【有馬記念】「良馬場平均35.0」「4角平均通過P2.3」に合う馬は?

三木俊幸

2019年有馬記念のインフォグラフィックⒸSPAIA

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33秒台の上がりで勝利したのはオルフェーヴル1頭のみ

例年より少し早く12月22日の開催となった今年の有馬記念。しかし、まだ暖かい日も多いせいなのか、それとも毎週競馬場に通っているからなのか、「もう有馬なの?」という感覚しかない。

しかし、週末の天気予報をみると、有馬記念当日は雨のち曇りとスッキリしない天気で、気温も10度に届くか届かないか微妙な予報となっており、例年通りの凍える寒さの中での有馬記念となりそう。体も財布もしっかりと防寒対策をしてレース当日を迎えたいところだ。

今年は熱発で香港遠征を回避したアーモンドアイが出走を表明し、2位のリスグラシュー、3位のキセキ、4位のサートゥルナーリアとファン投票の上位4頭が出走。さらにジャパンCを制したスワーヴリチャードや菊花賞馬ワールドプレミアなど豪華なメンバーが揃った。果たしてどの馬がグランプリホースの座に輝くのか、先週の中山競馬場の傾向と過去10年の有馬記念の傾向をもとに、各馬の適性を分析していく。

表1_過去10年の上がりⒸSPAIA


はじめに過去10年の有馬記念の上がりタイムと通過順位についてのデータを見ていこう。

2018年こそ稍重でのレースとなったが、それ以外の9年は全て良馬場で行われていた。今年も雨予報が出ているとは言え、馬場に影響が出るほどの雨量にはならず、おそらく良馬場と考える。

そこで良馬場で行われた過去9年の上がりタイムに限ってみると、33秒台の上がりを使って勝利した馬は2011年、当時3歳だったオルフェーヴル1頭のみ。有馬記念にしては珍しい上がりだけ勝負となり、33.3がマークされた。

だが、有馬記念は基本的に3コーナー過ぎから各馬が動き始めるため、持久力が要求される流れになることが多く、34秒台前半の上がりを使った馬まで対象を広げてみても2014年に34.1を使って勝利したジェンティルドンナのみ。それ以外は34.6以上の上がりがかかっていた。

その結果、良馬場で行われた年の平均上がりは1着34.8、2着35.0、3着35.1、1〜3着平均35.0となっているので、34秒台半ばから35秒台前半のレースでの決着に強い馬を狙いたいところ。

表2_過去10年の通過順位ⒸSPAIA


続いて過去10年の通過順位についても分析した結果、4角の通過順位を逃げ1P、先行2P、差し3P、追込4Pで振り分けて数値化した4角平均通過ポイントで表してみると、1着2.1P、2着2.5P、3着2.4Pで1〜3着の平均は2.3Pとなっていた。勝利した馬の中で、4角通過時に5番手以内を通過していた馬は8頭と、勝負どころでは前につけていないと勝つのは難しいという結果が見られた。しかし3着まで広げてみると、10頭が4角8番手以下からでも馬券圏内に絡んでいるという傾向も無視する訳にはいかないだろう。



先行有利の良好な馬場コンディション

これらのデータを頭に入れたところで、先週の中山競馬場で行われた芝のレース結果から、過去の有馬記念のデータは活用できそうなのか、照合してみる。

表3_12月14日15日_中山芝コースの上がりⒸSPAIA


12月14、15日に施行された10レースはいずれも良馬場。タイムは2000mの2歳未勝利戦で2:00.8、重賞のターコイズSで1:32.2がマークされるなど時計の速い馬場だったと言えるだろう。しかし、上がりは概ね34秒台後半から35秒台前半で平均すると1着34.9、2着35.1、3着35.3、1〜3着平均35.1となっており、過去10年の良馬場で行われた有馬記念と同等、もしくは少し速い上がりになる可能性もありそうだ。

表4_12月14日15日_中山芝コースの通過順位ⒸSPAIA


通過順位については、4角通過時に先頭に立っていた馬が6頭馬券圏内に絡んでおり、それ以外でも先行馬の活躍が目立っていたことが見てとれる。4角平均通過ポイントでは、1着2.1P、2着2.0P、3着1.8Pで1〜3着平均2.0Pだった。差しが全く届いていない訳ではないが、例年の有馬記念以上に勝負所で良いポジションにつけられる器用さが求められる馬場傾向にあると考える。

今年の有馬記念で狙ってみたい馬

馬場傾向をもとに今年の有馬記念で狙ってみたい馬は以下の6頭とした。

表5_3着以内に好走したときの平均上がりⒸSPAIA


本命は平均上がり34.5、4角平均通過ポイント2.3Pとデータ的にもほぼピッタリ当てはまるスワーヴリチャード。昨秋以降2400m以上のGⅠでは3着を外しておらず、安定感は抜群。仮に想定以上に雨が降り、稍重になったとしても全く問題なし。無駄な動きをすることなく好位からレースを進め、ロングスパートに持ち込みたい。

対抗はアーモンドアイ。初の中山コースがどうかだが、それはスタートに全てがかかっていると言っても過言ではない。同じことは昨年のジャパンCにも当てはまっていた。その週の東京は先行しなければ馬券圏内に好走するのが難しいほどの超高速馬場。しかしルメール騎手は完璧なスタートを決めて、2番手からレースを進めて勝利した。2番手とは言わなくとも今回も同様のスタートが求められるレースだと考えるので、スタートで位置どりが悪くなれば、勝利を取りこぼす可能性も考慮しての評価とした。

3番手はヴェロックス。中山コースに変われば、巻き返してくる余地は十分ある。4角平均通過ポイント2.1Pと先行力があり、なおかつロングスパートを得意としている。そして人気が下がっている今回は馬券的にも狙い時ではないだろうか。

サートゥルナーリアは、33秒以下の上がりを使ったレースは神戸新聞杯の32.3の1回のみ。それ以外は全て34秒台または35秒台の上がりで馬券圏内に好走している。それだけに、広い東京コースよりは小回りの中山コースに適性があると考えているので、必ず巻き返してくるだろう。

リスグラシューは推奨した中では最も速い平均上がり34.0だが、宝塚記念ではこれまでにない先行するレースで勝利。2:10.8という好タイム、35.2という上がりのかかるレースにも対応してみせた。そして前走のコックスプレートでは早めに動く形で勝利と、実は小回り巧者だったのではないかと思ってしまうほど、近2戦の内容は素晴らしい。今回もその立役者であるレーン騎手が騎乗できるのは大きい。頭のいい騎手なだけに、しっかりと分析してレースに挑むことだろう。

最後にスカーレットカラーを取り上げる。同馬は東京で府中牝馬Sを勝利してはいるものの、馬群を割ってロスのない競馬をすることができ、小回りコースへの適性はかなり高いとみている。決して長くいい脚を使うタイプではないが、各馬が3コーナーから早めにスパートをかけて、前の馬が苦しくなった時に馬群をスルスルと割って伸びてくる。そんなイメージが湧いたので穴として押さえておく。

2019年有馬記念のインフォグラフィック

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