新潟芝1000mが得意な騎手を3部門でランキング化 勝利数トップは藤田菜七子騎手、好走率なら鮫島克駿騎手

高橋楓

新潟芝1000mの騎手ランキング,ⒸSPAIA

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菅原明良騎手の奇策がハマった2021年アイビスサマーダッシュ

人と違う事をするのには勇気がいる。失敗した時に「なぜ、あんな事をしたんだ!」と批判を浴びるかもしれない。しかし、勝負の世界で生きている人間は違うなと思い知らされたのが、2021年のアイビスサマーダッシュ(以下、アイビスSD)だ。

外枠有利がセオリーの新潟芝1000mで、最内枠をひいたバカラクイーンと菅原明良騎手は覚悟を決めて、ただ1頭内ラチ沿いを疾走。14番人気ながら3着に食い込み、馬連は1番人気にもかかわらず3連単は22万馬券となった。それだけ予想外の好走だったということだ。肝の据わった騎乗を見せてくれた菅原明良騎手は、先日の宝塚記念でGⅠを初制覇。やはり勝負強い騎手はそれだけ大成するのだろうか。

アイビスSDの季節が今年もやってきた。菅原明良騎手のような面白い騎乗を見せてくれる騎手は現れるのか。ここでは新潟芝1000mが得意な騎手を、勝利数、複勝率、回収率の観点から取り上げていく。データは過去5年(2019年7月1日から2024年7月19日の計114レース)のものを使用する。

勝利数単独1位は藤田菜七子騎手

まずは勝利数から見ていく。

新潟芝1000m 勝利数ランキング,ⒸSPAIA


<新潟芝1000m 勝利数ランキング>
1位 藤田菜七子【8-4-4-66】勝率9.8%/連対率14.6%/複勝率19.5%
2位 菊沢一樹【7-5-3-56】勝率9.9%/連対率16.9%/複勝率21.1%
3位 杉原誠人【7-4-4-54】勝率10.1%/連対率15.9%/複勝率21.7%
4位 津村明秀【6-10-4-30】勝率12.0%/連対率32.0%/複勝率40.0%
5位 丹内祐次【5-6-4-37】勝率9.6%/連対率21.2%/複勝率28.8%
6位 嶋田純次【5-5-5-51】勝率7.6%/連対率15.2%/複勝率22.7%
7位 菅原明良【5-5-4-37】勝率9.8%/連対率19.6%/複勝率27.5%

5勝以上をあげているのが上記の7名(西田雄一郎騎手は引退したため省いた)。堂々の単独1位は藤田菜七子騎手。藤田騎手の特徴は、3~5枠でも計4勝を挙げていることだ。1、2枠は合わせて【0-0-1-22】で内過ぎると厳しいが、中枠で狙えるのは心強い。もちろん8枠での信頼度も非常に高く【3-2-2-9】勝率18.8%、連対率31.3%、複勝率43.8%となっている。

2位は2着数の差で菊沢一樹騎手。ポイントは性別で、牡馬やセン馬では【1-0-1-17】勝率5.3%、複勝率10.5%なのに対し、牝馬だと【6-5-2-39】勝率11.5%、複勝率25.0%と極端な差が出ている。牝馬に騎乗した際には注意しておきたい。

3位の杉原誠人騎手は1、2枠で【1-1-1-12】とこのコースにしては健闘している。代わりに3~5枠は【0-0-0-23】と大苦戦だ。外枠は6枠【2-0-3-8】、7枠【2-2-0-9】、8枠【2-1-0-2】とどれもなかなか。10番人気以下は【0-0-0-29】とさすがに苦しいが、4~9番人気の中穴帯なら【4-4-3-20】勝率12.9%、複勝率35.5%となかなかの数字をマークしている。そして22年アイビスSD1着のビリーバーのように、後方から進める馬で好走できる点も強み。7勝中3勝が道中6番手以下からの勝利だった。

新潟芝1000m騎手ランキング,ⒸSPAIA


安定感なら鮫島克駿騎手と三浦皇成騎手

新潟芝1000m 複勝率ランキング,ⒸSPAIA


次に複勝率が高い騎手TOP3を紹介する。ここでは、騎乗回数が20回以上の騎手に絞る。

現役1位は鮫島克駿騎手。【3-5-3-9】勝率15.0%、連対率40.0%、複勝率55.0%と、2回に1回は馬券に絡んでおり、勝率も騎乗回数20回以上の現役騎手のなかでTOPだ。人気別成績では、5番人気以内【3-5-2-2】に対し、6番人気以下【0-0-1-7】。枠別成績なら、1、2枠【0-0-0-6】に対し、4~8枠【3-5-3-3】と極端な傾向。「中~外枠の人気馬」が買い、「人気薄や内枠の馬」は消し、と狙い時がはっきりしている。

2位は三浦皇成騎手。成績は【0-4-5-12】勝率0.0%、連対率19.0%、複勝率42.9%と近5年は勝ちきれないものの、よく馬券に絡んでいる。複勝回収率も132%を記録しており、馬券の相手で買うのがベターだ。同騎手もセオリー通り、好走の多くが6~8枠で、2~5枠は【0-0-0-7】と馬券に絡んでいない。ただ、1枠だけは【0-2-0-2】と3、8番人気で2回馬券に絡んでいることは覚えておきたい。また、騎乗馬の多くが距離短縮での臨戦で、特に前走が芝1200mだった場合は【0-3-3-5】で複勝率50%を超えている。

3位は手術の関係で休養中の津村明秀騎手。成績は【6-10-4-30】勝率12.0%、連対率32.0%、複勝率40.0%と優秀。勝率も鮫島駿騎手に続く2位だ。また、津村騎手の枠番別成績には、面白い傾向がある。

新潟芝1000m 津村明秀騎手の枠番別成績,ⒸSPAIA


<新潟芝1000m 津村明秀騎手の枠番別成績>
1枠【0-2-0-7】複勝率22.2%、複勝回収率151%
2枠【0-1-0-6】複勝率14.3%、複勝回収率51%
3枠【2-0-1-3】複勝率50.0%、複勝回収率343%
4枠【0-2-0-7】複勝率22.2%、複勝回収率50%
5枠【1-0-0-1】複勝率50.0%、複勝回収率105%
6枠【1-0-2-2】複勝率60.0%、複勝回収率360%
7枠【2-0-0-2】複勝率50.0%、複勝回収率62%
8枠【0-5-1-2】複勝率75.0%、複勝回収率171%

なんと8枠で複勝率が75.0%もあるのに勝ち切っていない。8枠の通算成績で見ても【2-6-4-12】で2勝止まり。勝ち鞍のある3、5、6、7枠の場合に頭まで狙って、8枠では思い切って相手までにすることで思わぬお宝馬券にありつけるかもしれない。

また、上述している杉原誠人騎手と同様に後方脚質でも安定感がある。差し【2-4-1-12】勝率10.5%、複勝率36.8%、追込【2-2-1-10】勝率13.3%、複勝率33.3%と結果を残している。特に前走上がりが2位以内だった末脚自慢での差し、追い込みが目立つので、上がりが速いタイプの馬に騎乗する際は後方脚質であっても要チェックだ。

特大ホームランタイプの永島まなみ騎手

最後に騎乗機会が20回以上あった騎手の単勝回収率ランキングを見ていきたい。

新潟芝1000m 回収率ランキング,ⒸSPAIA


<新潟芝1000m 回収率ランキング>
1位 永島まなみ【2-1-1-23】単勝回収率544%/複勝回収率128%
2位 津村明秀【6-10-4-30】単勝回収率184%/複勝回収率157%
3位 菊沢一樹【7-5-3-56】単勝回収率169%/複勝回収率94%
4位 丹内祐次【5-6-4-37】単勝回収率106%/複勝回収率78%
5位 秋山稔樹【3-0-1-30】単勝回収率104%/複勝回収率43%

ここでの1位は永島まなみ騎手。10、15番人気で勝利していることで数値が大きく跳ね上がっている。とはいえ、斤量が軽い時だけでなく、定量戦でも馬券に絡んでいるので決してフロックではない。特に、前走6~9着馬に騎乗した際は【1-1-1-2】と狙い目の条件だ。

ほか、4位の丹内祐次騎手は単勝33.7倍の8番人気馬以外は全て単勝一桁台の馬で堅実に勝利している。単回収率でランクインしたものの、上位人気馬で買いたいタイプだ。3番人気以内では【3-3-3-4】と信頼度高め。該当するならとりあえず押さえておきたい。

最後に、ここまでの各騎手の特徴をまとめる。

藤田菜七子騎手 中枠で信頼度高、1、2枠は割引
菊沢一樹騎手 牝馬騎乗時が狙い目
杉原誠人騎手 4~9番人気の中穴◯、10番人気以下の大穴は割引。後方脚質の馬にも注目
鮫島克駿騎手 安定感TOP。中~外枠の人気馬が買い。逆に人気薄や内枠は消し
三浦皇成騎手 勝ちきれないが馬券によく絡む。芝の距離短縮馬で信頼度アップ
津村明秀騎手 8枠だと意外に勝ちきれない。8枠以外の中~外枠◯、末脚自慢の差し追込馬で期待
永島まなみ騎手 大穴タイプ。前走6~9着馬【1-1-1-2】がオススメ
丹内祐次騎手 1~3番人気ならぜひ押さえたい

これからの新潟開催で参考になれば幸いだ。ちなみに、今週のアイビスSDでは早速、藤田菜七子騎手がマウンテンムスメに騎乗予定だ。久々となる同騎手の重賞制覇に期待したい。

《ライタープロフィール》
高橋楓。秋田県出身。
サクラローレルの馬体の美しさに魅せられて競馬の世界に惹きこまれる。他に好きな馬はホクトベガ、サイレンススズカ。一口馬主を趣味とし、楽しさを伝える事にも注力している。
競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』にてライターデビュー。競馬、ボートレースの記事を中心に執筆している。

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