2022年上半期のGⅠデータまとめ 「平地は1番人気全敗」「武豊騎手がダービー6勝目」
東大ホースメンクラブ
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平地GⅠ・1番人気全敗の異変
サマーグランプリ・宝塚記念をタイトルホルダーが制し、2022年の上半期GⅠは幕を閉じた。
昨年を最後にコントレイル・グランアレグリア・クロノジェネシス・ラヴズオンリーユーなど、数え上げればキリがないほどのスーパーホースが引退。3歳で年度代表馬に選出されたエフフォーリアが覇を唱えるかと思われたが、そうは問屋が卸さなかった。
今週のコラムではJRAGⅠ・13レースと、地方JpnⅠの川崎記念・かしわ記念・帝王賞を振り返る。まずはJRA・GⅠの全体成績を確認しよう。
<2022年上半期のJRA・GⅠ 主なデータ>
1番人気【1-1-1-10】勝率7.7%/連対率15.4%/複勝率23.1%
父ミスタープロスペクター系【6-2-3-46】勝率10.5%/連対率14.0%/複勝率19.3%
関東馬【9-5-3-60】勝率11.7%/連対率18.2%/複勝率22.1%
何といっても1番人気がことごとく走らなかった半年間だった。勝ったのは中山グランドジャンプを制したレジェンド・オジュウチョウサンのみ。平地GⅠに限れば12頭全敗と極めて珍しい結果になった。勝率だけでなく、複勝率ベースで見ても惨憺たる数字に終わっており、馬券でキツい思いをしたファンの方も多かったのではないか。
種牡馬別成績では父ミスタープロスペクター系の活躍が目立った。父サンデーサイレンス系(5勝)を上回る6勝は種牡馬界の新たな時代を予感させる。勝利を挙げた4頭(カフェファラオ、スターズオンアース、タイトルホルダー、ダノンスコーピオン)の他、高松宮記念で17番人気3着だったキルロード(父ロードカナロア)、大阪杯7番人気3着アリーヴォ(父ドゥラメンテ)など伏兵勢も存在感を発揮していた。
関東馬の大活躍も見逃せない。昨年の同時期6勝も快挙だったが、今年はさらに数字を伸ばして関西馬(4勝)にダブルスコアをつける圧勝。長年の「西高東低」現象を完全に払拭した。大阪杯とNHKマイルCを除く11レースで連対馬を送り出しており、単複回収率はともに黒字域。秋は積極的に買っていきたい。
武豊騎手、ダービー6勝目
次に3歳限定GⅠ・5レースを振り返る。
牡馬クラシックは初戦の皐月賞をジオグリフが制した。札幌2歳Sを圧巻の走りで制し、朝日杯FSでは2番人気に支持された素質馬も、2度の敗戦で主役級からは退いたように見えた。しかし小回りと外伸びの馬場コンディションを生かした軽快な走りで一冠目をゲット。以下2着イクイノックス、3着ドウデュース、4着ダノンベルーガの「4強」の構図で世代最強をかけたダービーが始まった。
レースは直線粘るアスクビクターモアを後方でじっと溜めていたドウデュース・イクイノックス・ダノンベルーガが猛追する展開。末脚勝負を制したのは武豊騎手のドウデュースだった。朝日杯FS制覇から最大目標に向け、陣営が一丸となって馬を作ってきたプロセスが実った会心の勝利。2分21秒9のダービーレコードはダテではなく、パリロンシャンでキーファーズの勝負服が躍動する姿を期待したい。
牝馬クラシック初戦の桜花賞はナミュール・サークルオブライフ・ウォーターナビレラら強豪が人気を分け合う混戦ムードだった。勝者は7番人気スターズオンアース、内有利の馬場で完璧に立ち回った2着ウォーターナビレラ・3着ナムラクレアを最後の最後で捉え切る波乱の幕開けとなった。
桜花賞で4着ながら上がり最速の脚で追い込んだサークルオブライフが1番人気となったオークス。忘れな草賞を完勝したアートハウスという新星も加わる中、またも勝ったのはスターズオンアースだった。クイーンCまでは重賞上位の一角程度の扱いだった同馬はいつの間にかメキメキと力をつけ、二冠馬の座に就いた。父ドゥラメンテをなぞるように二冠後の骨折が判明してしまったものの、秋の最終決戦には無事にエントリーしてほしい。
NHKマイルCはダノンスコーピオンが優勝。共同通信杯での大敗でリズムを崩した感のあった同馬だが、長い月日をかけての在厩調整が実って栄誉をつかんだ。2着に追い込んだマテンロウオリオン、最低人気ながら3着に入ったカワキタレブリーの走りも見事だった。
時代に逆行する「継続騎乗強し」
最後に古馬混合GⅠを概観する。
<2022年上半期のJRA・古馬混合GⅠ 主なデータ>
継続騎乗【7-7-5-67】勝率8.1%/連対率16.3%/複勝率22.1%
乗り替わり【1-1-3-39】勝率2.3%/連対率4.5%/複勝率11.4%
吉田隼人【2-0-1-1】勝率50.0%/連対率50.0%/複勝率75.0%
近年はGⅠで有力馬がリーディング上位、もしくは短期免許騎手に乗り替わるケースが多かったが、そんなビジネスライクな選択をあざ笑うかのごとく継続騎乗組が結果を残した。乗り替わりで勝利したのはフェブラリーSのカフェファラオ(福永祐一騎手)のみで、ともに経験を重ねたジョッキーがパートナーを快走に導いていった。
騎手別ではタイトルホルダーに騎乗した横山和生騎手が2勝をマーク。昨年はエフフォーリアとのコンビで弟の武史騎手がシーンを席巻したが、兄も負けられぬとばかりに馬を信じての好騎乗が目立った。その他ソダシ・ポタジェを勝利に導いた吉田隼人騎手、長年手綱を取ってきたナランフレグでGⅠ初勝利を宗像義忠師に贈った丸田恭介騎手、GⅠ初騎乗でキルロードを激走させた菊沢一樹騎手など、関東の若手~中堅が頑張りを見せた春だった。
地方JpnⅠの先陣を切る川崎記念ではチュウワウィザードが単勝1.2倍の断然人気に応え圧勝。これで川崎記念は1番人気19年連続連対(!)となった。同馬はここをステップにドバイワールドCでも3着に好走し、日本ダート界屈指の実力を誇示した。
かしわ記念を制したのは牝馬ショウナンナデシコ。中盤まで一切緩みのないハイラップを逃げて上がり最速と文句のつけようがない走りだった。牡牝の差が大きいダート界において快挙といってよく、秋以降のさらなるタイトル獲得が濃厚だろう。
テーオーケインズvsオメガパフュームの様相を呈していた帝王賞は、3角手前でのスワーヴアラミスの仕掛けからワンテンポ置いた中団~後方組の叩き合いに。テーオーケインズが伸びあぐねる中、内をすくうチュウワウィザードの猛追を振り切ったメイショウハリオがうれしいJpnⅠ初勝利を飾った。
海外GⅠにも目を向けると、ドバイワールドカップデーでパンサラッサ、シャフリヤールが勝利。この日はGⅡを含めると日本馬が計5勝を挙げる、歴史的な一夜となった。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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