【2歳馬ジャッジ】クラシック戦線の主役候補ギャンブルルーム 宝塚記念と同日に古馬を超える上がりを記録

山崎エリカ

6月4週目の2歳馬ジャッジ,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

6月4週目の2歳戦

このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回はクラシック戦線の主役候補と目されるギャンブルルームや、ブリンカー着用で一変したフェンダーなどが出た、6月24日、25日の2歳戦について指数と評価を掲載する。

6月24日(土)東京5R 優勝馬 ヴェロキラプトル 指数-1 評価B
7番枠から五分のスタートだったが、他に先手を主張してくる馬がおらず、じんわりとハナを奪うことに成功。マイペースの逃げ、5F通過63秒4のスローペースに持ち込んだ鞍上の好判断が光った。そのまま直線に入ると後続各馬の手応えが悪い中、本馬は元気一杯の走りで先頭を守る。結局そのまま逃げ切り勝ちを決めた。

ラスト2Fは10秒9-11秒7と大きく減速。上がり3Fタイムの33秒8はまずまずで、3着馬に3馬身差をつけて勝利したことは評価できる。しかし、芝1800mで走破タイム1分49秒3は平凡。最後に大きく減速している点もやはり辛目の評価となる。ただ逃げて初戦を勝利した馬は、内容平凡でも次走折り合う競馬で大きく変わる馬も多数いる。ここからの成長に期待したい。

6月24日(土)東京6R 優勝馬 アスコリピチェーノ 指数-4 評価A
16頭立ての新馬戦。ノーザンファーム生産馬にC.ルメール騎手が鞍上。このパターンは毎度のように1番人気に支持され、人気に応えられないことも少なくない。本馬も単勝オッズ1.7倍の1番人気に支持されていた。

レースは5番枠から五分のスタートを切ったが、ポジションが自然と下がり、そこから外目に誘導して中団、前に壁を作って追走した。しかし、3~4角で外から上がって来る馬がいて、4角で包まれて直線序盤は前が壁。これは厳しいかと思われたが、ラスト2F標識辺りで外に出して進路を確保すると、グイグイ伸びた。最後は2着馬に2馬身半差を付けての快勝だった。

ラスト2Fは11秒6-11秒6と減速せず。上がり3Fタイムの33秒3はこの日の東京芝ではかなり優秀な部類と言える。新馬戦で直線一気の競馬ぶりだった馬は、次走で勝ちに行くと甘くなる面があり、次走に向けては過大評価できないところもある。しかし、素質が相当高い馬であることは間違いない。次走の内容次第ではかなり上を狙える可能性を感じる。

6月25日(日)東京1R 優勝馬 コラソンビート 指数-6 評価A
出走全馬がデビュー2戦目となった2歳未勝利戦。やはりデビュー2戦目となると競走馬たちも気合が入って闘争心が出てくる。新馬戦で脚をタメて敗れたことで、「今度は行かせてみよう」という鞍上の心理もあって、未勝利戦は新馬戦と比べるとペースが上がりやすい。

このレースもまさにそれで、5F通過58秒7の緩みない流れ。本馬は2番枠から二の脚の速さで楽に先頭に立ち、直線に入っても脚色が衰えず、そのまま後続に3馬身差をつけて逃げ切った。なかなか強く、この時期の未勝利クラスとしては良い指数での勝利だった。

ラスト2Fは11秒8-12秒6。上がり3Fタイムは35秒9とさすがに余裕のある内容ではなく、能力を出し切ってのものであることは確かだが、自ら緩みないペースを刻んで2歳のこの時期に芝1600mを好指数勝ちしたことは価値がある。今後も条件が揃った時の一発に注意したい。またこの馬はボンドガールの新馬戦で3着だった。やはりボンドガールはかなり強そうだ。

6月25日(日)東京5R 優勝馬 トーセンクライネ 指数-2 評価A
8番枠からトップスタートを切ったが、外からタガノエクレールがハナを主張するとスッと控えた。道中はその後ろでスペースを作って3番手を追走。コントロールがスムーズで、3~4角で最短距離を進み、スペースを詰め切って逃げたタガノエクレールの内から直線へ。ラスト2Fから逃げ馬を目標にスパートし、ラスト1Fでは一騎打ち。これを3/4差で制した。

ラスト2Fは11秒2-11秒4。減速度合いは少なく、この時期の2歳戦で好位からレースを進めたことを考慮すれば、かなり高い評価をして良さそうだ。走破タイム、上がり3Fタイムがそこまで速かったわけではなく、指数としてはそこまで秀でたものにはならなかったが、レースセンスの高さを含め、高く評価できる点がある。オープンや重賞級の穴馬としての活躍が期待できそうだ。

6月24日(土)阪神1R 優勝馬 フェンダー 指数-7 評価AA
トップスタートを切って、気合を付けてハナを主張。緩みないペースを刻んだまま4角へ向かって行く。後続馬たちは手綱が動いて追われていたが、本馬はまだ抑えたまま。4角を回ってゴーサインが出ると、後続は離されて行く。直線は苦しくなってはいたが、後続も完全にバテており、結果4馬身差の逃げ切り勝ちだった。

前走のヒヒーンが勝利した新馬戦では1番人気に支持されていたが、出遅れて全く能力を出せず10着と大敗。今回はブリンカー着用で見事にスタートを決め、逃げ戦法でまさに一変。能力を出し切れば強いことを証明した。

今回で記録した指数はこの時期の2歳としてはなかなか優秀。5F通過は57秒9と完全なオーバーペースを刻んでの逃げ切り勝ちは、秘めた潜在能力の高さを感じさせる。新馬戦で大敗している馬こそ軌道に乗ればかなり強くなることも多い。現時点ではリーチザクラウンやパンサラッサの小型版のような感じ。大物食いを期待したくなる馬だ。

6月24日(土)阪神5R 優勝馬 チークタイム 指数-1 評価B
4番枠からスタートは五分だったが、鞍上が押してひたすら気合を入れ続けながら、なんとか2番手を確保して追走。しかし、スピードに乗ってからは手応えが良かった。4角で逃げ馬ダズリングレイの外から差を詰めながらも、直線では食い下がられたが、ジワジワ伸び続けて1馬身1/4差で勝利した。

ラスト2Fは11秒5-12秒2と大きく減速。走破タイムもあまり良いとは言えない。ただ忙しいレースぶりから芝1200mが向いていたとは思えない。もっと距離が延びて良さが出てくる可能性が高い。今回の内容は優秀だったとは言えないが、叩かれながら距離が延びて変わっていきそうだ。

6月25日(日)阪神5R 優勝馬 ギャンブルルーム 指数-7 評価AAA
6番枠から好スタートを切ったが、二の脚で置かれて好位を取れなかったため、後方まで位置をスッと下げて内を狙う競馬を選択。最後列ではあったが前から離されずに追走した。最後の直線では各馬が外に出してぽっかり開いた内を突くと、一気に抜け出して先頭。2着に5馬身差をつけて圧勝した。かなりの好指数だった。

ラスト2Fは11秒0-11秒6と減速。さすがにあれだけ突き放したとなれば、余裕残しでの勝利とはならなかった。しかし、上がり3Fタイムの33秒7はこの日の阪神で行われた芝レースでは、古馬を含めて断トツの1位。これはかなり高く評価できる数字だ。

舞台はだいぶ違うが、昨年のリバティアイランドの新馬戦と似たような意味合いの新馬戦だったと言える。このタイプはデビュー2戦目で取りこぼすことも多いが、レースセンスが良く、潜在能力がかなり高いことは確か。今後のクラシック戦線の主役候補になりうる馬だ。

6月24日(土)函館1R 優勝馬 レガテアドール 指数-4 評価B
芝1000mの新馬戦では五分のスタートを切ったが、外枠で前に行き切れず、位置を下げながら外を回る競馬となって能力を出し切れなかった。今回はデビュー2戦目で芝1200m戦。6番枠からここでもスタートは五分だったが、二の脚は速く、内からハナを主張する馬を行かせて、好位の内4番手を追走と脚を溜める形になった。

3~4角で最内から位置を押し上げて、4角では2番手。直線序盤で逃げ馬の内を突いてラスト1Fで先頭に立つと、そのまま押し切って2馬身差で快勝した。指数もまずまず良く、直線で内を突くことできたように、レースぶりに大きな進化を感じる。混戦ならば上のクラスでも面白い存在になるかもしれない。

6月24日(土)函館5R 優勝馬 タヤスロンドン 指数+1 評価B
5頭立ての少頭数の新馬戦。消耗度が低くなりやすいので、後に意外な活躍馬を輩出することも多い。しかし、このレースは頭数の割に、前を行く3頭が馬場状態を考えれば飛ばす展開になった。結果はその3頭の一番外を走っていた本馬が、4角先頭から押し切って3/4差で勝利した。

ラスト2Fは12秒1-13秒1と大きく減速。走破タイムも速いとは言えず、指数も微妙なものとなった。ただ本馬は勝ちに行きながら外を回るロスのあるレースぶりで、着差以上に強いことは確か。このタイプは次走で大きく上昇することもあるが、さてどうなるか。

6月25日(日)函館5R 優勝馬 クールベイビー 指数-2 評価B
1番枠からトップスタートを切ったが、外からピクラリーダがハナを主張するとスッと控えた。道中はその後ろでスペースを作って3番手を追走。3~4角では最短距離を通してスペースを詰め、直線序盤で前2頭の外に出されると、ラスト1Fで抜け出したメイショウマサユメをクビ差捉えて勝利した。

レースセンスがあり、かなり優等生な競馬だった。ラスト2Fは11秒6-11秒8。ラスト1Fで減速はしているが、函館としてはまずまずの数字と言える。また、このレースは6頭立てと少頭数で厳しいレースにならなかった。疲労も少なく、今後も順当に上昇を期待できそう。特筆すべき点もないが欠点も見当たらない。順調に使われながら上を目指す馬となりそうだ。

2023年6月4週目の2歳馬PP指数,ⒸSPAIA


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ギャンブルルームの指数「-7」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも0.7秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

《関連記事》
【2歳馬ジャッジ】ボンドガールは牝馬クラシックで活躍できる逸材 2023年も開幕週から大物出現
【2歳馬ジャッジ】非凡な瞬発力が魅力的なヒヒーン 高額馬ダノンエアズロックは休養後の成長に期待
【2歳馬ジャッジ】ベルパッションは函館2歳チャンピオン候補 非凡な瞬発力とフットワークを評価

おすすめ記事