【2歳馬ジャッジ】好勝負演じたトータルクラリティとコートアリシアン 新潟2歳Sで世代屈指の能力を再確認
山崎エリカ
ⒸSPAIA
8月4週目の2歳戦
このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は新潟2歳Sで世代トップ級の活躍が期待できる内容をみせた1、2着馬トータルクラリティ、コートアリシアン、札幌で後々の活躍が期待できるGⅠ馬ミッキークイーンの娘ミッキーマドンナなどが出た、8月24日、25日の2歳戦について指数と評価を掲載する。
8月24日(土) 新潟5R 優勝馬 マピュース 指数±0 評価B
全体的にスタートの遅い馬が多かった一戦で、結果2着のエルムラントがじわっとハナを取るとすぐに隊列が固まってしまった。同馬がやや後続を引き離して逃げていたが、ペースは速くなかった。エルムラントが3馬身差のリードで最後の直線を迎え、完全に逃げ切り態勢だったが、2番枠から出遅れて後方2~3列目の最内を追走していたマピュースが前残りの流れをクビ差で差し切った。
本レースの指数はかなり平凡なものだったが、本馬は出遅れの不利、前残りの流れを差し切ったことは価値が高い。またレース後コメントでは「ダート血統なのでデビューはダートを予定していたが、急遽芝に変更した」とのこと。
本馬の本質が血統通りにダートならいずれダート路線に転向するときに、新馬戦の芝経験がダートでの上昇度を加速させるだろう。なかなか面白い馬に成長していきそうだ。
8月25日(日) 新潟5R 優勝馬 ゴーソーファー 指数-1 評価B
7番枠から五分のスタートを切り、じわっとハナを主張して主導権を握った。そのままスローペースに持ち込み、1馬身半ほどのリードで直線へ。外差し有利の馬場で直線序盤は外差し勢が伸びたが、残り300m過ぎで追われるとリードを広げて2馬身半差。ラスト1Fでもその差を維持して2馬身半差で完勝した。
しかし、上がり3Fタイムは34秒4。ラスト2Fは11秒1-11秒7。走破タイムもそこまで速くない。結果として着差のわりに平凡な指数となった。
ただ逃げて新馬戦を勝利した馬は、レース内容が平凡でも次戦で大きく上積みを見せることがある。特にその本質が瞬発力型の差し馬だったときは、大きく上昇することもある。ゴーソーファーは新馬戦の走りが高く評価できるものではなかったが、次走どう変わってくるかという楽しみはある。
8月25日(日) 新潟6R 優勝馬 マイエレメント 指数-5 評価A
10番枠から五分のスタートを切り、好位の外目を追走。力みながらの追走で頭を持ち上げてしまいそうだったが、何とか我慢させて3列目の外で3角へ。3~4角はスムーズに折り合って3列目の外を維持して直線へ。ラスト3Fでさらに外に誘導され、残り300m付近で馬なりのまま堂々の先頭。そこから追い出されるとフラつく場面もあったが、脚色は衰えず2馬身半差で完勝した。
2着馬に2馬身半差、3着以下にもしっかりとした差をつけており、上がり3Fタイム33秒3もそれなりに優秀。なかなか良い指数での新馬勝ちとなった。
ラスト2Fは10秒8-11秒5。5月生まれで幼さが残る走りではあったが、そこまで余裕があったわけではないだろう。多少疲れも残りそうな内容だった。大事に使って大きな成長を期待したい。
8月25日(日) 新潟11R 優勝馬 トータルクラリティ 指数-13 評価AA
9番枠からまずまずのスタートだったが、そこからコントロールして好位の外目を追走。道中は我慢させ、折り合いに専念。3~4角でペースが落ちたが、ここでもコントロールして3列目の外。直線序盤で2列目に馬なりで上がり、ラスト2Fで追い出されると堂々の先頭。そこでやや刺さり、この隙に外からコートアリシアンに半馬身ほど前に出られてしまった。しかし、一騎打ちとなったラスト1Fで、最後に同馬を差し返して半馬身差で勝利した。
本レースは新馬戦時の評価がAAだった馬が3頭出走していた。その内の2頭がトータルクラリティとコートアリシアンだ。トータルクラリティは新馬戦のラスト2Fが11秒4-10秒9と驚きの数字を記録しての高評価。以前なら新馬戦の時点でダービー当確とも言えるような数字だが、昨秋以降は以前と計測法が変わってしまったことで、その価値にはやや疑念が湧いている。
しかし、ラスト2F11秒4-10秒9は重賞級の価値があるということを確認できたという点で、今回のトータルクラリティの勝利はありがたかった。また5着のジョリーレーヌも新馬戦の走破タイムは平凡だが、ラスト2F11秒4-10秒9を記録していた。今回、トータルクラリティと明暗が分かれた理由は、同馬は先行して記録した数字に対して、ジョリーレーヌは差して記録したものだったこと。この点を再確認できたことも今後に向けては大きかった。
新馬戦がAA評価ながら、今回凡退したのがスターウェーブ。当コラムでも記したように、新馬戦の内容が疲れを残しやすいものだった点が懸念材料だった。ゆえにある意味、予想どおりの敗戦だった。今回の敗戦は能力によるものではなく、いずれ巻き返して上昇を見せるだろう。
2着コートアリシアンは新馬戦で大きなロスがありながら好指数を記録した馬。今回は上積み必至で勝利する可能性が高いと見ていた。しかし、勝ち馬の後ろのいい位置を取っていたものの、今回も出遅れ後に位置を取りに行ったり、折り合いに苦労したりする場面があり、そのぶん最後は苦しくなった。
コートアリシアンが記録した指数は、それでも現2歳世代の牝馬芝部門では1位のもの。今後は折り合い面も改善されていくだろうし、世代トップ級の活躍は必至だ。
今回トータルクラリティが記録した指数は、前週のクローバー賞でニタモノドウシが記録した数字と並び、世代トップタイ。秋以降になればこの数字を上回る馬も多々現れるだろうが、トータルクラリティもさらなる成長を見せ、世代トップ級の活躍をしてくれるだろう。
8月24日(土) 中京5R 優勝馬 ショウナンラフィネ 指数-3 評価B
9番枠からトップスタートを決めて先頭へ。外枠各馬の行きっぷりも良かったが、すぐに2角があったことでしっかりハナを取り切り、マイペースに持ち込んだ。3~4角でも大きく隊列が変わらないまま直線へ。直線序盤で2番手外のランフォースマイルが負かしにくるが本馬もなかなか止まらない。ラスト1Fでショウナンラフィネとランフォースマイルの差は半馬身ほどあったが、最後までその差は詰まらずゴールした。
走破タイムは悪くなく3着以下には着差がついた。指数も悪くないものとなった。ショウナンラフィネは次戦、差す競馬でどれだけ上昇するか、それとも逃げてこそ能力を出せる馬なのか。そこで大きく評価が変わりそうだ。
8月25日(日) 中京5R 優勝馬 クラウディアイ 指数-4 評価A
8番枠から好スタートを決めて3番手を追走。道中は逃げ馬の後ろを追走して、3~4角でじわっと逃げ馬との差を詰めていった。直線序盤で各馬が外へと広がっていくなか、空いた内に入り込み、一気にスパート。残り300mで先頭に立つと、しぶとく伸びて1馬身3/4差で勝利した。馬体が他の馬たちよりもひと回り小さく、キビキビした走りを見せていた。
上がり3Fタイム34秒1はまずまずだが、芝2000mの新馬戦でラスト2F11秒1-11秒1はなかなか評価できる。現時点では世代トップ級にはやや足りない印象もあるが、使われながら力をつけ、小柄ながら活躍したかつてのステイゴールドのような成長を期待したくなる。
8月25日(日) 札幌5R 優勝馬 ミッキーマドンナ 指数-4 評価AA
9番枠から五分のスタートで中団中目を追走。向正面でコントロールされながらじわっと上がり、3~4角で中目から外に誘導。そこから進出して2列目の外から直線へ。直線序盤の伸びが微妙でこれは届かないかと思われたが、何とか届いたところがゴールだった。
このレースは2着レッドシュテルンとアタマ差だが、3着馬には2馬身半差、4着馬には6馬身差をつけており、指数はなかなかのものとなった。しかし、上がり3Fタイム34秒6は、同日札幌1R・未勝利戦の上位入線馬と比較すると決して速いとは言えない。ラスト2Fは11秒5-11秒5。長く良い脚は使ったが、そこまでトップスピードが速かった印象はなかった。
しかし、本馬は今回、単勝オッズ1.5倍の圧倒的支持を集めたように、母はオークス、秋華賞を勝利し、古馬になってからも活躍したミッキークイーン。半姉はデビュー戦を好指数で勝利し、今年の愛知杯を優勝したミッキーゴージャスだ。
ミッキークイーンは芝短距離では持ち味が生きず、距離が延びてから上昇した。ミッキーゴージャスも愛知杯では向正面から押し上げていく競馬で、長く良い脚を使って優勝。おそらくミッキーマドンナも姉のようなスタミナ型の馬と見ている。
今回の新馬戦の内容だけの評価ならA評価が妥当も、距離が延びての伸びしろが大きそうなことを考慮して、AA評価とした。
※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)トータルクラリティの指数「-13」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも1.3秒速い
ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。
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