【富士S】ポイントはロータスランドと3歳馬、買っていい馬、キケンな3歳馬とは
勝木淳
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1番人気は3年連続馬券圏外
富士Sは昨年からGⅡに昇格し、関西圏のスワンSと並び、マイルCSの前哨戦的な位置づけが強化された。16~18年は連続で本番好走馬を輩出、これがGⅡ昇格のきっかけになった。ところが19年はカテドラルの6着が最高、GⅡになった昨年は出走ゼロ。さて今年は、ここからマイルCSを目指し、好走する馬があらわれるだろうか。ここでは過去10年間のデータを使用して、富士Sの傾向について考えてみる。
まず人気別成績から。1番人気は【3-1-0-6】勝率30%、複勝率40%。東京競馬場の重賞としてはやや好走確率は低く、目下3年連続で1番人気は馬券圏外だ。ただし、勝ち馬はすべて5番人気以内、複勝圏内も6番人気以内が大半。10番人気以下も4頭が3着以内に来てはいるものの、12~14年と比較的古い記録が目立つ。最近だと17年11番人気3着クルーガーが当てはまるが、全体的な傾向としては上位拮抗の中波乱といった程度で、大振りは避けたい。
ダノンザキッド、ソングラインなどの参戦で注目を集める3歳は【3-2-2-31】勝率7.9%、複勝率18.4%。単複回収値は71、82なので、上位人気を素直に信頼するぐらいがいい。ダノンプラチナやラウダシオンなどGⅠ馬の好走が目立つ一方で、19年アドマイヤマーズ9着など休み明けで大敗することもある。
目立つのは4歳【5-4-2-12】勝率21.7%、複勝率47.8%。こちらは単複回収値106、131で穴も出ており、頼りになる。サマーマイルシリーズ覇者ロータスランドや昨年2着で、マイル戦に戻るラウダシオンなど骨っぽいメンバーが並ぶ。6歳以上は【0-1-0-51】。マカヒキの例もあるので、軽々にはいえないが、好走はだいたい5歳【2-3-6-32】勝率4.7%、複勝率25.6%までだろう。
東京のマイル戦はコース半周のシンプルなレイアウト。そのため枠順の有利不利は少ないように感じるが、1枠が【0-0-1-15】複勝率6.3%といただけない。また2枠【1-0-1-16】勝率5.6%、複勝率11.1%、3枠【1-0-2-15】勝率5.6%、複勝率16.7%までは確率が低いので、3枠以内に入った馬はちょっと注意しよう。
3歳で狙うならタイムトゥヘヴン
続いては前走クラス別成績からさらに詳しく好走傾向と該当馬について考えてみたい。
まず格上の前走GⅠ【3-3-2-19】勝率11.1%、複勝率29.6%と前走GⅡ【3-0-3-11】勝率17.6%、複勝率35.3%が目立つ。秋の東京マイル重賞となれば、格下から来る馬は基本的に厳しい。
ダノンザキッドは前走皐月賞から休み明け、一気にマイル戦へ路線変更してきた。そこで前走GⅠ組を距離別成績でみていく。前走が1600mのGⅠだと【2-3-2-12】勝率10.5%、複勝率36.8%。1600mを越える距離だと【1-0-0-7】勝率12.5%。マイルより長い距離のGⅠから来た馬はやや苦しい。
しかし、この1勝は15年4番人気3歳のダノンプラチナ。同馬の前走は皐月賞11着だった。馬主まで同じシチュエーションである。とはいえ、ダノンプラチナはマイルの朝日杯FSを勝っており、得意のマイル戦に戻った形。ダノンザキッドははじめてマイル戦に出走する。この方針転換はどう出るだろうか。
次に前走GⅡ組について距離別成績を調べると、前走が1600mを越える距離を走った馬は【3-0-2-9】勝率21.4%、複勝率35.7%とGⅠ組とは異なる傾向にあった。ちなみに1600mだった馬は【0-0-1-1】、たった2頭しかない。これは古馬GⅡのマイル戦が阪神牝馬S、マイラーズC、とこのレースの三つしかないからにほかならない。
で、前走GⅡ組で1600mより長い距離を走った馬にはダノンザキッドと同じ3歳タイムトゥヘヴンがいる。同馬はセントライト記念14着からの転戦だが、春はNZT2着とマイル適性がないわけではなく、巻き返す可能性はある。
また前走がセントウルSだったラウダシオンが該当する1600m未満だった馬は【0-0-0-1】。これはサンプルが少なく判断できない。ラウダシオンの直近のマイル戦はGⅠ2戦で15、14着、短距離志向が強くなっている可能性はあるが、昨年のこのレース2着なので侮れない。
ソングライン、バスラットレオンはキケン
最後に前走GⅢ組【3-7-2-55】勝率4.5%、複勝率17.9%について。3歳ソングライン、バスラットレオン、4歳ロータスランドなど有力馬を中心に該当馬は多い。この舞台と似た新潟マイルの関屋記念は【1-0-0-7】勝率12.5%。16年ヤングマンパワーが関屋記念と富士Sを連勝した。ロータスランドはこれに続けるだろうか。一方、ソングラインが当てはまる関屋記念2着以下だった馬は【0-0-0-6】で巻き返しはない。
データで目立つのは、東京とは似ていない中山で行われた前走京成杯AH組の【2-3-1-25】勝率6.5%、複勝率19.4%。その着順別成績をみる。
京成杯AH2着だった馬は富士Sで【1-2-0-3】勝率16.7%、複勝率50%。ここも好走することが条件。15着だったバスラットレオンが該当する10着以下は【0-0-0-4】。スタートで遅れ、後方から競馬して大敗を喫した。ムラっぽいところもあるので、度外視できなくもないが、データ上は厳しい。結果として3歳馬は、データによって明暗がくっきり分かれる形になったように今年のポイントは3歳馬の取捨選択にある。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1995-1999 90年代後半戦』(星海社新書)。
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