「夏より年明け」「芝スプリントは割引」 昇級初戦の重賞挑戦は狙えるか?データで検証

東大ホースメンクラブ

昇級初戦の重賞挑戦プラスデータ,ⒸSPAIA

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昇級初戦の重賞挑戦は買えるのか?

今週末はGⅠエリザベス女王杯をはじめ4重賞が開催される。エリザベス女王杯は例年以上に混戦模様であり、昇級初戦となるピースオブザライフなどが出走予定だ。エリザベス女王杯を回避したフェアエールングは昇級初戦で福島記念に挑む。ほか、武蔵野Sでは連勝でオープン入りを決めたカズペトシーンが出走する。

そこで、今回は「昇級初戦の重賞挑戦は買えるのか?」をテーマにデータ分析を行う。ここでの「昇級初戦」「昇級馬」は「前走3勝クラス1着」の馬を意味する。これは、1勝クラス1着や2勝クラス1着を含むと、2歳戦や3歳春のデータも含んでしまうためである。集計期間は2019年1月1日から2024年11月3日までとする。

過剰人気の傾向あり

重賞における出走馬の全体成績と昇級馬の比較,ⒸSPAIA


<重賞における出走馬の全体成績と昇級馬の比較>
全体成績【814-811-813-9452】
勝率6.8%/連対率13.7%/複勝率20.5%/単回収率78%/複回収率73%
重賞×昇級馬【38-26-36-336】
勝率8.7%/連対率14.7%/複勝率22.9%/単回収率71%/複回収率69%

まずは全体成績と昇級馬の成績を比べる。勝率、連対率、複勝率の全てで昇級馬が全体成績を上回った。ただし、回収率は単複ともに全体成績の方が良い。また、昇級馬は平均人気6.9に対し、平均着順7.5。よって、昇級馬は全体成績よりも好走率は高いが、少し過剰人気の傾向がある。

ちなみにエリザベス女王杯など牝馬限定重賞での昇級馬の成績は【6-5-7-67】勝率7.1%、単回収率76%、複回収率77%で、軸というよりは紐で拾うのがオススメ。エリザベス女王杯だけなら【0-0-0-5】で22年6番人気9着のピンハイなどが該当する。サンプル数は少ないが、データからは苦戦傾向となる。

年始を狙え!

昇級馬×重賞のプラス条件,ⒸSPAIA


<昇級馬×重賞のプラス条件>
1番人気【14-3-6-18】
勝率34.1%/連対率41.5%/複勝率56.1%/単回収率100%/複回収率86%
堀宣行厩舎【3-1-2-11】
勝率17.6%/連対率23.5%/複勝率35.3%/単回収率142%/複回収率102%
前走着差0.3秒以上【17-9-11-63】
勝率17.0%/連対率26.0%/複勝率37.0%/単回収率102%/複回収率95%
1〜3月【20-8-12-96】
勝率14.7%/連対率20.6%/複勝率29.4%/単回収率104%/複回収率83%

ここからは、重賞における昇級馬の「プラス条件、マイナス条件」をみていく。まずはプラス条件だ。

重賞で昇級馬が1番人気に支持されると、成績は【14-3-6-18】で勝率34.1%、複勝率56.1%とまずまずの安定感を発揮している。単回収率も100%と高水準だ。昇級初戦ながら競馬ファンから1番に支持されるほどの馬は、かなり素質が抜けていると考えてよい。

厩舎では堀宣行厩舎がこの条件を得意としている。単回収率142%、複回収率102%と単複ともにプラス域を記録中だ。近年ではチャックネイト(23年アルゼンチン共和国杯2番人気3着)やシュトルーヴェ(日経賞4番人気1着)などが該当している。

また、昇級馬が通用するかを見分ける材料の一つに着差がある。回収率の面では、前走の着差が0.3秒以上あるか否かが一つのラインだ。前走の着差が0.3秒以上の場合、勝率は17.0%、単回収率は102%あるが、これが0.2秒以下だと【21-17-25-273】勝率6.3%、単回収率63%と苦しくなる。なお、前走着差0.6秒以上では【5-2-1-10】勝率27.8%、単回収率147%と成績アップ。シンプルに前走の着差は大きければ大きいほど良い。

ほか、昇級馬の活躍は年始に集中している点も注目。1~3月の重賞レースで昇級馬は、勝率14.7%、単回収率104%を記録。対して、4~12月では【18-18-24-240】勝率6.0%、単回収率57%と雲泥の差だ。東京新聞杯【3-1-0-4】勝率37.5%、単回収率245%や阪急杯【2-1-0-6】勝率22.2%、単回収率290%など、春のGⅠに向けた前哨戦で活躍が目立つ。

重賞における出走馬の全体成績と昇級馬の比較,ⒸSPAIA


<昇級馬×重賞のマイナス条件>
ダート【6-2-3-55】
勝率9.1%/連対率12.1%/複勝率16.7%/単回収率42%/複回収率37%
芝1200m【1-4-5-35】
勝率2.2%/連対率11.1%/複勝率22.2%/単回収率7%/複回収率70%
7〜9月【3-4-6-65】
勝率3.8%/連対率9.0%/複勝率16.7%/単回収率16%/複回収率48%

次にマイナス条件をみていく。

まずはダート重賞について。一般的にダートの上級条件は、芝の上級条件に比べて層が厚いと言われている。そのため、昇級馬も芝に比べて通用しづらく、複勝率は16.7%、複回収率はわずか37%である(芝は複勝率24.1%、複回収率75%)。ただし、重賞で2番人気以内に支持された場合は例外で、【5-0-2-4】勝率45.5%、単回収率は121%となっている。

芝1200m戦も勝率2.2%、単回収率7%と壊滅的。短距離路線は中長距離路線ほど番組が充実しておらず、強豪が一つのレースに集中しやすいことが原因として考えられる。芝スプリント戦では、OPや重賞で既に結果を残している実績馬から買うのが無難だ。

月別成績では、年始に好成績を残しているのとは対照的に、夏から初秋にかけての成績が良くない。7〜9月のレースでは勝率3.8%、単回収率16%。夏競馬は、勢いのある昇級馬が通用するイメージがあるが、実際は真逆の結果となっていた。

《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。

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