【オールカマー】宝塚記念組デアリングタクト、中山巧者ヴェルトライゼンデ優勢 割って入るかソーヴァリアント

勝木淳

オールカマーインフォグラフィック,ⒸSPAIA

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1番人気は3連敗中

今年の古馬中距離戦線は3歳ジオグリフ、イクイノックスの木村哲也厩舎勢が参戦を表明。シャフリヤール、ジャックドール、パンサラッサ、カラテなど多彩なメンバーで天皇賞(秋)を迎える。オールカマーには三冠牝馬デアリングタクトが登場。本番に向けてその走りに注目したい。データは14年新潟を含め、過去10年間のものを使用する。

過去10年オールカマー人気別成績,ⒸSPAIA


1番人気は【2-2-1-5】勝率20.0%、複勝率50.0%。かつては非常に堅いイメージの強いレースだったが、この10年で1番人気の半数は馬券圏外。昨年も1番人気レイパパレが4着だった。基本的には実績馬の休み明け。割り切りも必要かもしれない。とはいえ、勝ち馬は5番人気【2-1-0-7】勝率20.0%、複勝率30.0%など5番人気以内で9勝。3着以内も基本的には5番人気以内優勢も、6番人気【0-0-3-7】複勝率30.0%など伏兵の割り込みも考えられる。

過去10年オールカマー年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢別でみると、主力は4歳【4-5-3-14】勝率15.4%、複勝率46.2%。ここに出走頭数が多い5歳【5-3-5-36】勝率10.2%、複勝率26.5%が絡むという図式。データ上では長期休養明けのソーヴァリアントや天皇賞(春)3着テーオーロイヤルら4歳勢にデアリングタクト、ヴェルトライゼンデ、ウインキートスら5歳勢がどこまでといった感じか。さすが秋の中山伝統のGⅡ、今年は改めて顔ぶれが豪華だ。


好相性は前走宝塚記念

1番人気はここ3年人気を裏切ってはいるものの、基本的には上位人気堅実、4、5歳中心といった傾向をデータで振り返った。上記実績馬たちの争いになりそうな予感もあるが、前走傾向についてもみてみよう。

過去10年オールカマー前走クラス別成績,ⒸSPAIA


実績馬の始動戦というオールカマーのレース特性通り、前走GⅠは【6-4-2-17】勝率20.7%、複勝率41.4%と目立つ。

過去10年オールカマー前走GⅠ組レース別成績,ⒸSPAIA


前走GⅠの内訳はやはり春の中距離GⅠが中心。なかでも宝塚記念は【3-2-2-7】勝率21.4%、複勝率50.0%と抜けた印象。3着だったデアリングタクトが該当する。

過去10年オールカマー前走宝塚記念組着順別成績,ⒸSPAIA


宝塚記念の着順別成績は6~9着【2-1-0-1】勝率50.0%、複勝率75.0%など負けた組の数字も目立つが、今年は見当たらず。デアリングタクトが該当する前走3着【1-0-0-1】をどこまで信用できるか。サンプル数が少ないので、買うにしろ消すにしろ、これを判断の決め手にはしづらい。昨年レイパパレが4着に敗れており、15年はショウナンパンドラが3番人気1着。どちらも牝馬だ。レイパパレは先行タイプ、ショウナンパンドラは差しタイプ。そう考えるとデアリングタクトにも目はある。

今年の宝塚記念はご存じの通り。パンサラッサが前半600m33.9で入り、番手にタイトルホルダーがつけ、前半1000m57.6、後半1000m1.00.0で乗り切るという恐ろしい記録。超ハイレベルな一戦だった。

デアリングタクトは2着ヒシイグアスに次ぐ上がり2位を記録。厳しい流れで差し馬が脚を使い切れないなか伸びており、底力は改めて感じさせた。脚元の不安で休養が長かった馬だけに、状態面は休み明けから万全ではないだろう。前哨戦で厳しい流れになりにくく、先行勢有利の展開面と不安なところはあるが、宝塚記念3着は評価したい。

次に前走天皇賞(春)【2-0-0-5】勝率、複勝率28.6%について。3着テーオーロイヤル、14着クレッシェンドラヴが該当する。過去の2勝は16年ゴールドアクターが天皇賞(春)12着から、21年ウインマリリンが5着からそれぞれ巻き返した。

この2頭の共通点は中山重賞の実績。ゴールドアクターもウインマリリンもその年の日経賞を勝利しており、ゴールドアクターはその前年に有馬記念V。テーオーロイヤルは関西の上がり馬的存在で、中山未出走。クレッシェンドラヴはオールカマーで19、20年5、4着、今年の日経賞は4着。勝利こそないが、好走はあるので、中山が向かないことはない。ただ勝った2頭とは中山実績で見劣る。これもどうとるか考えたい。


ヴェルトライゼンデと復帰戦のソーヴァリアントに注目

ウインキートスが該当する前走目黒記念は【0-0-2-5】複勝率28.6%。3着2頭は12年ユニバーサルバンクが目黒記念5着、20年ステイフーリッシュが3着だった。今年のウインキートスは目黒記念3着。昨年のオールカマー2着の実績馬であり、今年もローテは悪くない。

前走GⅢは【3-3-1-45】勝率5.8%、複勝率13.5%で、やはり夏の勢いそのままにというケースは多くはない。なかではジェラルディーナが当てはまる小倉記念は【0-1-0-6】複勝率14.3%。13年メイショウナルトが小倉記念1着、オールカマー2着だった。ジェラルディーナは小倉記念3着。オープン入り後、賞金加算できたのは鳴尾記念2着のみ。GⅠ出走を考えると、前哨戦から全力でいきたいところ。上位馬との状況の違いを踏まえつつ狙う手もあるが、中山未出走で適性はやってみないと分からない。

上位人気候補ヴェルトライゼンデなどが該当する鳴尾記念は【0-0-0-4】。4頭は4、11、8、10番人気。ちょっと頼りないメンツでデータは額面通りに受けとれない。ヴェルトライゼンデの中山成績は皐月賞8着を除くと、重賞2着3回と得意舞台。鳴尾記念復活Vを弾みに、ここも全力投球だ。

出走すれば昨年12月以来となるソーヴァリアント。さすがにチャレンジCから来る馬はいないが、昨年同舞台のセントライト記念2着はそれなりのインパクトだった。チャレンジCではヒートオンビートに0.6差で快勝。状態さえ戻っていれば、今回好走しても不思議はない。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。


オールカマーインフォグラフィック,ⒸSPAIA



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