【フェアリーS】ヒップホップソウルの潜在能力の高さに期待

山崎エリカ

2023年フェアリーS出走馬のPP指数,ⒸSPAIA

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中山芝1600mは向正面がカギ

中山芝1600mはタフなコースだけに、前半から競り合ってペースが上がることは少なく、向正面の下り坂でペースが上がるか、上がらないかが大きなポイントとなる。フェアリーSはまだ体力のない明け3歳馬同士の一戦。向上面の下り坂でペースが緩んで、2013年クラウンロゼ、2015年ノットフォーマル、2016年ビービーバーレル、2020年スマイルカナのように逃げ、先行馬があれよ、あれよと残ってしまうことの方が確率として高い。

今回も前走逃げ切り勝ちのイコノスタシス、内枠に入ったマイレーヌと逃げ馬も先行馬もそれなりに出走予定だが、平均ペースよりも遅い流れになるのではないかと見ている。先行馬を中心に馬券を組み立てたい。

能力値1~5位馬の紹介

2023年フェアリーS出走馬のPP指数一覧,インフォグラフィック,ⒸSPAIA


【能力値1位 ディナトセレーネ】
アルテミスSの6着馬。前走は4番枠から好発を決め一旦は先頭に立ったものの、外からハナを主張するアリスヴェリテを行かせて2列目の内を追走。前半4F47秒8-後半4F46秒0のスローペースで前有利な展開に恵まれながらも、勝ち馬ラヴェルから0.4秒差に敗れた。

しかし、ラヴェルは新馬戦でラスト2F10秒8-10秒7という驚異的な数字を記録したナミュールが半姉の素質馬。その他にも新馬戦で同週NO.1の上がり3Fタイム31秒4を記録したリバティアイランドや、野路菊Sで2着ながら3着馬に6馬身差を付けたアリスヴェリテなど、強豪揃いでハイレベルな一戦だったことを考えれば上々。

ただ前走は高指数の激戦だっただけに、ここで好走した馬は高い期待と裏腹に次走で次々と凡走。次走で好走したのは3~4角で包まれそのまま直線を迎え、ラスト2Fまで前が壁になり、能力を出し切れなかったリバティアイランドと、同馬に外から蓋をして凡走したミシシッピテソーロのみ。本馬も前走で好走しているだけに、その後の休養でどこまで疲れが取れているかが鍵だろう。

【能力値2位 ミシシッピテソーロ】
6月東京の新馬戦をラスト2F11秒8-11秒8と減速することなく勝利し、次走ダリア賞も勝利した馬。同レースは芝1600mの新馬戦で後方からレースをした後の一戦だったこともあり、1番枠から出遅れて行き脚も付かず、最後方を追走。3~4角で外に出されると前との差を詰め、4角で大外を回って直線へ。素晴らしい瞬発力で伸びて来たが、記録した指数は例年の同レースと比較すると並レベルだった。

アルテミスSはダリア賞好走後の休養明けの一戦で9着と凡走。しかし、前走の阪神JFでは巻き返して5着。前走は10番枠から出遅れて後方からの競馬となったが、軽く促しリカバーして中団の外。3~4角でも中団の外目で終始リバティアイランドをマークして乗っていたが、最後の直線では同馬に離され、ラスト1Fでやや伸びあぐねて前との差が詰まらずの5着。悪くない走りだったが、今回は前走を目標にした後の一戦、余力面でどうか。さらなる上積みがあるかは潜在能力次第だ。

【能力値3位 ヒップホップソウル】
今回と同条件の新馬戦を勝利した馬。同レースでは不利な大外12番枠から、はっきりと出遅れて後方からの競馬。このレースはかなりのスローペースで本馬は向正面の外から好位まで早めに上がり、3角では早くも2列目の外3番手。3~4角では前の2頭が飛ばして行ったが、それをやり過ごして直線で外に出されると、他馬よりも豪快なフットワークでスピードアップ。2着に4馬身差をつけ圧勝した。ラスト2Fは11.8秒-11秒2。かなりの潜在能力を感じさせる勝ちっぷりだった。

前走ベゴニア賞は7番枠から好発を切って、序盤は外からハナを主張するシャンパンカラーに抵抗したが、最終的には控えて2番手の外を追走。ラスト300mでシャンパンカラーとともに後続を引き離すも同馬の脚色も衰えず、クビ差に迫ったところがゴールだった。やや期待外れの結果ではあったが、勝ちにいったぶん伸び切れなかった。今回は逃げ馬が出走しているだけに、無理に前につける必要もなく、脚をタメての前進に期待する。

【能力値4位 スピードオブライト】
中山芝1200mの新馬戦では14番枠から好発を決めるも内の2頭を行かせ、すんなり3番手を追走。3~4角では持ったまま2列目の外まで上がり、直線序盤でゴーサインが出されるとそこからグンと伸びて勝利した。ラスト2Fは11秒7-11秒4。好位を追走し最後まで加速して勝利した内容は高く評価できる。

前走の京王杯2歳Sは16番枠から好スタートを決め、促しながら二の脚で2番手外まで持っていき、そこからはコントロールして進めた。3~4角を馬なりで上がり、4角で楽に逃げ馬フロムダスクに並びかけた。直線序盤で追い出されると反応はさほどなかったが、しぶとく食らいつき同馬をハナ差まで追い詰めた。しかし、最後に外からまとめてオオバンブルマイに差されて3着となった。

京王杯2歳Sで4着だったペースセッティングがシンザン記念で2着に好走。本馬の株が上がりそうだが、ペースセッティングは追走に忙しい競馬になっており、マイルがベストの馬。一方、本馬はマイルも許容範囲にせよ、芝1400mがベストのように感じる。またペースセッティングとは違い、前走で自己最高指数を記録しているだけに、オオバンブルマイやフロムダスクの次走朝日杯FSのように、疲れが残って上昇しない可能性もある。内枠有利の中山芝1600mで1番枠を引いた点は好ましいが、過大評価は禁物だ。

【能力値5位 メイクアスナッチ】
札幌芝1200mの新馬戦ではスタートを決め、大外8番枠から余裕を持って2番手外を追走。掛かりそうになるのをコントロールしていたが、3~4角ではもう先頭に立ってしまいそうな手応えだった。4角で徐々にブレーキを外すと馬なりで先頭に。直線序盤ではスッと加速したが、ラスト1Fで甘くなり外からセフィロにクビ差まで迫られた。ラスト2Fは11秒0-11秒6と減速しているが、3着馬には3馬身差つけており、上がり3Fタイムも同日札幌では勝ち馬セフィロに次ぐNO.2のもの。なかなか強い内容だった。

新馬戦以来のレースとなった前走は3番枠から好発を切った後、コントロールされてはいたが楽にハナを取ってしまった。そこから我慢させ、超絶スローペースに落とし3~4角で後続を引き付けラスト2Fで再加速。後続との差を広げ、外から2着馬に迫られたが1馬身1/4差で完勝した。

前走は超絶スローペースでタイムが平凡。大きな疲れが残る内容ではなかったことが、今回に向けての加点材料である。距離が伸びてどこまでやれるかだが、行きたがる気性の持ち主なので、重賞でペースが上がるのも好ましい。

穴馬はリックスターとエナジーチャイム

【リックスター】
前走の東京芝1600mの新馬戦は15番枠から好発を切り、2列目の外で流れに乗った。最後の直線で追い出されるとスッと加速し、ラスト1Fで抜け出して勝利。2着馬とは半馬身差と特に目立つようなレース内容ではなかったが、こういったレースぶりが競馬では一番強い内容になる。

ラスト2Fは11秒4-11秒3とかなり優秀。キャリア2戦目の重賞でも好走できる素質を感じさせる内容だった。走破タイムは1分36秒3と平凡なだけに、疲れも大きく残らず順当に上昇できそう。また今回は2番枠を引いてロスの少ない競馬が出来そうなのも好材料だ。

【エナジーチャイム】
新潟芝1600mの新馬戦では4番枠から好発を決めハナを主張。マイペースの逃げで最後の直線でも淡々と走っていたが、外からショウナンアレクサが迫ってくるとエンジン点火。フットワークが速くなり、そこからは2頭のマッチレース。上位2頭で3着馬を6馬身引き離し、ショウナンアレクサをクビ差凌いで勝利した。

走破タイムの1分34秒8はこの週の新潟では悪くない。ラスト2Fは11秒0-11秒3。逃げる競馬でそれなりに速い走破タイムだったことを考えれば、減速度合は少なく、本馬が新馬戦で記録した指数はヒップホップソウルと並んで1位となる。

新馬戦以来のレースとなった前走の京王杯2歳Sでは、9番枠から出遅れ後方2番手と絶望的な位置となったが、最後の直線では馬群の中を割りながらしぶとく伸び、勝ち馬と0.5秒差(8着)に善戦した。今回は新馬戦を勝った芝1600m戦。中団から前走で見せた末脚が使えればここで通用しても不思議ない。

※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ディナトセレーネの前々走指数「-11」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.1秒速い
●指数欄の下線茶色はダート
●能力値= (前走指数+前々走指数+近5走の最高指数)÷3
●最高値とはその馬がこれまでに記録した一番高い指数
能力値と最高値ともに1位の馬は鉄板級。能力値上位馬は本命候補、最高値上位馬は穴馬候補

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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