【天皇賞(秋)】アーモンドアイなど歴戦の名馬が制した一戦!今年は牡馬か?牝馬か?3歳馬か? 歴史を振り返る

緒方きしん

天皇賞(秋)過去5年の優勝馬,ⒸSPAIA

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屈指の好メンバーが揃った一戦

菊花賞はタイトルホルダーが逃げ切り勝ち。早逝したドゥラメンテの産駒であるタイトルホルダーが、二冠馬の父に菊のタイトルをプレゼントした。また、横山典弘騎手・横山武史騎手による、親子での菊花賞逃げ切り制覇が達成された。

今週は、天皇賞(秋)。現役屈指の好メンバーが揃い、非常に盛り上がる一戦となった。コントレイルVSグランアレグリアVSエフフォーリア。視点を変えれば、福永騎手VSルメール騎手VS横山武史騎手とも言える。さらにカレンブーケドールやワールドプレミア、モズベッロとライバルたちも面白い存在が集まった。

古くはタマモクロスやスーパークリーク、ヤエノムテキらが勝利。近年もジャスタウェイ、モーリス、キタサンブラックなどが制した伝統の一戦。スピード・スタミナを兼ね備えた名馬が、栄光を摑み取ってきた。今回は、天皇賞(秋)の歴史を振り返る。

ここ数年は一番人気が安定

ここ5年において、1番人気は4勝。唯一1番人気が敗れた2018年も、2番人気のレイデオロが制しているように、近年は非常に人気馬が安定感しているGIと言える。3着以内まで範囲を広げても、2017年3着に食い込んだレインボーラインが13番人気と大きく目立つが、それ以外の好走馬は7番人気以内と平穏な決着。三連単配当も、2020年41.3倍、2019年88.6倍と、ここ2年は二桁台に収まっている。

天皇賞(秋)過去5年間の優勝馬,ⒸSPAIA


しかし1番人気が安定しているのは、1番人気ラブリーデイが勝利した2015年を含めたここ6年ほどで、それ以前には寧ろ1番人気が好走しつつもなかなか勝てないという時代が続いていた。2012年エイシンフラッシュ、2013年ジャスタウェイ、2014年スピルバーグと、3年続けて5番人気馬が勝利。2011年には、7番人気トーセンジョーダンが勝利している。1番人気は2014年イスラボニータが3着、2013年ジェンティルドンナが2着、2012年フェノーメノが2着と惜敗。中穴を狙うタイプの単勝派にとっては絶好のレースだったのではないだろうか。

2000mという、マイル路線からも中長距離路線からも参戦がある条件で、メンバーも充実する傾向にある。2019年、2020年で連覇を達成したアーモンドアイはどちらも前走はマイルの安田記念。しかし2020年2着のフィエールマンは天皇賞(春)を制してからの直行で好走している。

マイルG1を4勝し2000m以上は1戦未勝利だったモーリスが制した翌年に、菊花賞や天皇賞(春)を勝利しマイル未経験のキタサンブラックが勝利を収めた。マイルG1馬から菊花賞馬まで、幅広い才能の激突を見届けられるのも醍醐味のひとつだろう。

悲運の名馬と、不屈の名馬

1998年の覇者は、オフサイドトラップ。オフサイドトラップは、94年に三冠を達成したナリタブライアンと同世代の素質馬だった。しかし3歳(現在表記)の夏に屈腱炎を発症。年末に復帰したものの、翌年には再発、さらには現6歳シーズンに3度目の屈腱炎を発症してしまう。

それでも7歳に突入し、重賞未勝利のまま現役を続行。復帰戦から3戦連続2着と好走し、続くエプソムCでは3着に食い込むと、蛯名騎手に乗り替わりとなった七夕賞で重賞初制覇を達成した。さらにその次走で新潟記念も制すると、勢いそのままに天皇賞(秋)を制した。

この年の天皇賞(秋)は、別の理由でも知られている悲劇のレースでもある。稀代の逃げ馬サイレンススズカが4コーナー手前で左前脚を骨折。安楽死の処置がとられたのだ。

サイレンススズカは、前走の毎日王冠でエルコンドルパサーやグラスワンダーらを相手に快勝。この舞台でも人気を集め、ぐんぐんと後続を引き離す中での悲劇だった。名手・武豊騎手が惚れ込んだその快速ぶり。今でも「サイレンススズカの産駒が見たかった」という声がきかれるほど、伝説的なスピードを持つ名馬だった。

オフサイドトラップはどうしても、悲劇のレースを勝利した馬として覚えられがちだ。しかしオフサイドトラップ自身は3度の屈腱炎を乗り越えベテランで花を咲かせた不屈のドラマチックホースであることは忘れてはいけない。紛れもなく、不屈の名馬である。

また、翌年の天皇賞(秋)では、マイル路線組と中長距離路線組が激突する2000m戦らしい結果となった。1着はダービーや天皇賞(春)を制し続くジャパンCも勝利する、中長距離が得意なスペシャルウィーク。3着は安田記念を制し直行してきたエアジハードで、この次走のマイルCSでも勝利をあげている。

前年に引き続き、2着はステイゴールド。前年から有馬記念3着や宝塚記念3着、天皇賞(春)5着といった実績を積み上げての参戦だったが、この時もまだ主な勝ち鞍は阿寒湖特別(900万下)という状況だった。翌年・翌々年の天皇賞(秋)では連続7着と敗れてしまうものの、引退レースの香港ヴァーズで勝利をあげた。種牡馬となってからの活躍は言うまでもないだろう。

新たな時代が幕をあけるのか

今年も、マイル路線の馬や中長距離路線の馬が集まり、非常に興味深いメンバー構成となった。ステイゴールドのように、天皇賞(秋)では、2年連続で同じ着順というケースも見られる。

連覇で言えば、アーモンドアイやシンボリクリスエス。連続2着はオグリキャップやセキテイリュウオー、ジェンティルドンナ等、連続3着はイスラボニータが記録した。

今年は昨年の1〜3着馬が未出走。1、2着のアーモンドアイ・フィエールマンが引退したように、時代の移り変わりを感じる。今年での引退を表明している馬もいるが、一方で来年以降もこの舞台でお目にかかれそうな馬もいる。

新しく天皇賞(秋)で連覇や連続2着など好走するような存在が現れるのか、どうなのか。広がる未来に想いを馳せつつ、今年の豪華メンバーが集う一戦を堪能したい。そして、未勝利戦でもGⅠレースでも変わらないが、全頭が無事にゴールすることを、改めて強く願う。

ライタープロフィール
緒方きしん
競馬ライター。1990年生まれ、札幌育ち。家族の影響で、物心つく前から毎週末の競馬を楽しみに過ごす日々を送る。2016年に新しい競馬のWEBメディア「ウマフリ」を設立し、馬券だけではない競馬の楽しみ方をサイトで提案している。好きな馬はレオダーバン、スペシャルウィーク、エアグルーヴ、ダイワスカーレット。

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