【競馬】東大HCが福島巧者を徹底検証 芝ではゴールドシップ産駒、吉田隼人騎手に注目
東大ホースメンクラブ
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福島開催がスタート
今週から福島開催がスタートする。夏にはGⅢのラジオNIKKEI賞や七夕賞が開催される。福島コースといえば、そのコンパクトさが特徴。芝コースの全周1600mは全10場のうち最短だ。19年から20年にかけて福島記念と七夕賞を制したクレッシェンドラヴを筆頭に、このコースを得意とする「福島巧者」は数多く存在する。
そこで今回は、種牡馬や騎手の福島適性をデータで徹底検証。ここでは福島コースでの勝率から全場での勝率を引いたものを「福島巧者率」と定義し、この数値に基づいて各種牡馬や騎手の福島コースに対する得意、不得意をみていく(データは2013年6月29日〜2023年6月29日のものを使用する)。
芝はゴールドシップ産駒が圧倒
まずは、種牡馬別に芝コースの福島巧者率について分析する。ただし調査対象は福島での出走数が過去10年で100以上の馬に限定する。
まずは種牡馬界の2大巨頭とも言えるディープインパクトとキングカメハメハ。ディープインパクトは10.5%-12.8%=-2.3%(出走数638)、キングカメハメハは7.0%-10.0%=-3.0%(出走数388)と共にマイナス値を記録。函館コースと同様に、福島コースも一筋縄ではいかないようだ。
そんな福島コースで抜きん出た巧者率を記録したのはゴールドシップ。なんと13.2%-6.7%=6.5%(サンプル数190)。JRAの芝で挙げた全128勝のうち、約2割を占める25勝を福島で挙げている。しかし、OP以上に限ると【0-1-0-4】と未勝利であり、馬券に絡んだ馬も1頭のみだ。現段階では条件戦で積極的に狙っていきたい。
ゴールドシップと同じくステイゴールドを父に持つオルフェーヴルもまずまず。巧者率は11.1%-8.2%=2.9%(出走数234)だ。バイオスパーク(20年福島記念1着)やヒュミドール(21年福島記念2着)、クリノプレミアム(22年福島牝馬S2着など)といった重賞での好走例もある。パワーのいる馬場や小回りのコース形態が、ステイゴールド系種牡馬の産駒にとってピッタリなのだろう。
次に今週末、ラジオNIKKEI賞が開催される芝1800mに強い種牡馬を分析する。調査対象は出走数が10以上の馬に限定する。
シルバーステートが、驚異の30.8%-8.6%=22.2%(出走数13)を記録した。中山巧者のイメージが定着しつつあるシルバーステート産駒。パワーの要る馬場や小回りのコース形態など、中山競馬場と共通点の多い福島でも活躍中であり、出走数が増える今後に期待が膨らむ。
その他、ダノンバラードが21.1%-6.7%=14.4%(出走数19)、リオンディーズが21.4%-9.1%=12.3%(出走数14)、ゴールドシップが16.4%-7.1%=9.3%(出走数67)を記録。ローカルで活躍する種牡馬たちが、他の競馬場と同様に福島でもいい数字を出している。
一方、苦戦が目立ったのはエピファネイアとロードカナロア。エピファネイアは2.8%-8.4%=-5.6%(出走数71)、ロードカナロアは2.1%-9.5%=-7.4%(出走数48)と大きくマイナスを記録した。重賞に出走する産駒も多く、その際には評価を割り引きたい。
それでは、七夕賞や福島記念が開催される芝2000mで活躍している種牡馬はどの馬なのだろうか。調査対象は出走数が30以上の場合に限定する。
優秀だったのはキズナ。その巧者率は17.6%-11.4%=6.2%(出走数34)であり、トップサイアー達の中では頭ひとつ抜けた数字だ。キズナ産駒といえば距離は違えど、先日の福島牝馬Sで8番人気1着と穴を開けたステラリアが思い出される。この条件下で単勝回収率は280%を記録しており、キズナ産駒たちの今後の福島コースでの活躍に期待だ。
その他、ゴールドシップが10.5%-5.5%=5.0%(出走数57)、ダイワメジャーが12.2%-8.1%=4.1%(出走数49)、ルーラーシップが12.8%-9.3%=3.5%(出走数94)とまずまずの値を記録している。
次にダートコースにおける種牡馬別の福島巧者率を見ていこう。調査対象は出走数が100以上の場合に限る。
高い巧者率を記録したのは、スクリーンヒーロー。その値は11.7%-8.0%=3.7%(出走数120)。また、芝ではマイナスを叩いたキングカメハメハが、ダートでは12.0%-10.1%=1.9%(出走数300)でプラスを記録するという興味深い結果に。オルフェーヴルは11.6%-9.4%=2.2%(出走数112)と、芝とダートの両方で優れた成績を残している。
一方、奮わなかったのがヘニーヒューズとシニスターミニスター。前者は8.1%-10.6%=-2.5%(出走数211)、後者は7.5%-9.8%=-2.3%(出走数228)とマイナス値を記録した。
永島まなみ騎手、吉田隼人騎手が躍動
最後に騎手別の巧者率を見ていこう。福島での騎乗数が100以上の騎手を対象とする。
最も顕著だったのが永島まなみ騎手だ。巧者率はなんと、14.5%-5.0%=9.5%(騎乗数110)。今年のCBC賞で重賞初騎乗となることが話題になっているが、今後福島の重賞に騎乗することがあれば、ぜひ狙っていきたい。
その他、秋山真一郎騎手が12.1%-6.9%=5.2%(騎乗数140)、川須栄彦騎手が9.6%-4.8%=4.8%(騎乗数270)、川又賢治騎手が9.5%-5.1%=4.4%(騎乗数273)など。
一方、福島コースで苦戦しているのが横山武史騎手。巧者率は、8.4%-11.0%=-2.6%(騎乗数273)。先日の福島牝馬Sでもストーリアで1番人気5着に敗れており、過剰人気には注意したい。
ラジオNIKKEI賞、福島牝馬Sが行われる芝1800mでは、騎乗数が50以上の騎手を分析対象とした。
巧者率が高かったのは、14.0%-6.2%=7.8%(騎乗数57)で松岡正海騎手。また、分析条件を満たした騎手で最も勝率の高かった吉田隼人騎手が18.0%-11.7%=6.3%(騎乗数89)で続く形。その他、柴田大知騎手が10.9%-5.6%=5.3%(騎乗数147)、勝浦正樹騎手が10.4%-5.9%=4.5%(騎乗数67)を記録している。
七夕賞、福島記念が行われる芝2000mでも同様の条件で分析を行った。
巧者率が高かったのが田辺裕信騎手で20.4%-11.9%=8.5%(騎乗数54)。それに吉田隼人騎手が16.3%-9.4%=6.9%(騎乗数86)で続く。吉田隼人騎手は芝2000mと1800mの両方で高い巧者率を叩き出しており、このような騎手は他にはいない。生粋の福島巧者といっても過言ではないだろう。その他、内田博幸騎手が14.9%-8.4%=6.5%(騎乗数67)、丸山元気騎手が14.0%-8.2%=5.8%(騎乗数107)、丹内裕次騎手が11.2%-5.9%=5.3%(騎乗数98)の巧者率を記録している。
《ライタープロフィール》
東大ホースメンクラブ
約30年にわたる伝統をもつ東京大学の競馬サークル。現役東大生が日夜さまざまな角度から競馬を研究している。現在「東大ホースメンクラブの愉快な仲間たちのブログ」で予想を公開中。
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