【七夕賞】前走GⅢ組のフェーングロッテンとセイウンハーデスが中心 2000mに戻るサンレイポケットもチャンスあり!
勝木淳
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「夏は牝馬」でも七夕賞は……
七夕伝説には諸説ある。働き者の織姫と彦星が結ばれたのち、浮かれて仕事を放りだしたことに怒った織姫の母が、二人を天の川の両岸に引き離した。悲しみに暮れ、かえって仕事をしなくなった二人を見かねた母は年に一度、七夕の夜にだけ天の川を渡って会わせることにした。7月7日の織姫と彦星の逢瀬にはそんな物語がある。
七夕賞はグレード制導入後の84年以降、牡馬と牝馬が1、2着だったのは88年、09年、10年、11年、21年の5回。このうち牝馬が先着したのは2回しかなく、牝馬の優勝自体も84年以降39回でわずか3回(うち1勝は中山施行)にとどまる。「夏は牝馬」とよく言うが、七夕賞には当てはまらない。かつての最終週の荒れた馬場ならまだ理解できるが、馬場状態のいい2週目に移った2013年以降も牝馬の不振は続く。ククナやホウオウイクセルはそんな傾向を振り払えるだろうか。データは過去10年分を使用する。
1番人気は【2-1-1-6】勝率20.0%、複勝率40.0%と混戦のハンデ戦らしく頼りないものの、3番人気以内が7勝と上位人気はそれなりにアテになる。以下、5、6番人気が1勝ずつで、二桁人気の勝利は18年11番人気メドウラークの1勝。複穴で注目したいのは七夕賞らしく7番人気【0-3-1-6】複勝率40.0%だ。
4歳【2-1-1-13】勝率11.8%、複勝率23.5%、5歳【4-4-3-32】勝率9.3%、複勝率25.6%が中心も、6歳【3-4-5-40】勝率5.8%、複勝率23.1%まではしっかりチェックしたい。今年も4歳セイウンハーデス、5歳グランオフィシエらを中心に、フライライクバードら6歳、さらに7歳以上【1-1-1-37】勝率2.5%、複勝率7.5%のヒンドゥタイムズ、サンレイポケットまで余すことなく検討しよう。
牝馬はククナではなく、ホウオウイクセル
今年、カギを握るのはセイウンハーデスだろう。菊花賞で超ハイペースを演出した同馬はこの春、競馬法100周年記念を控えて勝ち、オープン入りを果たすと、不良馬場の新潟大賞典では再度逃げの手に出て2着に粘った。カラテには交わされたが、3着イクスプロージョンには8馬身も差をつけた。特殊な馬場状態だったゆえの着差とも考えられるが、自身でレースを作れる強みがある。セイウンハーデスも含め、ここからは前走成績から好走候補を絞っていく。
連覇を狙うエヒトは前走サウジ出走。前走海外は13年トレイルブレイザーがドバイSC11着から2着に巻き返した。それから出走数こそ少ないが、前走GⅠ【1-1-1-6】勝率11.1%、複勝率33.3%は確率的に注目に値する。サンレイポケットの前走天皇賞(春)は【0-1-1-1】。19年ロードヴァンドール、22年ヒートオンビートが好走した。どちらも2000m重賞に実績があり、得意距離に変わっての一変だった。サンレイポケットも2000mは得意で、2年前の天皇賞(秋)4着など実績は十分ある。
次にセイウンハーデスら多くが該当する前走GⅢ【5-4-2-60】勝率7.0%、複勝率15.5%について掘り下げる。鳴尾記念【2-1-1-15】勝率10.5%、複勝率21.1%は2着フェーングロッテンなどが当てはまる。鳴尾記念2、3着は【0-1-1-2】なので、フェーングロッテンは有力だ。昨年はラジオNIKKEI賞を勝っており、福島は得意舞台。セイウンハーデスとの位置取りとハンデは気になるが、有力な一頭だろう。
注目のセイウンハーデスの前走新潟大賞典は【0-2-0-9】複勝率18.2%。好走2頭に共通するのは前走5番人気以内【0-2-0-2】、6番人気以下【0-0-0-7】。同馬は新潟大賞典2番人気で好走ゾーンに入る。勝ち馬こそ出ていないローテではあるが、馬券にはぜひ入れておきたい。
また、牝馬の相性はよくないが、前走福島牝馬Sは【0-1-0-2】複勝率33.3%で、21年ロザムールが7番人気2着と穴を提供した。同馬は前走13着。8着だったホウオウイクセルもチャンスはある。なお、ホウオウエミーズの前走マーメイドSは【0-0-0-7】とさっぱりだ。
もう一頭の牝馬ククナが該当する前走オープン・Lは【2-3-4-24】勝率6.1%、複勝率27.3%。ここは距離別成績である程度、整理できる。2000m【0-3-2-8】複勝率38.5%、2000m未満からの延長組【2-0-2-10】勝率14.3%、複勝率28.6%に対し、距離短縮は【0-0-0-6】。平坦である程度前半からレースが流れやすい七夕賞では長い距離の経験がマイナスに働く。グランオフィシエやククナなどはこれに引っかかる。特にククナは1800mから2400mに距離を延ばしてオープン入りしており、再度の短縮には不安が残る。
該当するのは(賞金的に微妙だが)大阪城S3着だったフライライクバードだ。大阪城Sは1000m通過58.6と緩みなく流れ、後半800m11.8-11.1-11.6-11.7と持続力が問われた。同馬は先に抜け出し、最後は1、2着馬の決め手に屈したが内容はあった。小回りへの出走歴は少ないが、対応できるようなら面白い。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。新刊『ゴールドシップ伝説 愛さずにいられない反逆児』(星海社新書)に寄稿。
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