【2歳馬ジャッジ】ナスティウェザーのラスト2Fの加速力は驚異的 今後の大活躍に期待
山崎エリカ
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7月1週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回はラスト2Fで11秒6-10秒9と優秀なラップを刻んだナスティウェザーなどが出た、7月1日、2日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
7月1日(土) 福島5R 優勝馬 シリウスコルト 指数±0 評価B
4番枠からやや出遅れて二の脚も遅く、後方の内目からの追走。3~4角で前との距離を詰めて中団付近まで上がったが、4角でも前には多くの馬がいた。やや苦しいように見える展開だったが、4角出口で外に誘導され進路を確保すると、ジワジワ伸びた。残り100mから勢いがつき、一気に差しきり勝ち。ラスト2Fは11秒8-12秒0とまずまず。ただ指数が良いとは言えず、高い評価はしにくい。順調に使われての成長に期待したい。
7月1日(土) 福島6R 優勝馬 ピンクヴェノム 指数-10 評価A
10番枠から加速がついて逃げる競馬。軽快なスピードでそのまま4角を先頭で回ると、直線に入っても逃げ脚は衰えず。負かしにきた馬が逆に苦しくなってしまう流れを堂々と逃げ切った。
福島ダ1150mの走破タイム1分08秒2は古馬のレースと比較してかなり優秀なもの。指数は新馬戦ながら古馬1勝クラスでも通用するレベルのものだった。ラスト2Fは12秒2-12秒3。なかなか優秀な走破タイムで走りながら最後までしっかり脚が使えている点は高く評価できる。
今年のJRA2歳ダート新馬戦はここまで例年よりも高い指数の決着が多い。まだここまでダートの新馬戦は短距離戦ばかりなので何とも言えないところはあるが、3歳ダートクラシック交流元年に向け、JRA勢は強力な布陣となりそうな気配だ。
7月2日(日) 福島1R 優勝馬 コスモブッドレア 指数-6 評価A
6月東京のダノンエアズロックが勝利した新馬戦で2着のピースヒロフェイスが1番人気。同じく東京のボルケーノが勝利した新馬戦で2着の本馬が2番人気。堀厩舎の評判馬ダノンエアズロックとボルケーノの代理戦争とも言えそうな未勝利戦だった。
レースは3番枠からトップスタートを切って、マイペースの逃げとなった本馬。気持ち良さそうに走って、最後の直線では後続に影を踏ませずゴール。2着に3馬身半、3着に6馬身半、それ以下にもしっかりとした差をつけての圧逃劇だった。
指数もこの時期の未勝利クラスとしてはなかなか優秀なもの。昨年のグラニットを上回る指数での勝利は強烈なインパクトを残した。良質なスピードとスタミナを兼備したタイプ。今後は勝ったり負けたりとなるだろうが、重賞級の伏兵として活躍するだろう。
1番人気のピースヒロフェイスは行きっぷりも悪く、追走に苦しんで離された4着に敗退。やはりダノンエアズロックの新馬戦は少し疲れを残しやすい内容だったようだ。
7月2日(日) 福島5R 優勝馬 トレミニョン 指数-2 評価B
8番枠から好スタートを切って、好位の中目で流れに乗った本馬。その前を走っていたのが、逃げ馬の外2番手のティンク。ともに社台レースホースの馬だ。最後の直線で早めに抜け出しにかかったティンクを目標に進路を内に切り替えた本馬。二頭並んで伸びたが、最後はわずかに本馬が先着した。
少し前はこういったセンス十分の走りをする新馬はノーザンファーム生産馬ばかりだったが、ここにきて社台ファーム生産馬の反撃が目立つようになってきた。今後も熱い戦いを期待したい。
この新馬戦のラスト2Fは11秒7-11秒8。悪くはないが、現状では特筆すべきレベルでもない。今後使われながらどのように成長していくか楽しみにしたい。
7月2日(日) 福島6R 優勝馬 ビッグドリーム 指数-6 評価A
大外10番枠からトップスタートを切ってハナに立つかの勢いだったが、内からパキラがハナを主張したので、スッと控えて2番手を追走し、折り合うセンスの良さを見せた。3~4角で早々と先頭に並びかけると、直線では進路を馬場の良い外に出す余裕があった。あとは完全な独り舞台で、後続に6馬身差を付けて圧勝した。
ただラスト2Fは11秒4-11秒9。良い指数の圧勝劇だったが、着差が付いたのは多少相手に恵まれた面があったのかもしれない。本馬の全兄は現3歳芝短距離路線で大活躍中のビッグシーザー。同馬は大型馬だが、本馬もかなりの大型馬でフットワークの軽さが目立つ。
ビッグシーザーは新馬戦で敗れて初勝利はデビュー3戦目の未勝利戦だった。しかし、そこで1クラス上の好指数を記録したところから快進撃が始まった。そこが今後の成長曲線にどのような影響を与えるか。何にしても本馬も大きな活躍が期待できる。
7月1日(土) 中京1R 優勝馬 ジュントネフ 指数-2 評価B
6月東京のバスターコールが勝利した新馬戦では道中3番手を追走していた本馬だったが、結果はそのまま伸びずバテずの3着だった。今回はデビュー2戦目、不良馬場の芝で6番枠からまずまずのスタートを切り、行きっぷり良く好位の外めを追走。キャリアの浅い2歳馬にとっては馬場がタフで、最後の直線ではバテ比べの一戦となったが、ジワジワ伸びて勝利した。
前走のバスターコールが勝利した新馬戦は5F通過57秒8のハイペースだったが、道中3番手のジュントネフの位置でもオーバーペースだったのだろう。前走で厳しい経験をしたことが今回のバテ比べのレースに繋がった。また2着馬は新馬戦ではダートを使われていたエコロガイア。このことからもここまでの2歳ダートの新馬戦は、高水準のレースが多かったと言える。
7月1日(土) 中京5R 優勝馬 クリノハレルヤ 指数-5 評価A
7番枠から出遅れたうえに外に大きくヨレたが、大外枠だったのでそれが致命傷とはならず、他の馬にも被害を与えなかった。そこから気合いをつけるとあっという間にハナを奪うスピードを見せたが、先頭に立ってからはペースを落として折り合いをつけた。後続を引き付けたまま最後の直線へ。重馬場での長い直線、逃げ切るのは簡単なことではないが、そこから後続を突き放し、3馬身半差の勝利と強かった。
なかなか軽くて良いフットワークで光るものを感じさせる馬。ラスト2Fは11秒3-11秒6。馬場がタフだったことを考慮すれば悪くない。上がり3Fタイムの34秒5はこの日の中京芝では評価できる数字。スタートでロスがありながらの快勝劇からも、もっと奥がありそう。オープン、重賞でも楽しめる馬になりそうだ。
7月1日(土) 中京6R 優勝馬 ラムジェット 指数-2(ダート) 評価A
6番枠から出遅れ、ダートの部分に入ってからも行きっぷりが悪く、道中は離れた最後方を追走。3~4角でようやく一頭交わしたが、4角でも前とは大きな差があった。通常なら明らかに大敗で終了と言ったレースぶりだったが、最後の直線で大外に出されると少しずつ前と差を詰めた。それでもラスト1Fではまだ届く気配はなかったが、残り50mあたりからグイグイ伸びて差し切った。
ラスト2Fは12秒5-12秒9。冷静に判断すると前が潰れたところを最後まで同じような脚で伸びていたら届いたと言う内容だった。しかし、見た目は強烈なインパクトを残す差しきり勝ちだったが、指数もあまり優秀とは言えない。ただ上がり3Fタイムの35秒8はこの週の中京ダートでは古馬を含めて最速だった。
こういったレースぶりの馬は過剰評価してはいけないが、光るものは見せた。能力をしっかり出せるようになれば面白い存在になるかもしれない。
7月2日(日) 中京5R 優勝馬 ルージュスタニング 指数-3 評価A
7番枠から好スタートを切ったが、そこから無理をさせず、好位の外を追走。新馬戦はスタートして少し走るとフットワーク等で勝ち馬が分かってしまうことが多いが、このレースもそんな感じで、本馬も大きい馬体ながら軽快なフットワークだった。
最後の直線はラスト1F手前で先頭に立ち、最後までしっかり脚を伸ばして快勝。ラスト2Fは11秒6-11秒4。最後まで加速しながら勝利したことは価値が高い。折り合いもスムーズで全くケチのつけようがない、優等生の競馬ぶり。これならば今後も活躍が期待できるだろう。ただトップ級になるためには、ここから大きく成長する必要がある。
7月1日(土)函館1R 優勝馬 ナナオ 指数-5 評価A
ベレニーチェを除き、前走コルルディが勝利した新馬戦の再戦という形になったメンバー構成。その新馬戦で2着だった本馬が順当に1番人気に支持された。2番枠から好スタートを切って、そこから逃げた馬を深追いせず、2番手でリズム良く追走。3~4角では逃げ馬とは手応えが違いすぎて早々に先頭へ並びかけ、4角ではもう先頭。直線では後続馬が迫ってこようとしていたが脚色は衰えず、最後は突き放してゴールした。
結果は2着に3馬身、3着に5馬身半差を付け、なかなか良い指数で勝利。ラスト2Fは12秒0-11秒8と、勝ちにいく競馬で加速したのは高く評価できる。新馬戦で対戦したメンバーたちにさらなる差を付け、余裕を感じさせる内容での勝利。地味なタイプだが、オープンでも侮れない存在だ。
7月1日(土)函館5R 優勝馬 ルージュレベッカ 指数-1 評価B
3番枠からまずまずのスタートだったが、気合いを入れてハナ奪取に成功した。そこからはペースを落として後続を引き付けながらの逃げ。とても上手なペース配分で、4角ではスッと後続を引き離した。直線では独走で圧勝かとも思われたが、最後は2着馬に迫られてのゴールだった。
ラスト2Fは11秒4-12秒4と急失速。3着馬には7馬身以上の差をつけている点は高く評価できるが、走破タイムが平凡。かつラストが急失速となると、そこまで高い評価はできない。初戦で逃げた馬は内容平凡でも2戦目に大きく変わることもある、さて本馬はどうか。
7月1日(土)函館6R 優勝馬 ナスティウェザー 指数-11(ダート) 評価AA
ダ1000mの新馬戦、3番枠から好スタート&好ダッシュを決め、そのままマイペースで逃げた。持ったままで4角を回って直線に出されると、そこから上位3頭による強烈な加速比べ。本馬はラスト1Fを過ぎた辺りで、フットワークの回転がさらに上がる。結果は2着馬に4馬身差、4着馬以下には大差をつけての快勝だった。
ラスト2Fは11秒6-10秒9。ラスト1Fは驚きの数字だ。いくら1000m戦と言ってもこの数字はすごい。上がり3Fタイムの34秒7は、同週の古馬と比較してもかなり優秀。ダートの新馬戦でこのような内容で走った馬と言えば、東京ダ1600mでラスト2F13秒2-11秒8と、最後に1.4秒も急加速して勝利した、エルコンドルパサーが思い出される。
今回のナスティウェザーはダ1000mだし、最後の加速も0.7秒だから、もちろんエルコンドルパサーには遠く及ばないのだが、並の馬が出せる数字ではない。ラスト2F11秒6-10秒9の数字は、芝の新馬戦なら最低でもAA評価となるだろう。
だからと言って現段階で芝適性があるとは言い切れないが、相当な潜在能力、スピードの持ち主であることは間違いない。今後どのような成長曲線を描くのかとても楽しみだ。また2着バルミーウェザー、3着ワイノナオミも、おそらくラスト1Fの数字は大きく減速していないはずで、ダートで渋い活躍が期待できそうだ。
7月2日(日)函館1R 優勝馬 アガシ 指数±0 評価B
この未勝利戦は前走ベルパッションが勝利した新馬戦で3着のアンバーニードル以外は、前走芝の新馬戦で大敗した馬ばかりが揃った。そのアンバーニードルは断然の1番人気に支持されたが、ここでは新馬戦から一転、好スタートを切って2番手と勝ちに行った分、伸び切れず4着に敗れた。
前走芝組の隙を突いて、1、2着は前走ダートに使われていた本馬とセントキルダだった。本馬は1番枠からやや内に逃げるようにして出遅れ、後方を追走。しかし、道中で位置を押し上げ3角では4番手の外。3~4角の外からスッと先頭に並びかけると、逃げ粘るセントキルダをゴール前で半馬身捉えて勝利した。
初芝でロスのある競馬ながら勝利したことは価値がある。今後の上昇力は期待できそうだ。ただ、このレースは新馬戦で不振だった馬が多く、決着指数も高いものとはならなかった。今後の活躍には大きな上昇が要求される。
7月2日(日)函館5R 優勝馬 ワンブランチ 指数-1 評価B
5番枠からやや出遅れたものの、5頭立てと少頭数だったこともあり、道中は3番手外の良い位置でレースを進められた。序盤はかなりのスローペース。4角からペースが上がり、3~4角で外から勝ちに行った本馬は4角で外に張られたが、大きな不利ではなかった。1頭だけ大きく離され、直線ではヨーイドンの瞬発力比べとなった。本馬はこれをアタマ差で制した。
ラスト2Fは11秒6-11秒8とまずまず。スローペースだったので最後にもうちょっと伸びて欲しいところではあったが、このレースは少頭数で負担の少ない競馬。潜在能力が高いのなら、今後の順調な成長を期待できる新馬戦ではあった。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ナスティウェザーの指数「-11」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.1秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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