【スワンS】このコースは逃げ馬、距離短縮組! 狙ってみたい3歳勢とファーストフォリオ

勝木淳

スワンSインフォグラフィック,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

逃げ馬優位の傾向

今年はマイルCSと同じ阪神で行われるスワンSは、舞台がそろったことで本番につながるだろうか。そういった期待を抱きたくなるが、阪神芝1400mと1600mでは大きな違いがある。1400mは内回り、1600mは外回り。フィリーズレビューと桜花賞の関係を想起すればいい。この10年、スワンS組はマイルCSでは【0-4-2-34】。京都外回りだった頃からずっと前哨戦のわりに……という結果が続く。

ともあれ、1400m巧者、本番よりここ照準という組も多く、1400mの重賞は見ごたえたっぷりの激戦が多い。ここでは過去10年、阪神芝1400m古馬重賞25レースのデータを用いて、コース傾向をつかんでいきたい。


過去10年同条件人気別成績,ⒸSPAIA


阪神芝1400m重賞というと、混戦、難解、波乱含みといった印象が強い。内回り1400mに多頭数となれば馬券の難易度は非常に高く、1400m巧者とそうでない馬との力関係もはかりにくい。1番人気は【5-1-4-15】勝率20%、複勝率40%。25レースで5勝となると、やや頼りなさを覚える。

伏兵の台頭を期待したくなるものの、4番人気以内は16勝なので、1着は人気馬がさらう可能性は高い。しかし、上記のイメージ通り、7番人気【3-2-2-18】勝率12%、複勝率28%や10番人気以下【3-3-5-18】勝率1.6%、複勝率5.8%など波乱含みであることは確かで、人気馬に絞りすぎず、幅広く検討したほうがよさそうだ。


過去10年同条件脚質別成績,ⒸSPAIA


では脚質面の好走パターンはどうだろうか。位置取り別成績をみると、まず逃げ【8-0-1-16】勝率32%、複勝率36%。勝ち切る傾向も合わせて逃げは強調したい。古馬重賞でこうも逃げ馬が強いレースは珍しい。内回り、かつ出走馬に短距離型が多くいるため、ハイペース想定になるレースが多数みられる。その割にいざスタートすると、隊列は予想外にすんなり決まり、逃げ馬が短い直線を利して一気に逃げ切るという場面もある。

18年阪急杯と阪神Cはいずれもダイアナヘイローがマイペースに持ち込んで逃げ切った。7、11番人気だった。今年の阪急杯はレシステンシアがスピードの違いでハナへ行き、前後半600m34.0-33.8、1.19.2のコースレコードで圧勝した。ここもまず逃げ馬を探そう。

差し馬勢は中団【9-11-9-135】勝率5.5%、複勝率17.7%、後方【4-3-8-115】勝率3.3%、複勝率11.5%と確率的には狙いにくく、それなら先行【4-11-7-75】勝率4.1%、複勝率22.7%と逃げ馬の組み合わせが効率的だ。内回りらしく前有利と考えよう。


浮上するのは3歳勢にファーストフォリオ

ここからは前走距離に注目し、具体的にどんな戦歴の馬を狙えばいいか考えてみたい。


過去10年同条件前走距離別成績,ⒸSPAIA


前走距離別成績では1400m未満の延長組【6-6-3-111】勝率4.8%、複勝率11.9%に対して、1400m【7-7-7-85】勝率6.6%、複勝率19.8%や1400m超だった短縮組【12-12-15-145】勝率6.5%、複勝率21.2%の成績がいい。やはり最後に急坂が待つ阪神芝1400mは短距離としてはタフなコースなので、同距離、短縮組を狙いたい。

同距離だと昨年の阪神C9着以来のフィアーノロマーノ、前走浦和のオーバルスプリント11着だったカツジなどがいる。前者は19年阪神C、20年阪急杯で連続2着、後者は昨年のスワンS勝ち馬。いずれも1400m巧者なので見限れない。


過去10年同条件距離短縮組前走着順別成績,ⒸSPAIA


では前走が1400m超だった短縮組について詳しくみていこう。まずは着順別成績。前走1着【3-2-0-12】勝率17.6%、複勝率29.4%、前走2着【0-1-3-4】複勝率50%が当然いいとして、前走5着【2-0-3-8】勝率15.4%、複勝率38.5%、前走6~9着【4-1-5-33】勝率9.3%、複勝率23.3%にも好走ゾーンがある。着順がよかった馬は買いやすい反面、人気になる。妙味という意味では前走5~9着だった、いい感じに負けてきた馬に注目したい。

当然前走1600m戦2着のルークズネスト、札幌芝1500mで3勝クラスを突破した良血馬ファーストフォリオには注目するとして、NHKマイルC9着から立て直したホウオウアマゾンも阪神で重賞Vがあり、面白い存在になりそうだ。


過去10年同条件距離短縮組前走着順別成績,ⒸSPAIA


短縮組の前走での位置取りについて調べると、先行【4-3-3-42】勝率7.7%、複勝率19.2%、中団【4-5-9-48】勝率6.1%、複勝率27.3%あたりがよさそう。後方【3-3-2-40】勝率6.3%、複勝率16.7%も悪くはないが、なにせ本番の阪神芝1400m重賞の傾向が逃げ、先行優位。そうなれば、前走で後方だった馬は狙いにくい。1400m超である程度流れに乗った馬でないと、距離短縮での先行は難しい。前走GⅠで2番手とスピードを見せたホウオウアマゾン、中団だったルークズネスト、ファーストフォリオなどデータに該当する短縮組を狙っていきたい。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1995-1999 90年代後半戦』(星海社新書)。


スワンSインフォグラフィック2,ⒸSPAIA



《関連記事》
デアリングタクト、コントレイルも敗戦の春競馬 「雨の日の競馬は荒れる」は本当なのか
上手な付き合い方のコツは?ルメール騎手の「買える、買えない条件」
「関東馬の復権」「G1のルメール・川田・福永理論」 2021年上半期のG1をデータで振り返る

おすすめ記事