クラブ選びや出資馬選定など一口馬主の始め方をご紹介! 毎月かかる費用などお金事情も詳しく解説
高橋楓
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顕彰馬やダービー馬も誕生! 夢の一口馬主ライフ
1996年の秋競馬は衝撃だった。秋華賞ファビラスラフイン、天皇賞(秋)バブルガムフェロー、菊花賞ダンスインザダーク、エリザベス女王杯ダンスパートナー、マイルCSジェニュイン。5週連続で同じような縦縞の勝負服がGⅠを勝ち続けたのだ。
うち3勝は一口馬主クラブの社台レースホースの所属馬。個人の馬主免許を持っていなくとも、こういった形で競馬に参加できるのだと衝撃を受けたものだ。さて、今回はそんな一口馬主クラブの入会から楽しみ方までを紹介していく。
これまでにJRAで顕彰馬、つまり競馬の殿堂に選出された馬は34頭。うち4頭が一口馬主クラブから誕生している。
タイキシャトル(大樹ファーム・募集額5000万)
オルフェーヴル(サンデーレーシング・募集額6000万)
ロードカナロア(ロードホースクラブ・募集額2625万)
ジェンティルドンナ(サンデーレーシング・募集額3400万)
タイキシャトル以降の9頭中4頭が一口馬主クラブから選出されており、時代の変化と共に、いかにクラブ馬が活躍しているかが分かるのではないか。また、オルフェーヴルとジェンティルドンナはそれぞれ三冠馬。他にも牝馬三冠馬が2頭誕生している。
アーモンドアイ(シルクレーシング・募集額3000万)
デアリングタクト(ノルマンディーサラブレッドレーシング・募集額1760万)
歴代で牝馬三冠を達成したのは6頭のみ。うち3頭が一口馬主クラブの募集馬だ。
また、ホースマンの夢である「日本ダービー制覇」を達成した馬も7頭いる。
1986年 ダイナガリバー(社台レースホース・募集額4000万)
2003年 ネオユニヴァース(社台レースホース・募集額7000万)
2011年 オルフェーヴル(サンデーレーシング・募集額6000万)
2012年 ディープブリランテ(サンデーレーシング・募集額4400万)
2015年 ドゥラメンテ(サンデーレーシング・募集額1億)
2017年 レイデオロ(キャロットファーム・募集額6000万)
2021年 シャフリヤール(サンデーレーシング・募集額1億2000万)
はじめて一口馬主クラブの馬で栄光を掴んだのはダイナガリバー。当時の資料によると、募集額は4000万となっている。個人的に、レイデオロは特に思い出深い。それまでは口数の少ない40口クラブからしかダービー馬は誕生していなかった。しかしついに400口のクラブからもダービー馬が誕生したのだ。サラリーマンや趣味で楽しんでいる人でもダービーオーナーを夢見ることが出来るのだと、感動したものだ。
肝心なのはクラブ選び! 自身のプランを明確にしよう
ではどんな一口馬主クラブに入会すれば良いのだろうか。現在、主に23クラブが競馬場で募集馬を走らせている。まず、第一に考えなければならないのは、1頭当たりの出資額だ。各クラブによって募集馬の金額を何口で割るか違っている。
例えば社台レースホースやサンデーレーシング、G1レーシングなどは40口で募集しており、2000万円の募集額だと出資するのに一口50万円が必要になる。また希望すれば必ず出資できるわけではない。すでに多くの既存会員がいる中で枠が40口しかなく、近年の出資総額順で優先などのルールがあり、初めての人にはハードルが高いかもしれない。
オーソドックスなのは400口から500口で割っているクラブ。2000万円の募集額だと400口なら5万円、500口なら4万円で一口の権利を手にすることが出来る。これ位になるとグッと身近になってくるのではないか。また、新規会員限定で枠を設けているクラブもあり、初めての人にとっては嬉しい制度だ。
半面、超人気クラブは既存会員優先となっていたり、場合によってはそれらの人が出資を完了してからでないと入会の機会がないケースもある。また、40口クラブ同様に、半分以上の口数をそれまでの近何年間で出資した金額順で優先的に出資できるルールがあるクラブもある。
もっと気軽に始めることが出来るように、1000口から4000口まで間口を広げているクラブもある。募集額によっては一口1万円を切る場合もあり、キャンペーンなどが絡むと1口無料など「まずは体験してみたい」という人向けのプランもある。クラブ選びは多種多様。まずは募集額と自身の予算を照らし合わせることから始めたい。
毎月の費用は? どんな会員サービスがあるの?
予算内で出資したい馬を見つけた際に気を付けなければならないのが、毎月発生する費用だ。
まずはクラブに対しての月会費。多くのクラブは3000円前後に設定している。そして、出資馬の飼葉代金と牧場や厩舎への預託代金が月におよそ60万円程度発生する。それを口数で割って請求される。例えば、400口クラブだと一口1500円程度となる。クラブによっては実費請求で月によって変動するケースもあり、入会の際にルールをきちんと確認しておきたい。
この2点が毎月発生する費用だ。それ以外にクラブによっては入会金がかかるケースもあり、年に1回は怪我に備えて保険料を払わなければならない。保険料は募集額の5%程度を見込んでおけばよいだろう。これらが一口馬主を楽しむうえでかかる一般的な費用だ。
また、各クラブでは会員限定の様々なサービスが提供されている。例えば、出資馬が優勝した際に競馬場で行われる口取り式に参加出来たり、予約制で出資馬に会いに行けるサービスなどもある。クラブによっては年に数回、騎手や調教師を招いてのパーティー、GⅠ制覇記念の式典開催など、普段では味わえないことも多い。しかし、現在は新型コロナウイルスの影響で大きく制限されている。
JRAのリーディング騎手たちや、大井の的場文男騎手と立食パーティーでお話できる日が来るとは、この趣味を始めるまでは思いもしなかった。また、レース仕様のサイン入りゼッケンや写真のサービス。オークション形式だが、純金の優勝メダルや記念品も会員であれば落札することが出来るクラブもある。そしてその落札金額も出資者に分配される。そのあたりもクラブの入会パンフレットに記載があるので、しっかり確認したい。
一口馬主は儲かるの? それとも趣味?
ここまで読んで、イメージはつかめただろうか。筆者も40口から4000口まで複数のクラブを楽しんでいる。ちなみに一番聞かれるのが「儲かるの?」という一言だ。
そう聞かれたとき、私はこう答える。「まず、無理。けど、馬券と違った楽しみがあるよ」と。
一口馬主の募集馬に出資したからと言って、完全な馬主になれるわけではない。クラブが管理して賞金を稼ぐわけで、金融商品なのだ。レースを走るごとに出走手当や賞金が諸経費や税金を引かれた後に口座に振り込まれる。そのうえで中には募集40口のオルフェーヴルの様に15億円以上を稼ぎ出し、種牡馬の分配金があるケースもある。税金などを考えなければ一口5000万円以上を得ている計算になる。しかし、それはごく稀なケースだ。
この趣味を始めて痛感するのは、馬券ファンだった時には感じることが出来なかった、午前中の未勝利戦を迎える前の緊張感。デビューするまでの難しさ。惨敗続きの苦悩。そして、勝った時の爆発的な喜び。人によっては実際の馬主でない以上「愛馬」と呼ぶことを毛嫌いする人もいるだろう。しかし、そう呼びたくなる程の愛着が湧いてくる。それが一口馬主の魅力といえる。是非、自身の心の愛馬を見つけてみて欲しい。
《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレース、競輪の記事を中心に執筆している。
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