【天皇賞(秋)】コントレイル、グランアレグリア、エフフォーリア 三強が挑むそれぞれの偉業、可能性が高いのは?

勝木淳

天皇賞(秋)インフォグラフィック,ⒸSPAIA

ⒸSPAIA

皐月賞馬の同年天皇賞(秋)は

3歳エフフォーリア、4歳コントレイル、5歳グランアレグリア。三世代のチャンピオン級が集い、春の盾を制したワールドプレミア、サマー2000シリーズチャンピオンのトーセンスーリヤら、豪華絢爛な秋のご馳走がもうすぐやってくる。

凱旋門賞が上旬にあるため、年によってはやや寂しいこともあるが、今年は秋特有の寂寥感が吹き飛ぶぐらい話題に事欠かない。ここでは過去10年間のデータを使用し、それぞれの偉業達成の可能性に迫る。


天皇賞(秋)過去10年人気別成績,ⒸSPAIA


人気別成績をみると、この10年1番人気は【5-2-1-2】勝率50%、複勝率80%。どの馬が1番人気なのか読みにくいが、傾向通りだと1番人気は堅実。ただ、2番人気は【1-3-2-4】勝率10%、複勝率60%、3番人気は【0-1-1-8】複勝率20%と一気に信頼度が落ちる。とはいっても、近年の天皇賞(秋)は出走馬が分散傾向にあり、三強という図式は珍しく、これが今年そのまま当てはまるとは限らない。


天皇賞(秋)過去10年年齢別成績,ⒸSPAIA


エフフォーリアの3歳は【0-1-1-9】と苦戦。19年皐月賞馬サートゥルナーリア(6着)など近年はイマイチ。84年グレード制導入以降では皐月賞馬の同年天皇賞(秋)挑戦は4頭で、95年ジェニュイン2着が最高。この4頭の日本ダービー着順は2、6、2、4着。エフフォーリアと同じダービー2着馬2頭は天皇賞(秋)で2、3着。また、3歳で秋の盾を制したのは96年バブルガムフェロー、02年シンボリクリスエスの2頭いる。好走する下地はある。

主力になるはずの4歳は【3-6-5-31】勝率6.7%、複勝率31.1%と好走はするものの、勝率が低い。5歳が【7-3-3-36】勝率14.3%とリード。このデータではコントレイルよりグランアレグリアが優勢だ。


スピード競馬への対応力ならグランアレグリア

コントレイル、グランアレグリアについて分析するために、ここからは前走成績に関するデータを掘り下げていこう。


天皇賞(秋)過去10年前走クラス別成績,ⒸSPAIA


格式高い天皇賞らしく、前走がGⅢ以下だと【0-0-0-12】。前走はGⅡ【7-4-6-92】勝率6.4%、複勝率15.6%、GⅠ【3-6-4-28】勝率7.3%、複勝率31.7%に絞られる。


天皇賞(秋)過去10年前走GⅠ組レース別成績,ⒸSPAIA


前走GⅠ組の内訳をみると、同じ東京競馬場の安田記念が【2-2-0-4】勝率25%、複勝率50%と目立つ。ただ、この2勝はいずれもアーモンドアイである点には注意。

そのアーモンドアイに先着した経験があるグランアレグリアは1200、1600、2000mの三階級GⅠ制覇の偉業がかかる。春の大阪杯は馬場に泣いたが、今回は得意の東京。(おそらく日本では)ラストチャンスとなる。ちなみに2000m未勝利馬の天皇賞(秋)制覇は84年以降7頭(プレクラスニーの繰り上がり含む)。アグネスデジタル、ジャスタウェイ、モーリスなど名馬がズラリ。東京芝2000mの天皇賞(秋)は安田記念と親和性があるようにマイル戦のラップ構成に近い。

一方、コントレイルの大阪杯から直行というのはGⅠ昇格以降例がない。前例がない以上、データによる判断は困難だ。三冠馬の天皇賞(秋)参戦は意外と少なく、84年以降3頭。84年ミスターシービー1着、85年シンボリルドルフ2着、95年ナリタブライアン12着。ディープインパクトやオルフェーヴルは凱旋門賞に挑戦したため、久々に三冠馬が天皇賞(秋)に出走する。コントレイルはミスターシービー以来の勝利となるだろうか。課題はマイル戦に近い東京芝2000mのスピード競馬への対応だろう。


伏兵ならカレンブーケドール

さて、ここからは三強以外に割って入ってくる馬がいるかどうかという視点で進めていく。まず、前走天皇賞(春)【0-1-1-4】複勝率33.3%からワールドプレミア。84年以降、同一年の春秋天皇賞制覇はタマモクロス、スペシャルウィーク、テイエムオペラオー、メイショウサムソン、キタサンブラックの5頭が達成。阪神芝3200mの道悪という厳しい競馬でしっかり伸びたスタミナは、道悪や展開が厳しくなった際にはチャンスはある。馬場状態と流れを見極めたい。


天皇賞(秋)過去10年前走宝塚記念組前走人気別成績,ⒸSPAIA


19年ジャパンCからずっと牡馬相手の重賞で善戦してきたカレンブーケドールは前走宝塚記念【1-3-3-16】勝率4.3%、複勝率30.4%。その人気別成績をみると、上位人気だった馬に良績が集中。宝塚記念で人気になるような馬でないと通用しない。カレンブーケドールは当時3番人気。3番人気は【0-2-0-2】複勝率50%。先行力とGⅠでも崩れない安定感で一発を狙う。


前走GⅡ組で狙いたいのは

最後に前走GⅡ組から毎日王冠、札幌記念を取りあげる。


天皇賞(秋)過去10年前走毎日王冠組前走人気別成績,ⒸSPAIA


前哨戦である毎日王冠からは3着ポタジェ、5着カイザーミノル、6着サンレイポケット、10着カデナ、13着ラストドラフトが登録。ここは着順別成績を見ると、ポタジェの3着が【1-0-2-3】勝率16.7%、複勝率50%。5着以下は【1-1-1-23】とやや厳しい。さすがにこのメンバーではカイザーミノル以下は実績面で見劣る。


天皇賞(秋)過去10年前走毎日王冠組前走人気別成績,ⒸSPAIA


手ごろな間隔で挑める札幌記念はもっと明らかで、着順別成績では2着以内【2-1-0-4】、3着以下【0-0-0-9】。3着ペルシアンナイト、6着ユーキャンスマイルは着順的にも苦しい上に6歳以上。さすがにここでは厳しいだろう。

ライタープロフィール
勝木 淳
競馬ライター。競馬系出版社勤務を経てフリーに。優駿エッセイ賞2016にて『築地と競馬と』でグランプリ受賞。主に競馬のWEBフリーペーパー&ブログ『ウマフリ』や競馬雑誌『優駿』(中央競馬ピーアール・センター)にて記事を執筆。Yahoo!ニュース公式コメンテーターを務める。共著『競馬 伝説の名勝負 1995-1999 90年代後半戦』(星海社新書)。


天皇賞(秋)インフォグラフィック2,ⒸSPAIA



《関連記事》
デアリングタクト、コントレイルも敗戦の春競馬 「雨の日の競馬は荒れる」は本当なのか
上手な付き合い方のコツは?ルメール騎手の「買える、買えない条件」
「関東馬の復権」「G1のルメール・川田・福永理論」 2021年上半期のG1をデータで振り返る

おすすめ記事