【2歳馬ジャッジ】ボンドガールは牝馬クラシックで活躍できる逸材 2023年も開幕週から大物出現
山崎エリカ
ⒸSPAIA
6月1週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は半兄に重賞馬ダノンベルーガがいるボンドガールや、9馬身差をつけて逃げ切ったシュトラウスなどが出走した、6月3日、4日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
6月3日(土) 東京5R 優勝馬 シュトラウス 指数-8 評価AA
スタートを五分に出て2番手で折り合う競馬をしようとしたが、外枠で前に壁を作れず、結局途中から先頭に立ってしまった。3~4角先頭で直線へ。他馬が必死に手綱を動かして追う中で、まだ余裕たっぷり。ラスト2Fから少し気合を入れられると一気に後続を引き離した。ラスト1Fでは完全に独走状態、結果は2着に9馬身差を付け、1クラス上の指数を記録した。他馬よりも体が大きく存在感のあるフットワークで、目立つ馬だ。
上がり3Fタイム34秒5は不良馬場だったことを考えると優秀。同日の芝レースでは古馬を含めて2位タイだったことも高く評価できる。しかし、ラスト2Fは11秒4-11秒6と減速。この点は評価が下がる。
この内容は昨年のハーツコンチェルトが勝利した新馬戦に似ている。同馬は新馬戦を8馬身差で圧勝し、その後は常に上位人気に支持された。同馬は青葉賞2着、ダービー3着と好走し、今秋以降の活躍が楽しみとなったが、新馬戦以降はやや伸び悩む時期があった。
新馬戦のラスト1Fで減速しているのは見た目が余裕たっぷりでも、実はそこまで余裕がなかった場合も多い。同時に、トップスピードがやや不足している点も挙げられる。ハーツコンチェルトが一時的に伸び悩んだのはトップスピードがやや足りないため、スローペースが多くなる若駒のレースでは持ち味が生きなかったからだ。
今回のシュトラウスは確かに指数も優秀で強かった。長く良い脚を使う馬で、順調なら今後の活躍は必至だ。今回の走破タイム自体は平凡なので、大きな疲れを残さず今後順当に体調面の上昇が見込めるだろう。しかし、トップスピードが少し足りない可能性があり、そこはやや割引材料となる。
6月4日(日) 東京5R 優勝馬 ボンドガール 指数-7 評価AAA
4番枠から好スタートを決め好位の最内3番手を追走。3~4角で包まれ、前を行く馬たちの脚色が良かったことで直線序盤は進路がなかった。しかし、ラスト2Fで外に誘導し、そこから前を目標に加速開始。最後に先頭を走っていたチェルヴィニアをキッチリと交わして、3/4馬身差でゴールした。
3着以下に3馬身以上の差をつけ、上がり3Fタイムは33秒0秒を記録した。安田記念で鬼脚を見せたシュネルマイスターの32秒8、2勝クラス・香港JCTに出走したドゥレッツァの32秒7(先に行われた日本ダービーでも上位入線に当たる指数を記録)には劣るが、同日の東京芝では堂々の3位だ。
ラスト2Fは11秒0-11秒1とほぼ減速せず。2歳6月時点ではかなり優秀な数字だ。昨年の東京開幕週の新馬戦を勝利したモリアーナもラスト2F11秒0-11秒1と優秀でかなり高い評価をしたが、今年のボンドガールもかなり高い評価ができる。指数は当時のモリアーナ以上のものを記録し、現時点では同馬以上と言えるだろう。今後の牝馬クラシック戦線で高い期待が持てる。
今回の新馬戦で惜しくも2着となったチェルヴィニアは、並の新馬戦なら楽勝の指数を記録しており、相手が悪かった。半兄のノッキングポイントは高い能力がありながらクラシック戦線では伸び悩み、運があまりなかったイメージが強い。妹にあたるチェルヴィニアは新馬戦で負けたことを今後に生かせるか。兄を超える活躍を期待したい。
6月4日(日) 東京6R 優勝馬 バスターコール 指数+1 評価A
レースはスタートでやや出遅れたが外枠からポジションを上げ、序盤は2番手につけた。しかし、スピードがあり過ぎて早々に先頭に立ってしまった。緩みのないペースで逃げ、1000m通過は57秒8。当然ながらラスト2Fは12秒0-12秒5と急失速。普通なら差し馬が最後に飛んでくる流れだが、逃げて最後まで粘り込んでの勝利はなかなか強かった。
今回の指数は平凡。おそらく並以上レベルの新馬戦だったなら最後に差し馬に敗れていたはず。それでも勝利したあたりは運の強さを感じる。今回はスタート、道中のラップ、ロスが大きい競馬となってしまい、能力通りの指数で走れた一戦だったようには感じない。ロスがありながら逃げ切り勝ちを決めた馬は、デビュー2戦目で大きく前進する馬も多い。今回の指数は明らかに平凡だが、本当の評価は次走でするべきだろう。
6月3日(土) 阪神5R 優勝馬 テラメリタ 指数-4 評価A
ゲートを怖がり目隠しをしてゲート入り。レースは出遅れたが1番枠だったこともあり、枠なりに先頭に立つ競馬となった。4角出口でゴーサインが出されると飛び跳ねそうになるなど、集中して走れていなかったが、最後の直線では後続が上がってくると二枚腰を発揮。最後までバテることなく、2着に3馬身半差を付けて逃げ切った。
ラスト2Fは11秒3-11秒6とやや減速したが、まだ本気で走っていないレースぶりからスタミナはかなりありそうだ。レース内容は同日の東京新馬戦の勝ち馬シュトラウスに似ている。今後の懸念点も同じようなものとなりそうだ。同馬と比較した場合、本馬の方が指数が劣る分で評価は下げたが、今後が楽しみであることは確かだ。
6月4日(日) 阪神5R 優勝馬 アトロルーベンス 指数-2 評価A
1番枠からトップスタートを切ったが、外に逃げようとしたため、それを修正するとフラついてポジションを下げる形。最内で脚を溜める理想的な競馬ができていたが、4角手前ではほぼ最後方まで下がってしまった。ペースはかなりのスロー。ただ道中は上手く内々を立ち回れていたこともあり、4角で外に誘導すると、最後の直線では外から鋭い脚を繰り出した。ラスト1Fで前をまとめて差し切り、2着馬に1馬身差で勝利した。
ラスト2Fは11秒4-11秒1。2歳6月時点の新馬戦としてはかなり高く評価できるラスト1Fの数字で、まだ余裕があったと推測できる。後続にしっかりと差をつけられなかったので、指数はそこまで高いものとはならなかったが、かなりの瞬発力を持っている。重賞戦線での活躍が期待できる一頭だ。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ボンドガールの指数「-7」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.7秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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