【阪神大賞典】春を告げる伝統の長距離戦 メロディーレーンが気になって仕方がない!

勝木淳

阪神大賞典インフォグラフィックⒸSPAIA

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勝負はスパートのタイミング

かつて名勝負の数々が繰り広げられた名物長距離重賞だが、このカテゴリー自体が勢いをなくしている今、出走メンバーの低下が懸念される。

それでも長距離戦は競馬の醍醐味のひとつ。静かに幕が開き、各々の騎手たちの駆け引きが水面下で繰り広げられ、後半に一転して激しいつばぜり合いが演じられる。やはり見るべきところが多く、魅力あふれるレースである。

中山牝馬S過去10年勝ち馬成績ⒸSPAIA


傾向としては昨年こそ例外的だったが、最初の1000mより最後の1000mが速い、いわゆるスローペースのレースがほとんどを占める。シュヴァルグランが勝った16年は最後の1000mが最初の1000mより1.8秒も速かった。しかしながら勝ち馬の4角順位は5番手以内がほとんどで4回が2番手だった。最後の脚が速いだけではなく、内回りコース特有の3、4角で加速進出できる器用なスパートが求められる。いわゆるスタミナ兼備のロングスパート型が理想的な馬だ。出走予定想定馬にはキセキがいるが、まさに理想的な馬の一頭といえよう。

長距離は種牡馬に注目

コーナーでスパートし、ある程度の位置に行ける馬、かつ2000m走ったあとに残り1000mで速い脚を繰り出せる馬となると、思い浮かべるのがステイゴールド一族だ。

種牡馬別成績(過去10年)ⒸSPAIA


案の定、ステイゴールドは【4-2-0-4】と好成績。ただし、このうち3勝はゴールドシップの3連覇で、2着にはオルフェーブルの伝説の逸走が含まれている。そうやすやすと鵜呑みにはできないかもしれない。ただ、同じ内回りの宝塚記念や有馬記念と似た傾向であることは確かだ。ステイゴールド系の加速力とスタミナは捨ておけない。そんな意味では出走予定馬にメロディーレーンがいるのは侮れまい。

キセキやムイトオブリガードのルーラーシップは上位に名前はないが、このレース【0-0-0-1】で判断のしようはない。その父にあたるキングカメハメハ【0-0-0-6】は気になるところ。総じてキングマンボ系は中距離以上では成績が落ちるというデータはある。ただ菊花賞を勝ち、中距離以上で結果を出しているキセキをばっさりとはいけない。

ディープインパクトは【1-1-1-3】と出走数が意外と少ないので難しいところだが、勝ち切るイメージはあまり持てない。同じ勝ちきれないものの好走率が高いハーツクライ【2-4-0-6】の方を評価すべきではないか。



有馬記念出走馬と真冬の重賞出走馬に注意

キセキに味方するデータもある。それが前走レース別成績だ。

前走レース別成績(過去10年)ⒸSPAIA


有馬記念組は【4-5-1-5】と好成績である。ハイレベルなGⅠ出走馬、とりわけステイヤータイプが強く、先述したように小回りでコーナーで進出する器用さが求められる有馬記念が阪神大賞典とつながるのは納得するところだろう。有馬記念組はキセキただ一頭であり、ますますバッサリとはいけない。

同じ中距離GⅠでもステイヤー資質が問われないジャパンC組は【0-0-1-2】と奮わない。阪神大賞典の好走理想ゾーンと重なり合う部分が少ないことが影響していると言わざるをえない。有馬記念以外では真冬の中距離以上の重賞出走馬が強い。同じ3000m超のダイヤモンドS【2-2-2-21】と出走数が多いので取捨は難しいが、注目すべきだろう。2着だったメイショウテンゲンはディープインパクト産駒のステイヤー。種牡馬別成績で示したように信頼度は低いが、同馬は明らかにステイヤーであり、それなりに評価するべきだろう。

だが、先述したようにハーツクライの評価をあげるとすると、レノヴァールの評価はあげておきたい。万葉Sから連続して長距離戦出走は不気味なローテだ。メロディーレーンの日経新春杯は【2-0-3-5】であり、ここでも好走パターンに合致する。これら共通しているのは真冬の中距離以上重賞。休み明けより使って使ってここにやってくる馬が強いのも長距離戦らしい傾向である。



有利なのは外枠

最後に枠番別の成績を指摘する。

枠番別成績(過去10年)ⒸSPAIA


スローペースの長距離戦にもかかわらず、枠は外枠の方が成績が目立つ。もちろん1枠【2-0-2-6】と成績はいいが、6枠【1-4-1-10】、7枠【2-0-2-13】、8枠【4-2-0-14】と総じて外枠に好走馬が目立つ。これは少頭数のレースが多く、外枠のロスが内枠のロスより小さいからであろう。多頭数の外枠では距離ロスが大きいが、少頭数ではそこまで気にならない。スローの団子状態になりやすいレースでは内枠に入ることによるストレスが大きい。ましてレースは残り1000mから早めにスパート開始。進出しやすい外目追走はレースの流れに柔軟に対応できるため、外枠の成績がいいのではなかろうか。小さいメロディーレーンも内で大きな馬に押し込められるぐらいなら外を走りたいだろう。

メロディーレーン、外枠に入らないだろうか。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて「築地と競馬と」でグランプリ受賞。中山競馬場のパドックに出没。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌「優駿」にて記事を執筆。

阪神大賞典インフォグラフィックⒸSPAIA

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