【小倉記念】逃げ馬は10年間0勝の大苦戦 ハイペースに強いノーザンテーストの血に注目
坂上明大
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傾向解説
1965年に創設された小倉競馬を代表する重賞・小倉記念。サマー2000シリーズ第3戦という側面もあり、地力、適性、状態などさまざまな要素が絡み合う難解な一戦です。なお、2020年からは開幕週で行われていますが、2019年以前から大きな傾向変化は見られません。本記事では血統面を中心に、小倉記念で求められる適性を整理していきます。
まず押さえておきたいポイントは逃げ馬が大苦戦しているということ。過去10年ではメイショウナルトとマウントゴールドが3着に好走しているのみで、逃げ馬の残りやすい小回りコースとしては特殊な脚質傾向にあります。これは、小倉芝2000mが激しい先行争いと向正面からのロングスパートが起こりやすいコースレイアウトであることに起因し、1~2角しか息を入れる区間がない非常にタフな舞台設定といえるでしょう。
反対に、上がり3F上位馬の好走が目立ち、特に開幕週に替わった2020年以降の3年間は連対馬全6頭が上がり3F2位以内、3着内馬全9頭が同3位以内という顕著な結果となっています。ただ、これは瞬発力タイプが好走しているというわけではなく、タフな流れでも脚を残せた馬が結果的に上がり3F上位だったということ。ハイペースに強く、激しい先行争いにも巻き込まれない馬を狙うのがベターでしょう。
血統面ではノーザンテーストに注目。Lady Angelaを経由したHyperionの4×3を持つノーザンテーストはスピードとタフさに優れた名種牡馬で、ハイペース戦に強い血統の1つといえるでしょう。2019~21年にはメールドグラース、アールスター、モズナガレボシというノーザンテースト内包馬が3連勝。昨年もジェラルディーナが3着と好走しており、ノーザンテーストの血は現在でも最重要の血統といえそうです。ノーザンテーストと同じく父Northern Dancer、かつHyperionの4×4を持つNureyevについても同様に好成績をあげています。
血統解説
・マリアエレーナ
昨年優勝馬であり、小倉芝2000mでは2戦2勝というコース巧者。母母父キングカメハメハを経由してNureyevの血を薄く引く点も加点材料ですが、本馬については父クロフネから受け継ぐハイペース適性が最大の魅力でしょう。昨年は好位追走から上がり3F最速の末脚を披露しての5馬身差快勝。適性面については疑う余地がありません。
・エヒト
父の母エアグルーヴ(トニービン×ノーザンテースト)やNureyev≒Sadler's Wellsの5×4から受け継ぐスタミナとタフさが持ち味の小回り巧者。小倉競馬場は4歳時に芝2600m戦で勝利して以来2戦目になりますが、血統面からもコース適性については心配ないでしょう。ハイペース戦で上がり上位の末脚を使えるタイプでもあり、巻き返しが期待できる一戦となりそうです。
・ククナ
母クルミナルはLyphardの4×4やBlushing Groomなどを持つ機動力型血統で、キングカメハメハ産駒の本馬も母同様のピッチ走法で小回りコースを苦にしません。前走七夕賞2着とサマー2000シリーズチャンピオンも狙える立場だけに、ここへの本気度も強い一頭といえそうです。平均ペースに落ち着けば持ち味が活きるでしょう。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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