【フローラS】波乱呼ぶハービンジャー内包馬 ルクスジニアは血統からメンバー屈指の舞台適性

坂上明大

フローラステークスに強い血統,ⒸSPAIA

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傾向解説

2着までにオークスの優先出走権が付与されるフローラS。ここ3年はオークス好走馬が出ていませんが、チェッキーノ、モズカッチャン、ウインマリリン、そしてユーバーレーベンと多くの連対馬を輩出している重要ステップレースのひとつです。本記事では血統面を中心に、フローラSのレース傾向を整理していきます。

東京芝2000mといえば内枠有利のコースレイアウト。1コーナー奥のポケットからのスタートですぐにカーブをむかえるため、多頭数の外枠は不利に働きやすく、さらに開幕週+スローペースになりやすいフローラSではよりこの傾向が顕著になっています。過去10年の連対馬20頭中14頭は1~4枠。馬券の軸は内枠から選びたいところです。

枠番別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<枠番別成績(過去10年)>
1~4枠【7-7-4-58】
勝率9.2%/連対率18.4%/複勝率23.7%/単回収率123%/複回収率82%
5~8枠【3-3-6-77】
勝率3.4%/連対率6.7%/複勝率13.5%/単回収率24%/複回収率65%

この時期の3歳牝馬にとって、桜花賞以前に行われた牝馬限定の芝1800m以上の重賞はフラワーCのみで、芝2000m重賞はフローラSが初めて。桜花賞まではマイル戦に対応できるスピードが必須の資質ですが、これからは中距離戦でガス欠にならないスタミナが重要な資質となってきます。

血統面での注目はステイゴールドディープインパクト。両血脈を持つ馬には小柄な芝中長距離馬が多く、桜花賞までは少々スピード不足に悩まされる傾向にあります。

反対にスタミナ面では日本の血統で一二を争う資質を持っており、2010年以降の超長距離路線を牽引してきたのがこの2頭です。両種牡馬にとっては待ちに待った舞台だけに、孫世代になった現在でも重要な血統といえるでしょう。

血統別成績(過去10年),ⒸSPAIA


<血統別成績(過去10年)>
ステイゴールド【1-2-1-11/15】
勝率6.7%/連対率20.0%/複勝率26.7%/単回収率110%/複回収率150%
ディープインパクト【1-3-4-34/42】
勝率2.4%/連対率9.5%/複勝率19.0%/単回収率6%/複回収率111%

ほかではハービンジャーにも要注目。2017年には12番人気モズカッチャンが1着、10番人気ヤマカツグレースが2着と波乱を演出し、2018年にも5番人気ノームコアが3着と好走しています。Mill Reefなどの欧州血統の活躍も目立ち、特にフランス系の血脈で末脚を強化した配合形がベストです。

ハービンジャー内包馬の成績(過去10年),ⒸSPAIA


<ハービンジャー内包馬の成績(過去10年)>
ハービンジャー【1-1-1-8/11】
勝率9.1%/連対率18.2%/複勝率27.3%/単回収率338%/複回収率156%

有力馬の血統解説

・ブラックルビー
母メジロスプレンダーは重賞4勝馬サトノノブレス(父ディープインパクト)の半姉。母自身は芝1800mで2勝を挙げ、繁殖牝馬としても6勝馬ダノンスプレンダーなど6頭のJRA勝ち馬を出しています。

ディープインパクト系キズナ産駒の本馬はサトノノブレスと血統構成が似ており、キズナ×シンボリクリスエスの配合形はソングラインやアカイイトといったGⅠ馬と共通。前走馬体重420kgの小柄な馬体からも芝中長距離でスタミナを活かす競馬がベストですが、瞬発力勝負になると少々分が悪いでしょうか。

・ゴーソーファー
母ゴーマギーゴーはDeputy Minister系×Storm Cat系のパワー血統で、現役時代には北米のダートGⅡを2勝。繁殖牝馬としても2023年きさらぎ賞2着馬オープンファイアを出し、本馬はオープンファイアの3/4同血の配合形です。

兄はディープインパクト×北米血統という王道配合ですが、キズナ産駒の本馬はStorm Catの3×4を中心に北米血脈主体の血統構成に。配合のアウトラインは芝とダートで活躍し、芝オープン勝ちがあるクリスティに似ており、同馬と同様に馬場を問わずマイル前後でのワンペースの競馬が合っていそうです。

・ルクスジニア
母サトノアリシアは芝1800mで3勝を挙げたハービンジャー産駒。3番仔の本馬はキズナ産駒の牝馬で、前走馬体重434kgの小柄な馬体からも距離を延ばして良さが出るタイプでしょう。父も母父もフローラSと相性が良く、舞台適性はメンバー中屈指の一頭です。

フローラSに強い血統,ⒸSPAIA


《ライタープロフィール》
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。2023年11月には本島修司氏との共同執筆で『競馬の最高戦略書 予想生産性を上げる人の取捨選択の技術』(主婦の友社)を出版。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。

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