【日経新春杯】メジロブライトがトップハンデ59.5kgを背負い勝利 新春を祝う伝統の一戦を「記録」で振り返る

緒方きしん

日経新春杯思い出の記録,ⒸSPAIA

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59.5kgの”酷量”を克服した名馬メジロブライト

新春を祝う一戦、日経新春杯。1954年から続く伝統の一戦で、古くは1963年の年度代表馬リユウフオーレルやフレッシュボイスといった名馬が勝利している。近年ではルーラーシップやモズベッロが活躍。そして昨年の勝ち馬ブローザホーンは宝塚記念を制したように、一年を占う上でも見逃せない一戦だ。そんな日経新春杯を1986年以降の「記録」で振り返る。

ハンデ戦でもある日経新春杯。1978年にテンポイントが66.5kgのハンデを背負って出走(当時は日本経済新春杯)し、レース中の骨折により競走中止となったことでも有名だ。ここでは1986年以降に3着以内だった馬の斤量を重い順でランキングにしてみる。

1位 60.5kg 1994年2着メジロパーマー
2位 60kg 1990年2着ヤエノムテキ
3位 59.5kg 1999年1着メジロブライト
4位 59kg 2023年1着ヴェルトライゼンデ
5位 58.5kg 2001年1着ステイゴールド、2012年1着トゥザグローリー

なお、メジロパーマーの出走年は阪神開催、ヴェルトライゼンデは中京開催。ヤエノムテキの1990年はハンデ戦ではなく別定戦だった。

5位タイのステイゴールドは2000年の目黒記念以来の勝利で、重賞2勝目となった。ロサードやサンエムエックスといった強豪を相手に、3番手から上がり最速で快勝。その次走でドバイシーマCを勝利したステイゴールドは、年末の香港ヴァーズでも勝利し、GⅠ馬の仲間入りを果たす。引退後はオルフェーヴルやゴールドシップを輩出する歴史的な名種牡馬となった。

同じく5位タイの2012年勝ち馬トゥザグローリーは、前年の有馬記念でオルフェーヴルと対決して3着に善戦。年明け初戦で単勝1.6倍の圧倒的人気に応えた。同年には鳴尾記念を勝利するなど競馬界を盛り上げ続け、引退後は種牡馬としてカラテやゲンパチルシファーを出している。

4位のヴェルトライゼンデはドリームジャーニー産駒で、5位ステイゴールドの孫でもある。2022年に鳴尾記念を勝利しジャパンCでも3着に入った実力派が、年明けの日経新春杯でロバートソンキー、プラダリアらを撃破した。その後は2戦して未勝利だが、2年ぶりの勝利を目指して今年も同レースに挑む。

3位のメジロブライトは、優勝馬のなかでは最も重い斤量だった。1998年に4連勝で天皇賞(春)を制して有馬記念でも2着と好走したことで、最優秀父内国産馬に選出された名馬である。年明け初戦の日経新春杯はエモシオンやシルクジャスティスといった実力馬も出走する厳しい一戦だったが、トップハンデをものともせずに勝利。これが現役最後の勝利となったが、同年の天皇賞(春)で2着、有馬記念で5着とGⅠ戦線に欠かせない存在としてレースを盛り上げ続けた。

2位のヤエノムテキは1989年にも日経新春杯に挑戦したが、3つ年上のランドヒリュウ(斤量57kg)にクビ差で敗北。そのリベンジを狙って2年連続で出走したが、1つ年下のトーワトリプル(斤量56kg)に3/4馬身差で敗北した。そこから3着→3着→2着→3着と惜敗が続いたが、天皇賞(秋)でついに勝利。オグリキャップやメジロアルダンらを撃破して栄冠を掴み取った。

1位のメジロパーマーはトップハンデで果敢に逃げての2着。1989年のデビューから1994年までの間にダートや障害競走も含めて38戦し、観客をわかせ続けた名馬だが、同レース後に右前脚の屈腱炎が判明し引退となった。

万馬券メーカー、テイエムプリキュア

3着以内に入った馬の斤量としては、56kgが23頭でトップ。2位は55kgの20頭、3位は57kgの16頭と続く。53kgは8頭、52kgは11頭、51kgは2頭、50kgは4頭と、軽斤量の馬はやや苦戦傾向にある。

ただし、勝ち馬の単勝オッズ高配当ランキングでは、3位は2021年ショウリュウイクゾ(単勝オッズ19.6倍、53kg)、2位は2013年カポーティスター(同22.8倍、52kg)、1位は2009年テイエムプリキュア(同34.4倍、49kg)と軽斤量の馬たちが並ぶ。

テイエムプリキュアは2005年の阪神JFを8番人気で制し2歳女王に輝いた名馬。しかし、以降は連敗が続く。久々に馬券圏内に食い込んだのは2008年の日経新春杯で、12番人気3着だった。その後も勝ち星をつかめず、2009年の日経新春杯で引退する予定だった。

だが2度目の日経新春杯では、49kgの軽斤量をいかしてアドマイヤモナーク、ヒカルカザブエらを相手に堂々の逃げ切り勝ちを果たす。これにて現役続行が決まったテイエムプリキュアは、同年のエリザベス女王杯でクィーンスプマンテとともに大逃げの手に出て、ブエナビスタの猛追を振り切り2着に粘り込む走りを見せるなど活躍。阪神JFは馬連192倍、日経新春杯は同151.9倍、エリザベス女王杯は1020.3倍と、テイエムプリキュアが馬連に絡んだ重賞は全て万馬券と、波乱を巻き起こす名馬として愛された。

1986年以降の日経新春杯を制した牝馬はテイエムプリキュアを含めて、エルカーサリバー、メジロランバダ、メイショウベルーガと合計4頭いる。今年は牝馬のホールネスが有力馬の一角を担う。果たして牝馬による同レース制覇となるだろうか。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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