・古馬混合GⅠデータ,ⒸSPAIA

来年以降の飛躍へ、若駒たちの決戦

次に世代限定GⅠ・5レースを振り返る。

牝馬三冠最終戦、秋華賞を制したのはスタニングローズ。二冠馬スターズオンアースがゲートで後手を踏むのを尻目に、堂々の先行策で最後の一冠をつかみ取り、バラ一族久しぶりのGⅠ勝利となった。0秒1差まで迫った2着ナミュール、猛然と追い込んだ3着スターズオンアースまで差のない競馬。来年以降も激戦が繰り広げられるだろう。

牡馬三冠最終戦、菊花賞はアスクビクターモアが制覇。皐月賞5着、ダービー3着と着実にステップアップを果たし、持ち味がフルに生きる仁川の長丁場を正攻法で押し切った。ハナ差2着に敗れたボルドグフーシュは有馬記念でも2着、3着ジャスティンパレスもグランプリで見せ場を作った。

2歳女王決定戦、阪神JFはリバティアイランドの差し切り。アルテミスSでの惜敗を糧に後続に2馬身半の差をつける快勝。桜戦線はこの馬が中心になるだろう。2着はキャリア1戦ながら健闘したシンリョクカ、3着には堅実な走りが光るドゥアイズが入った。

朝日杯FSで2歳マイル王の座に就いたのはドルチェモア。確かな先行力と好枠を武器に大接戦をモノにした。鞍上の坂井瑠星騎手はこの秋GⅠ・2勝目。さらなる飛躍が期待できる。2着は川田将雅騎手の完璧な騎乗が光ったダノンタッチダウン。3着レイベリングは大外を回って真っ向勝負を挑んでの結果で、3歳シーズンも追いかけたい一頭だ。

2歳中距離王決定戦、ホープフルSはドゥラエレーデが勝利。ムルザバエフ騎手はJRA・GⅠ初制覇となった。2着には横山典弘騎手の見事なペース運びで勝ち馬とハナ差の接戦に持ち込んだトップナイフ、3着にキングズレインが追い込んだ。

未知の領域へ、日本馬の挑戦は続く

最後に地方、海外のビッグレースについても触れる。

下半期最初のJpnⅠ、ジャパンダートダービーを制したのはノットゥルノ。武豊騎手は日本ダービーをドウデュースと制しており、芝ダートともにダービーを制したことになる。恐るべき53歳、さすが日本競馬が誇るレジェンドである。

マイルCS南部杯を勝ったのはカフェファラオ。ヘリオス、シャマルとの壮絶な叩き合いを制し、ワンターンのマイル戦国内最強格を守った。JBCスプリントはダンシングプリンス、レディスクラシックはヴァレーデラルナ、クラシックはテーオーケインズがそれぞれ勝ち切った。東京大賞典はウシュバテソーロが勝利。中央で磨いた切れ味を初の大井で爆発させた。2着にはJDD勝ち馬ノットゥルノ、3着には帝王賞勝ち馬メイショウハリオとコース巧者が占めた。

海外GⅠへの挑戦は矢作勢の2頭、キングエルメス、バスラットレオンの英仏遠征からスタート。2頭で4戦を戦い、最高着順はバスラットレオンのサセックスS4着に終わったが、この経験は両馬をさらに強くしていくことだろう。

4頭が挑戦した凱旋門賞はタイトルホルダーの11着が日本勢最先着。大雨のロンシャンは田んぼのような極悪馬場になってしまい、日本勢にとっては非常に厳しいコンディションだった。来年以降の再遠征が濃厚なドウデュースをはじめ、悲願の戴冠へ挑戦は続く。

香港国際競走で日本勢唯一の勝利をつかんだのがヴァーズのウインマリリン。日本では経験のない後方待機からの大外一気で初のGⅠタイトルをつかみ取った。鞍上のレーン騎手の好騎乗と、5歳秋で心身ともに充実期にあるウインマリリンの強さが光るレースだった。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。



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