【根岸S】過去10年で差し追込9勝、武蔵野S組4勝 東京巧者タガノビューティーを推奨

貴シンジ

根岸ステークス、過去10年の脚質別成績,ⒸSPAIA

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3つのファクターから推奨馬を見つけ出す

先週の東海Sではウィリアムバローズを推奨し2番人気1着。前有利のレース展開だったが、2着オメガギネスも前々で立ち回っていたから今回は力勝ちの内容だった。さて、今回は1月28日(日)に東京競馬場で行われる根岸Sについて下記3つのファクターを組み合わせる、コンプレックスアナライズで分析を行っていく。

・レースの好走馬及び凡走馬の共通項を探る「重要データ」
・目には見えない上積みを探る「前走の敗因」
・適性と素質を知るための「血統評価」

特別登録のあった19頭を検討対象とし、過去10年分のデータを使用する。


重要データ:好相性の武蔵野S

前走レース別成績,ⒸSPAIA


根岸Sは東京競馬場で行われるダート1400mのレース。スプリント路線を主戦場にする馬とマイル路線を主戦場にする馬が混在することが多いが、日本のダート競走はマイル以上に重点が置かれた番組構成になっているので、馬質もマイル以上の馬の方が高くなる傾向がある。

過去10年で勝ち馬が出ている前走レースは武蔵野S、カペラS、チャンピオンズC、兵庫GT、マイルCS(芝)の5つ。その中でも出走頭数が10頭以上いてかつ好相性なのが武蔵野S。【4-2-1-7】で単勝回収率105%、複勝回収率187%となっている。今年は武蔵野S組が2着タガノビューティー、10着ヘリオスの2頭。カペラS組が6着のベルダーイメル1頭。他の組からの参戦はなく例年に比べると低調なメンバー構成と言えるだろう。

そんな中で注目したいのは武蔵野S2着のタガノビューティー。直線の長い東京競馬場、スプリンターが出走してくる1400m戦ということで、末脚自慢の好走が目立つ。脚質別で見ると逃げ【0-0-0-10】、先行【1-3-1-34】、差し【6-4-4-44】、追込【3-3-5-39】となっていて勝率、複勝率ともに差し馬が最も高く、次点で追込馬が続く。

タガノビューティーの競馬の形は決まって後方からの末脚勝負。昨年の根岸Sではレモンポップに0.3秒差の4着、一昨年は3着とレースへの適性は証明済み。東京ダート1400mも【2-2-1-1】で好相性、今年も注目の一頭だ。

上位人気が予想されるエンペラーワケアは2勝クラス、3勝クラスを危なげない勝ち方で進み、重賞初挑戦。脚質的には先行で相性は良くない。今年は例年に比べるとスプリンターの出走が少なく、前走もかなりハイペースだったため、対応できる可能性もある。しかし、初めての関東遠征、末脚の質が求められる東京競馬場と、乗り越えなければならない壁が多いのが懸念だ。

【前走武蔵野S組】
・タガノビューティー
・ヘリオス


前走の敗因:カペラSのベルダーイメル

ベルダーイメルの前走はカペラS6着。このレースは12番枠からの発走だったが、道中は縦長の馬群になったこともあってインを追走。距離ロスをなくして立ち回ることができた。ただ4コーナーから最後の直線にかけては進路取りにもったいないところがあった。一旦外に進路を求めるもスムーズに確保できず、再度内に切り替えての追い出しとなってしまった。加えて、同レースは前半3Fが33.5で後半3Fが35.8の前傾2.3秒だった。数字だけならハイペースに見えるかもしれないが、これはカペラSとしては過去10年でも遅い流れ。それでいて縦長になったのだから後方勢はどうやっても勝てなかったというのが結論だ。

4走前のエニフS1着時の2着馬スマートフォルスはその後もOP/Lで3走連続2着と上位の実力を見せている。また、ベルダーイメルは3走前にグリーンチャンネルCで2着に入ったが、この時の1着馬はオメガギネス。先週、東海Sで2着と結果を残した実力馬だ。これら対戦内容からも、この馬に展開が向けば重賞でも十分上位争いが可能だろう。2走連続の凡走で人気を落とすのであれば狙い目だ。


血統解説:シャマル、タガノビューティー

・シャマル
日本での牝祖は3代母マジックコード。同馬は現役時バレリーナH(GⅢダート9F)を連覇した実績馬。繁殖としても優秀で05年の阪神JF2着シークレットコードや16年秋華賞2着のパールコードを輩出した。孫世代からも22年のローズS勝ちアートハウスが出ていて活力を持った一族だ。

元々ダート適性が高かったファミリーだが配合次第で上記のように芝での活躍馬も輩出している。シャマルの場合はマジックコードからダンスインザダーク→アグネスデジタル→スマートファルコンと繋いでいて、その中でもアグネスデジタルとスマートファルコンの影響を強く受けてスピード性能の高いダート馬に出ている印象だ。タフな競馬が得意な血統で距離の融通も利くタイプ。東京競馬場は初参戦だが前傾ラップを刻みやすいレースはタフなシャマルにはぴったりだ。

ここ2走は競走中止→右前肢跛行での競走除外と、レースができていないので状態面が不安視されるが、今回は半年間しっかりと休ませてきた。中9週以上間隔を取った際は【3-0-0-1】と走っており、前向きな性格からも休み明けの精神面に問題はないタイプだろう。あとは中身がどれだけ戻ってきているか。最終追い切りに注目してほしい一頭だ。

シャマルの血統表,ⒸSPAIA


・タガノビューティー
日本での牝祖は祖母ソフトパイン。母スペシャルディナーが繁殖として優秀で、本馬の他にNHKマイルC2着のタガノブルグ(父ヨハネスブルグ)、若葉S勝ちのアイトーン(父キングズベスト)などを輩出しており、ファミリーとしては芝適性が高い。母母父Woodmanの影響が強くて胴伸びの良い馬体とそこから繰り出される持続性能の高さは共通項だ。

本馬は父にヘニーヒューズを迎えたためダート馬に出たが、走りのタイプとしてはファミリーと同様。器用なタイプではないので東京コースは【5-5-3-4】と抜群に合う。前走の武蔵野Sでは東京替わりで上積み十分な上、人気もないのであればと、当コラムでも本命に推し6番人気2着と走ってくれたが、引き続き東京コースを使うのであれば多少人気するようでも中心視せざるを得ない。

タガノビューティーの血統表,ⒸSPAIA


Cアナライズではタガノビューティーを推奨

今回はタガノビューティーを推奨する。好走データに合致し、血統、戦績的にも東京コースがぴったりだ。前走より妙味は落ちるが引き続き中心視する。昇級戦のエンペラーワケアは不安要素があるものの、前走でかなりのハイペースを前で引っ張っての快勝なので、根岸Sのペースへの不安はない。相手には入れたい。

対して人気が予想される馬で懐疑的に見るのはサンライズフレイム。こちらは4連勝で勢いがあるが、前走のメンバーレベルは、OP特別としてはそこまで高くない。重賞の壁に跳ね返される可能性は高いと見る。その他では、状態面さえ問題なければ面白い存在のシャマル、前走に明確な敗因があって能力は重賞級のベルダーイメルを注目馬とする。

【ライタープロフィール】
貴シンジ
競馬ライター。サラブレッドの血統をファミリー中心に分析する牝系研究家。3つのファクターから構築する「コンプレックスアナライズ」を駆使して競馬予想を行う。WEBサイト『ウマフリ』で「牝系図鑑」も連載中。競馬予想のほか「競馬王」など商業誌での執筆、一口馬主クラブ募集馬やセリ馬の血統分析、血統の魅力の伝承、繁殖牝馬の配合提案などを独自の切り口から行う。

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