【天皇賞(春)】日経賞スローペースが攻略のカギ! スタミナ味方にディープボンド、緩い流れならヒートオンビート

勝木淳

天皇賞(春)インフォグラフィック,ⒸSPAIA

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5歳優勢、今年こそディープボンド

伝統ある長距離王決定戦・天皇賞(春)は今年も阪神。1周目外回り、2周目内回りの変則コース。同コースで行われた昨年は前走日経賞3着の菊花賞馬ワールドプレミアが勝利、2着は阪神大賞典を勝ったディープボンド、日経賞2着カレンブーケドールが3着。二度の急坂、使い込んだ馬場とタフな阪神らしく、直近の長距離重賞好走馬が上位を独占した。今年も直近の長距離重賞をしっかりチェックしたいところだ。ここでは京都施行も含め、過去10年間のデータを使用しつつ、前哨戦を振り返る。


過去10年天皇賞(春)人気別成績,ⒸSPAIA


かつては波乱も多かった春の盾だが、近年は比較的平穏。1番人気【3-2-0-5】勝率30%、複勝率50%、2番人気【4-0-2-4】勝率40%、複勝率60%。10年で1着馬7頭が1、2番人気。ディープボンドかタイトルホルダーの2択から入るべきか。以下、3番人気【1-3-1-5】勝率10%、複勝率50%、4番人気【1-1-3-5】勝率10%、複勝率50%までが好成績。5番人気【0-0-0-10】以下は複穴が出るかどうかという程度。昨年も3、1、4番人気だった。


過去10年天皇賞(春)年齢別成績,ⒸSPAIA


年齢別では5歳が【6-3-1-40】勝率12%、複勝率20%と勝率でリード。4歳は【3-2-4-33】勝率7.1%、複勝率21.4%なので、データ上はディープボンドがタイトルホルダーやテーオーロイヤルを上回る。馬券は6歳【1-4-2-28】勝率2.9%、複勝率20%あたりまでか。ただしベテラン7歳以上も【0-1-3-36】複勝率10%。ユーキャンスマイル、マイネルファンロンなどを馬券に入れてもいい。


東西前哨戦が重要

4番人気以内堅調、5歳優勢といった過去のデータから導き出された傾向をつかんだところで、ここからは前哨戦を振り返り、好走馬をしぼってみたい。


過去10年天皇賞(春)前走レース別成績,ⒸSPAIA


昨年の1~3着と同じく、阪神大賞典【3-3-4-48】勝率5.2%、複勝率17.2%、日経賞【3-2-4-42】勝率5.9%、複勝率17.6%の東西ステップレースが着度数別では二強。大阪杯はGⅠ昇格後【1-1-0-2】だが、今年は登録なし。有馬記念など昨秋GⅠ戦線からの直行もなし。まずはこの2レースに絞りたい。


阪神大賞典 ディープボンド 3.05.0

阪神大賞典は有馬記念2着以来だったディープボンドが連覇。長距離での安定感を改めて証明した。今年は1~5着、7着馬の6頭が登録した。レースは上がり馬キングオブドラゴンがハナをとり、アイアンバローズが先行、中団にシルヴァーソニック、ディープボンド、ユーキャンスマイル。マカオンドール、トーセンカンビーナが後方から。

最初の1000m通過1.03.1、中盤1000m1.02.9と超スロー。そこから早めにペースが上がり、最後1000m11.9-11.6-11.6-11.5-12.4とロングスパート型に。ディープボンドは勝負所で以前のように追っつけ通しになりながらも、最後まで止まることなく、ライバルを一蹴。有馬記念2着などロングスパートでスタミナを問う流れには高い適性がある。タイトルホルダーとの相性はよさそうだ。

2着アイアンバローズは好位からロングスパートに対応。シルヴァーソニックはディープボンドと同じような位置からインを通って先に動いた。スタミナ勝負でディープボンドには見劣ったが、3000m以上3戦連続3着と適性は示した。遅れ差し気味に最後突っ込んできたのがマカオンドール。3000m以上初出走の万葉S勝ちと長距離への適性はあるものの、重賞の流れで置かれてしまったのは痛い。前走を経験して、もう少し流れに乗れるかどうか。


過去10年天皇賞(春)前走阪神大賞典組着順別成績,ⒸSPAIA


阪神大賞典の着順別成績では1着が【2-1-2-4】勝率22.2%、複勝率55.6%と突出。ディープボンド、待望のGⅠ初制覇に王手だ。2着以下はポツポツと好走馬が出るといった程度で横一線。強調できるのはアイアンバローズ。1周目正面スタンド前で外からマンオブスピリットに来られてスイッチが入る形になり、スタミナをロス。それでも前で堂々立ち回り、ディープボンド以外には先着。充実期にあるとみたい。


日経賞 タイトルホルダー 2.35.4

タイトルホルダーは有馬記念5着。その走破時計は2.32.5。パンサラッサが飛ばし、前半1000mは推定59.5。日経賞は自ら逃げ、前半1000m推定1.03.5と4秒も遅いスローペースながら走破時計は2.9差。日経賞の価値は低くはない。

なにより、ある程度飛ばして持久力勝負に持ち込むスタイルだったタイトルホルダーが、後続を引きつける緩い流れを演出。最後の1000m12.3-12.0-11.7-11.2-11.8と完全に上がり勝負に持ち込んだ。瞬発力勝負に挑み、自身の上がり34.7で後ろを封じたところに進化が見える。

本番でディープボンドを封じるヒントはこのレースにあるのではないか。はたして同じように緩い流れに持ち込めるかどうか。2周目は内回り。後ろの仕掛けも本番は早くなる。


過去10年天皇賞(春)前走日経賞組着順別成績,ⒸSPAIA


では日経賞の着順別成績はどうだろう。1着【1-1-1-6】勝率11.1%、複勝率33.3%。タイトルホルダーも悪くはない。また該当馬がいる3着【1-1-0-4】勝率16.7%、複勝率33.3%に注目。ヒートオンビートは阪神【1-6-0-2】と安定感抜群。徐々に重賞の流れにも慣れつつある。3200mに不安がないこともないが、タイトルホルダーが緩い流れを演出すれば、再度好走できる。また4着以下は確率がグンと下がり、巻き返しにくい。

最後に注目の上がり馬テーオーロイヤルのダイヤモンドSは【0-1-0-14】。好走は15年フェイムゲーム。そもそも主要ローテではないので数字を気にする必要はないものの、今年、似た連戦連勝の過程で大阪杯に挑んだジャックドールは5着。GⅠ通用のハードルは高いかもしれない。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース個人オーサーを務める。共著『競馬 伝説の名勝負』シリーズ全4作(星海社新書)。


天皇賞(春)インフォグラフィック2,ⒸSPAIA



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