【中山記念回顧】シックスペンスが3度目のGⅡ勝利 瞬発力と持続力を兼備、GⅠ獲りの障壁は“体調”だけ
勝木淳

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シックスペンスの現在地
今年で99回目となる伝統のGⅡ・中山記念はシックスペンスが鮮やかに差し切り、レコードV。2着エコロヴァルツ、3着ソウルラッシュで決着し、上位人気馬たちの争いになった。
開幕週特有の速い馬場のなか、先手をとったメイショウチタンが極端にペースを落とさず進んだことで、ゴールまで速いラップを保たなければ勝負にならなかった。こうなれば展開のアヤといった要素は排除され、最後は実力の差が顕著になり、馬券は荒れようがない。締まった競馬は出走メンバーの顔触れと比例したハイレベルな戦いとなった。
勝ったシックスペンスはこれで中山4戦全勝。その評価の出発地点は昨年のスプリングS(GⅡ)だ。
超スローペースのなか、完全に上がりの競馬になったとはいえ、中山で3番手から上がり33.3は3歳馬としては破格の記録だった。ラストは10.9-10.8で、追いかける馬は見当たらず。してやったりの逃げを打ったアレグロブリランテを3馬身半も突き放してしまった。この時点で皐月賞当確を書いた記憶がある。
だが、類まれな瞬発力に見合う馬体ではなかったのか、反動が大きく皐月賞には出走せず、ダービーは9着。難しい調整を強いられた。
その後も秋初戦となった毎日王冠(GⅡ)は快勝も、以降はツメの不安で全休。能力と馬体のバランスが整わず、関係者にとってもどかしい状況が続く。
今回は休み明けで10kg増。デビューからは28kgも馬体が増えており、そろそろ能力発揮に見合う体を手に入れたと信じたい。ダービー以外は全勝でGⅡ2連勝。経歴としてはもうワンステップ上に手が届いておかしくない。最後の一歩を踏み出せるかどうかは、レース後の状態いかん。中山記念を勝っても、さあ次は大阪杯と言えないのがシックスペンスの現状だ。
瞬発力と持続力兼備の完成形へ
この日は序盤の1コーナー付近で外から先行勢が押し寄せ、窮屈になったことで多少行きたがる面はみせたものの、その後は完璧なレース運び。内でコーナー区間の距離ロスを抑え、しっかり脚を溜めて、弾けた。
レースラップを見ると、上がり600mは11.6-11.6-11.6の34.8に対し、シックスペンスは33.9で走破。出走馬唯一の33秒台を記録と、完全に一枚上の存在であることを証明した。
スプリングSは軽い競馬だったが、中山記念は好位のエコロヴァルツが最後まで止まらず、持続力も問われた。軽さに持続力兼備となれば、もうGⅠに必要なピースはそろっている。中間はプール併用、坂路主体、ウッドは最終追い切り1本と陣営の工夫は手にとるようにわかるだけに、なんとか体調を維持し、次へ進んでほしい。
理想的だった2着エコロヴァルツ
2着エコロヴァルツはシックスペンス以上に完璧な競馬だった。前走ディセンバーS(L)の勝ち時計1:45.2は2005年以降の中山芝1800mで2位の好記録で、これがきっちり結果にあらわれた。
今回はそれをさらに0.4秒も詰め、レコードと同タイム。好位のインをとり、勝負所でひと息待って仕掛けるという理想的な競馬であり、最後まで止まっていない。ダービーを機に手に入れた先行策は確実に研ぎ澄まされ、完成の域に達した。
いつ重賞を手にしてもおかしくないが、手にできる好機を逃したことが今後、どう出るか気になる。開幕週、速い時計、前が止まらない、イン優位と揃いにそろった今回と同じ状況が訪れるとは限らない。多少、条件が合わずとも走れるかどうか。真の実力はそこでみえる。
3着はソウルラッシュ。中団待機の時点で、この日の馬場では絶体絶命。それでもしぶとく伸びて前を追いかけたのはGⅠ馬の意地だ。
6歳秋に頂点に立っただけあって、7歳でも元気いっぱい。初出走の中山内回りにはなんとか対応できたが、やはり適性はコーナー4回の中距離戦よりワンターンのコースだろう。やはりターゲットは香港のチャンピオンズマイルか。
昨年の勝ち馬で4番人気マテンロウスカイは9着。昨年は稍重のハイペースで、ラスト37.6の我慢比べであり、今年はレースの性質がかなり異なったため、好走できなかった。適性がなかったと割り切れる。
中山芝1800mはペースや馬場状態によってコロコロ変わるコースであり、“コース巧者”といっても幅がある。細かすぎる話になってしまうが、特にこのコースでは好走したレースを細部まで分析すべきだろう。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬を主戦場とする文筆家。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュースエキスパートを務める。『オルフェーヴル伝説 世界を驚かせた金色の暴君』(星海社新書)に寄稿。
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