【シンザン記念】多頭数なら逃げ馬狙いが有効 道悪で面白いのはナイトスラッガー

佐藤永記

過去10年のシンザン記念 逃げ馬の成績,ⒸSPAIA

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マイルGⅠ後で確たる傾向がない重賞

あけましておめでとうございます。金杯から始まるJRA正月競馬3日目のメインを務めるのはシンザン記念。近年ではアーモンドアイ、ミッキーアイル、ピクシーナイトなどが優勝馬として名を連ねるなど、新年早々目が離せない重賞だ。

しかし、マイル重賞としては朝日杯FSや阪神JFの直後ということもあり、出走馬の数や構成が毎年異なる。展開やペース配分に傾向を見出すのが難しいレースである。たとえば出走頭数ひとつをみても、昨年は少頭数の7頭だったが、今年はフルゲートだったりする。今回はそんなシンザン記念を主に2つのデータから見ていく。


多頭数時は意外にも逃げ馬が狙い目

冒頭でも書いたとおり、シンザン記念は出走頭数がなかなか安定しない。ただ今年はフルゲート。そこで過去10年で出走頭数が13頭以上だった5回のときの脚質別成績を見てみる。

シンザン記念 13頭以上出走の5レース,ⒸSPAIA


逃げが【2-0-1-2】、先行が【2-1-1-15】と、2、3着は後ろの馬のほうが多いものの、前々に行った馬が勝ち切るパターンが多いことがわかる。普通頭数が増えればその分脚を溜める馬にチャンスがありそうだが、実際はそうでもない。これは明け3歳でレース経験がまだ少ない馬たちが、多頭数で馬群を捌くのに苦労するからではなかろうか。

唯一後方から追い込んで勝った馬は2017年(15頭立て)のキョウヘイ。ただこれは不良に近い重馬場で開催され、レースの上がり3Fが38.1と遅かった。同馬は前走も重馬場15頭立てのレースで最後方から2着と追い込んでいたように、経験と実績があった。例外といっていいだろう。

多頭数の今年で注目したいのは逃げ馬。今年の出走馬で前走逃げていたのは、フェリーニとメイショウサチダケの2頭だ。

フェリーニは1番人気で新馬戦を迎えたものの、重馬場のせいか中団から見せ場なく9着。しかし、次走の未勝利戦は良馬場の京都マイルで逃げ切って快勝した。馬場が悪くなると不安だが、良馬場なら伸びしろに期待できる馬だ。

もう1頭のメイショウサチダケは父がアドミラブル。現3歳世代が初世代で、中央勝ち馬はまだこのメイショウサチダケのみで血統的にはあまり注目されない種牡馬ではある。ただ、本馬自身は2戦とも逃げており、前走のデイリー杯2歳Sでは直線半ばで抜かれたあとも粘って、結果は5着と健闘した。3着からは頭、ハナ差で同タイム。同レースは11頭立て、なおかつ稍重と馬場も微妙だったため、頭数が増えてより苦しそうに見えるが、良馬場かつ多頭数なら後ろがもつれ、残り目があってもいいかもしれない。

馬場悪化で光り輝くナイトスラッガー

2つ目のデータは馬体重について。過去10年の傾向を見てみる。20kg刻みで複勝率や勝ち馬の数をみても、下記のように馬体重が重くても軽くてもほぼ変わらない、見事に分散した結果となっている。

シンザン記念,ⒸSPAIA


419kg以下 複勝率0%・0勝
420~439kg 複勝率21.4%・2勝
440~459kg 複勝率20.8%・3勝
460~479kg 複勝率23.5%・2勝
480~499kg 複勝率18.2%・1勝
500~519kg 複勝率35.7%・1勝
520kg以上 複勝率50.0%・1勝

そしてこのデータだけを見てしまうと「馬体重はシンザン記念の予想に関係ない」ように見えてしまうだろう。

だが、中身をみてみるとだいぶ状況が違ってくる。馬体重520kg以上で出走していた超重量級馬の成績【1-2-0-3】の内訳は下記のようになる。

2022年(良) ジャカランダ 576kg 15着
2021年(良) ピクシーナイト 536kg 1着
2020年(良) ルーツドール 520kg 7着
2018年(稍) ツヅミモン 540kg 2着
2018年(稍) ファストアプローチ 538kg 4着
2017年(重) タイセイスターリー 524kg 2着

このような感じで、良馬場以外なら2、4、2着と好走しており、1着だったピクシーナイトの2021年は良馬場ではあったものの、外が全く伸びないとよく回顧されていた年だった。ピクシーナイト自体は内を進んでいたとはいえ、外が極端に悪かったなかで、内が軽かったのかと言われるとそうでもないだろう。

つまり馬場状態がよくない年ならば、馬格を生かしてパワーでねじ伏せる馬が好走する可能性が高いということだ。現状、週末の京都競馬場は微妙な天候。もし馬場状態が悪化しそうなら狙いたい馬が今年はいる。

それは前走馬体重が522kgだったナイトスラッガーだ。前走の未勝利戦では道中3番手と前々からレースを進めて、上がりは最速の33.7、2位の34.4を0.7上回った。明らかにエンジンが違うところを見せつける快勝だった。馬場状態がよくても好走しそうではあるが、悪化してパワーが必要になればより優位に立てそうだ。

まとめると、当欄の馬券的にはフェリーニ、メイショウサチダケを単複で、ナイトスラッガーは馬場が悪ければアタマ狙い、良馬場でも馬券には絡めていく作戦を推奨したい。

<ライタープロフィール>
佐藤永記
20代を公営ギャンブラーとして過ごし、30歳から公営競技の解説配信活動を開始。競馬を始め多くの公営競技ファンに各競技の面白さや予想の楽しみを伝えている。現在はYoutubeで配信活動を続けながらライターとして公営競技の垣根を超えて各所で執筆中。

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