【皐月賞】芝未勝利で戴冠した2004年ダイワメジャー 牡馬クラシック初戦の「記録」を振り返る
緒方きしん

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クロワデュノール、エリキング、サトノシャイニングなど直行組が多数
今週は皐月賞が開催される。古くはトウショウボーイやミホシンザン、ヤエノムテキらが勝利。2000年以降ではアグネスタキオンやゴールドシップ、ドゥラメンテといった種牡馬としても活躍するような名馬が勝利してきた一戦。牡馬クラシックの初戦として見逃せない。今回は皐月賞について1986年以降の「記録」を振り返る。
今年はホープフルSから直行するクロワデュノールが圧倒的な人気となることが予想される。他にも怪我により京都2歳S1着以来となるエリキング、きさらぎ賞を制したサトノシャイニング、京成杯勝ち馬ニシノエージェントなど多方面の「直行組」から素質馬が集まる。
ここでは皐月賞の勝ち馬が前走でどのレース走っていたかランキングにする。結果は以下の通り。
1位タイ 10勝 弥生賞
1位タイ 10勝 スプリングS
3位 7勝 共同通信杯
4位 5勝 若葉S
5位 3勝 毎日杯
6位以下のレアケースでは、サートゥルナーリア(2019年)、コントレイル(2020年)と2年連続で勝ち馬を輩出したホープフルSが2勝。さらにハクタイセイ(1990年)がきさらぎ賞(1勝)、ソールオリエンス(2023年)が京成杯(1勝)から勝利している。
ブラックタイドやハーツクライ、コスモバルクらを撃破した芝未勝利馬ダイワメジャー
前記ランキングで1位タイの弥生賞組とスプリングS組だが、明確な違いもある。それは前走の着順別成績だ。弥生賞→皐月賞と連勝した馬はサクラスターオー(1987年)、アグネスタキオン(2001年)、ディープインパクト(2005年)、ヴィクトワールピサ(2010年)の4頭のみ。
一方で、スプリングS→皐月賞と連勝した馬はミホノブルボン(1992年)、ナリタブライアン(1994年)、ネオユニヴァース(2003年)、メイショウサムソン(2006年)、アンライバルド(2009年)、オルフェーヴル(2011年)、ロゴタイプ(2013年)と2頭の三冠馬を含む7頭と多い。
甲乙つけがたいものの弥生賞はメンバー層が厚くなりやすく、2、3着馬にも後の活躍馬が多い。実際、ダイナコスモス(1986年)、ナリタタイシン(1993年)、セイウンスカイ(1998年)、エアシャカール(2000年)と4頭が弥生賞2着から本番で逆転している。
スプリングS組に目を向けると、波乱を起こした馬としてダイワメジャー(2004年)が挙げられる。同馬はスプリングS出走時点で、芝での勝利がゼロ。当然、11番人気という伏兵評価となったが、2番手から粘り込むしぶとい競馬で3着に食い込み、皐月賞への切符を掴み取った。
とはいえ、あくまで3着だったため皐月賞でも10番人気にとどまる。しかし、そこでも2番手から力強い走りを見せると、ブラックタイドやハーツクライ、コスモバルクといった強豪を尻目に押し切って勝利した。
引退後は種牡馬としてセリフォスやアドマイヤマーズ、ブルドッグボスなどマイルを中心に芝、ダートで活躍馬を輩出。現役馬でもアスコリピチェーノやドンフランキーといった多様な実力馬たちが受け継いだスピードを披露している。また、母父としてもナミュールやショウナンナデシコ、ラヴェルなど牝馬を中心に多くの活躍馬を送り出す。
ゴールドシップ、ドゥラメンテ、エフフォーリアらを輩出する共同通信杯
その他路線では、前走共同通信杯組が2012年ゴールドシップの勝利以降トレンドになった。イスラボニータ(2014年)、ドゥラメンテ(2015年)、ディーマジェスティ(2016年)、エフフォーリア(2021年)、ジオグリフ(2022年)、ジャスティンミラノ(2024年)と、凄まじい勢いで勝利を積み重ねている。芝1800m戦だけあって、クラシック後は中長距離路線に進む馬もいればマイル路線に進む馬もいる印象だ。
3歳時に年度代表馬にも輝くエフフォーリアは、共同通信杯では4番人気。2戦2勝で乗り込んだがライバルも強力で、前年にサウジアラビアRCを制して朝日杯FSでは2着となったステラヴェローチェが1番人気となっていた。さらにはヴィクティファルス、キングストンボーイそしてシャフリヤールも出走していた。
そのなかで2着に2馬身半差をつけたエフフォーリア。ダービーこそシャフリヤールの2着に敗れたが、秋にはコントレイルらを相手に天皇賞(秋)→有馬記念と連勝した。引退後は種牡馬となり、初年度産駒は来年のデビューを予定している。
相馬野馬追でも愛された名馬、ノーリーズン
5勝を挙げている若葉S→皐月賞のローテ。1986年以降、皐月賞を制した馬で前走が掲示板外の馬は1頭しかいないが、その唯一の馬が若葉S7着から逆転勝利をあげたノーリーズンだ。
ノーリーズンは年明け1月のデビュー馬で、2連勝をあげ若葉Sへと乗り込んだ。そこには、前年の最優秀2歳馬であり後の名ダート馬となるアドマイヤドン、デイリー杯2歳Sや京都新聞杯などを制して8歳まで一線級で活躍するファストタテヤマなど素質馬が集結。2番人気におされたノーリーズンだったが、7着と大敗してしまう。
それでも抽選を乗り越え皐月賞に出走すると、鞍上のB.ドイル騎手に導かれ勝利を収めた。上述の2頭に加え、タニノギムレットやバランスオブゲームといった素質馬を相手にしながらも力強い競馬だった。
その後はダービー8着、菊花賞でスタート直後の落馬、怪我など波瀾万丈な現役時代を過ごしたノーリーズン。引退後は種牡馬となって、2010年全日本2歳優駿3着のキスミープリンスなどを輩出した。種牡馬を引退してからは福島県南相馬市に移動し、相馬野馬追に参加するなど馬事文化に貢献した。昨年5月のこの世を去ったが、今もなおファンの多い愛される名馬だ。
馬連最高配当はヴィクトリー・サンツェッペリンの2007年
前走が7着のノーリーズンは皐月賞で単勝15番人気、オッズは115.9倍。1986年以降、唯一の単勝万馬券記録である。しかし、馬連としては最高配当ではなかった。皐月賞の馬連配当ランキングは下記の通りとなる。
1位 946.3倍 1着ヴィクトリー、2着サンツェッペリン(2007年)
2位 530.9倍 1着ノーリーズン、2着タイガーカフェ(2002年)
3位 517.9倍 1着サニーブライアン、2着シルクライトニング(1997年)
4位 139.8倍 1着メイショウサムソン、2着ドリームパスポート(2006年)
5位 128.8倍 1着エポカドーロ、2着サンリヴァル(2018年)
10万馬券は飛び出していないものの、2007年は946.3倍とそれに迫る波乱ぶり。一方で最低配当は1着コントレイル、2着サリオスのライバル決着となった2020年皐月賞の6.6倍。ほか、1着ドゥラメンテ、2着リアルスティールとなった2015年のライバル決着は7.9倍で期間内4位の平穏決着だった。
その後の明暗分かれた2006年
2006年はアドマイヤムーンやフサイチジャンク、フサイチリシャールらが人気を集めた。勝利したメイショウサムソンはスプリングSを制しての参戦だったが当日6番人気、ドリームパスポートもきさらぎ賞制覇、スプリングS3着という実績を持っていたが当日10番人気と低評価だった。
しかし、レースが始まると石橋守騎手&メイショウサムソンも高田潤騎手&ドリームパスポートも積極的な競馬を披露する。武豊騎手鞍上の1番人気アドマイヤムーンは粘り強く追い込んだが、展開的に後方から届くのは難しく4着に敗れた。各馬の実力がわかった現在になって振り返ると「メイショウサムソン、ドリームパスポートの馬連で万馬券とはなんとオイシイ馬券だ」と感じるファンも多いかもしれない。
ドリームパスポートはダービーでも3着となると、秋には神戸新聞杯を勝利。さらに菊花賞2着、ジャパンC2着、有馬記念4着と世代上位の安定感を見せたが最後までGⅠタイトルには届かなかった。また、同世代で皐月賞10着だったスーパーホーネットもマイルCSで2度の2着になり重賞でも4勝をあげたがGⅠ馬にはなれずに引退している。
一方、メイショウサムソンは続くダービーを制して二冠馬となると春秋の天皇賞も制覇した。皐月賞では馬券圏外だったアドマイヤムーンもしっかりと立て直され、ドバイDF、宝塚記念、ジャパンCと勝利。2007年の年度代表馬に選出されている。実力がありながらもGⅠタイトルを獲れなかった馬、いくつもの栄冠を掴んだ馬とでぶつかり合った皐月賞だったとも言える。
今年の皐月賞を好走する馬たちは、その後、どのような活躍を見せてくれるのだろうか──。
《ライタープロフィール》
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、ダイワスカーレット、ドウデュース。
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