【アルテミスS】新馬直後フォラブリューテらより「キャリア2戦」が狙い目 漂う波乱の気配、その使者は?
勝木淳
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例年は上位人気堅調
暮れの2歳女王決定戦に向けた戦いはアルテミスSから本格化する。このレースからは19年を除き、14~18年、そして昨年のソダシ、ユーバーレーベンなど阪神JFで馬券になる馬を多数送る。アルテミスSは今や翌年の牝馬クラシック戦線における主要レースのひとつといっていい。今年も素質馬が集結、レベルの高い一戦になりそうだ。ここでは全9回のデータをもとに傾向を分析していこう。
まずは馬券傾向を人気別成績から。1番人気【4-2-0-3】勝率44.4%、複勝率66.7%、2番人気【2-3-1-3】勝率22.2%、複勝率66.7%。素質馬が集まるレースらしく、上位人気は堅調。ここ2年は1、2番人気がワンツー。
関西馬が1番人気だと【4-1-0-0】と安定感があるが、関東馬の1番人気は【0-1-0-3】。馬券圏外だった3頭はいずれも関東馬だ。フォラブリューテやロムネヤが1番人気になった場合は注意したい。
ここから分かるように東西別では関西馬【6-3-6-34】勝率12.2%、複勝率30.6%、関東馬【3-6-3-78】勝率3.3%、複勝率13.3%と関西馬が圧倒的優位。関西馬を上位に、関東馬を連下にという組み合わせがよさそうだ。
2歳重賞らしいデータに枠番別成績がある。キャリアが浅く、レース経験が少ない場合、揉まれると能力を出し切れないことがある。そのため7枠【2-0-2-17】勝率9.5%、複勝率19.0%、8枠【4-2-0-16】勝率18.2%、複勝率27.3%と外枠の成績がよく、1枠【1-0-0-13】勝率7.1%、2枠【1-2-2-12】勝率5.9%で内枠劣勢。2枠は複勝率29.4%で2、3着に来る確率は高いものの、単複回収値は80、83。8枠は465、112なので、穴も外枠から出ており、揉まれる心配が少ないアドバンテージは大きい。
狙いはキャリア2戦、未勝利直後
次はキャリアの浅さに注目、キャリア別成績からこのレースの好走パターンについて考えてみたい。
近年、素質馬はレースを使わない傾向が強く、新馬勝ち直後にいきなり重賞挑戦というケースが目立つ。ところがキャリア別成績をみると、1戦は【2-3-1-33】勝率5.1%、複勝率15.4%と目立たない。いいのは2戦【6-4-5-43】勝率10.3%、複勝率25.9%。昨年はソダシも含め、上位3頭はいずれもここに該当。今年の上位人気が想定される馬にはキャリア1戦組がズラリと並んでおり、新馬直後である点に注意が必要だ。今年は例年よりも波乱の気配が漂う。
キャリア2戦組について調べるためにも前走クラス別成績に注目。1勝クラス、オープン、重賞経由もいるが、未勝利【4-2-3-19】勝率14.3%、複勝率32.1%が目立つ。ベルクレスタ、サークルオブライフ、シンティレーションなどがここに該当。新馬直後のフォラブリューテ、ロムネヤら有力馬との力関係は慎重に考えたい。
前走未勝利組についてその距離について調べると、今回と同じ1600mは【1-1-2-11】勝率6.7%、複勝率26.7%とそこまで強調できない。特筆すべきは1800m【3-0-1-3】勝率42.9%、複勝率57.1%。これをキャリア2戦に絞ると【3-0-1-1】。これに該当するのは札幌芝1800mの未勝利戦を逃げ切ったシンティレーションだ。
では同じように前走新馬の距離別成績をみる。こちらは未勝利とは対照的で、1800mだと【0-0-0-5】で好走なし。1600mが【2-2-1-17】勝率9.1%、複勝率22.7%と好成績。新馬、未勝利で傾向が異なるところは留意したい。
ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1995-1999 90年代後半戦』(星海社新書)。
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