【2歳馬ジャッジ】ナチュラルライズとピコチャンブラックが優秀な内容でAAA 大きな舞台での活躍に期待

山崎エリカ

7月2週目の2歳馬ジャッジ,ⒸSPAIA

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7月3週目の2歳戦

このコラムでは古馬のレースと比較しながら2歳戦の指数を算出し、出走馬を評価していく。今回は福島で圧倒的な強さを見せたピコチャンブラック、札幌でヤマニンウルスと同等の高指数を記録したナチュラルライズなどが出た、7月20、21日の2歳戦について指数と評価を掲載する。

7月20日(土) 福島5R 優勝馬 ピコチャンブラック 指数-7 評価AAA
7番枠からまずまずのスタートを切り、コントロールしながらハナを主張して先頭に立った。向正面序盤でもコントロールして乗られており、5F通過は63秒7とかなりのスローペース。3角手前から徐々にスピードを上げていき、3~4角では苦しくなる馬も出てきたが、本馬は手応えが良かった。4角手前で軽く気合いをつけられると、そこから後続を引き離して直線序盤では3馬身差。ラスト1Fでさらに差を広げて7馬身差で完勝した。

最後の直線は完全に独走。鞍上が残り100m地点で後ろを振り返る余裕を見せたほどで、そこから脚が止まらなかった。とてつもなく強い内容でラスト5Fは12秒7-12秒2-11秒9-11秒8-11秒3。最後までスピードは落ちず理想的な内容だった。福島最終週であることを考慮すれば、かなり価値は高い。AA評価かAAA評価にすべきか悩んだが、少しおまけでAAA評価とする。クラシック戦線での活躍が十分に期待できる馬だ。

7月20日(土) 福島6R 優勝馬 ミーントゥビー 指数-2 評価B
10番枠からはっきりと出遅れ。そこから中団馬群の後ろまで挽回し、道中は中団中目を追走。3~4角で中団中目から上がって4角手前で勢いがつくと、4角では外を回りながら前との差を一気に詰めた。直線では馬場の良い外に誘導されると、しぶとく伸び始めた。直線序盤ではまだ中団だったが、ラスト1Fで前をまとめて差し切り半馬身差で勝利した。

上がり3Fタイム35秒1、ラスト2F12秒0-11秒8はまずまずのレベルだが、芝1200mではっきり出遅れながら勝利したことは評価できる。なかなか強くなりそうだ。

7月21日(日) 福島5R 優勝馬 ブラックルビー 指数-2 評価B
7番枠から五分のスタートだったが、促されるとダッシュよく上がって好位の外を確保。道中は3番手を追走して3~4角で徐々に進出していった。4角で外からクモヒトツナイが並びかけてくると、それに抵抗して先頭に立った。直線序盤でしぶとく伸びて3/4差。ラスト1Fも踏ん張り2馬身差で勝利した。

上がり3Fタイム36秒5、ラスト2F12秒1-12秒1は「まずまず」の評価止まりになってしまうが、好位追走から早め先頭というレース内容は非の打ちどころがない。使われながら着実な上昇が期待できそうな馬だ。

7月21日(日) 福島6R 優勝馬 アブキールベイ 指数-2 評価AA
11番枠から五分のスタートを切ったが、外へ逃げようとして大きく膨らんだ。そこから徐々に内に寄せていき、3列目の外を追走した。3~4角半ばで勢いよく進出して前との差を詰め、2列目の外付近で直線へ。直線では外から回転の速いフットワークでぐんぐん伸びて4番手に上がり、ラスト1Fで前をしっかり捉えて半馬身差で勝利した。

走破タイムは1分11秒0と平凡、これは後に疲れを残さない意味で悪くない。上がり3Fタイム35秒0もまあまあ良い。驚かされたのはラスト2F12秒1-11秒3というラップで、ラスト1Fで0.8秒も急加速していることだ。ラップタイムの計測法が以前と変わってしまっており、昨秋以降は以前の数字とのすり合わせに悩んできた。以前の新馬戦ならラスト2F同ラップでフィニッシュできていればほぼOP、重賞級と評価できた。

昨秋以降は以前と比較してラスト1Fを0.3秒~0.4秒ほどマイナス評価で良いかと考えたが、それでは甘く、どうやらマイナス0.5秒評価くらいが妥当のようだと考えがまとまりつつある。そこにきて今回ラスト2F12秒1-11秒3が出現。今回は芝1200mなので芝1800m、2000mと比較すれば同じ数字でも割引評価をすべきではあるが、それでも速い。さてアブキールベイが今後どのような成績を残していくか、興味深いところだ。

7月20日(土) 小倉5R 優勝馬 ジュンライデン 指数-2 評価B
7番枠から五分のスタートだったが、促されると加速がついて好位の外を確保。向正面では自然と先頭列2頭の外に並びかけていった。終始行きっぷりが良く、4角では先頭を狙ったが、コーナーワークでメイショウツヨキが先頭で直線へ。同馬がしぶとくなかなかかわせなかったが、ラスト1Fでしっかり伸びて3/4差で勝利した。

上がり3Fタイム36秒1、ラスト2F12秒0-12秒0はまずまずのレベル。ただ好位からしっかり伸びる優等生なレースぶりでの勝利は高い素質を感じさせた。

ジュンライデンの半兄は昨年の京都新聞杯、神戸新聞杯を勝利したサトノグランツ。他にもきょうだいに重賞級の活躍馬がズラリと揃う良血馬であることから、きょうだいと同様に使われながら将来的にはOP級まで強くなっていくだろう。

7月21日(日) 小倉1R 優勝馬 ワンモアスマイル 指数-8 評価A
7番枠からやや出遅れたが、そこから無理なく後方からの追走。向正面で最後方のベストファンタジーがマクっていったが、同馬を追いかけることなく、ゆっくりとポジションを上げ、好位の外で3角へ。3~4角の外から前との差を詰め、4角で先頭に並びかけた。内のアロンディが外に張ったことでかなりの距離ロスが生じたが、直線では他馬とはまるで違う脚色で伸び、直線序盤で先頭列に並びかけた。ラスト1Fで抜け出して2着に3馬身、3着には5馬身以上の差をつけて圧勝した。

前走6月東京の新馬戦は2番手を追走。ラスト2Fで1番人気のソロモンが仕掛けてくるのを待っていたところをモンドデラモーレに内から抜けられての2着。負けて強しの競馬でここでは断然の1番人気に支持され、その期待に応えた。ここでは1クラス上の指数を記録。今後も着実に力をつけてOP、重賞で活躍する馬となっていくだろう。

7月21日(日) 小倉5R 優勝馬 ブルーレース 指数-5 評価AA
8番枠から出遅れ。行きっぷりがひと息で後方に置かれてしまうのかと思われたが、進路を内に切り替えると最内からスルスルと先団まで上がっていった。3角手前で2列目の最内を確保すると息を入れ、4角でも最内を通って直線序盤で逃げ馬の外に誘導。そこから追われると後続をぐんぐん引き離した。直線序盤で1馬身のリードをラスト1Fで3馬身半差まで広げ、3着馬に8馬身差以上の差をつけて圧勝した。

走破タイムは1分10秒1、これは平凡だが次走以降に向けては疲れも少なく好材料。ラスト2Fは12秒1-11秒7でこれはなかなか評価できる。今回は結果的に指数がなかなか良いものとなった。

スタートしてからポジションを取るまでにかなり無駄な脚を使ったことを考えれば、指数以上の評価ができるだろう。今年は中京開催という点がどうかという不安はあるが、小倉2歳Sの有力候補と見る。

2024年7月3週目の2歳馬PP指数①,ⒸSPAIA


7月20日(土) 札幌1R 優勝馬 ポッドベイダー 指数-7 評価A
5番枠からトップスタートを決めて楽にハナを主張して先頭。そこからも行きたがるのをコントロールしながら逃げた。3~4角で外からニシノクードクールが迫ってきても手応え十分に先頭を維持して直線へ。直線を向いても逃げ脚は衰えず、リードを1馬身半に広げた。ラスト1Fでもそのまま踏ん張って1馬身3/4差で勝利した。

前走6月函館のカルプスペルシュが勝利した新馬戦は、上位4頭までの着差がクビ、クビ、クビと僅差の決着。上位4頭全てがなかなかの好指数を記録した一戦だった。そこで2着だったのがポッドベイダー。新馬戦も好スタートだったが、今回はそれ以上のスタート。新馬戦は道中2番手を追走し、勝利目前のところを差されての2着で負けて強しだった。ここではその走りが評価され断然の1番人気に支持され、その人気に応えた。

走破タイムの1分8秒8は、1レース目で馬場状態が良かったことを考慮してもなかなか優秀。上がり3Fタイム33秒9も上々。結果、指数は未勝利クラスとしては優秀なものとなった。OP級の伏兵として活躍が期待できそうな馬だ。

7月20日(土) 札幌5R 優勝馬 ナチュラルライズ 指数-21(ダート) 評価AAA
4番枠から五分のスタートだったが、すっと上がって好位の中目を確保。スピードがあり過ぎるようで、先頭に接近してクビを上げる場面もあった。そのあとは折り合いもついて、向正面では淡々と好位の内目を追走。3角過ぎから先頭のベルベルコンパスが後続を突き放しにかかったところで、鞍上の横山武史騎手がゴーサイン。あっという間に差を詰めてベルベルコンパスに並びかけ、直線では2頭のマッチレースとなった。ラスト1F手前でベルベルコンパスを競り落としたが、そこからも脚色は衰えず、2着に6馬身差をつけて圧勝。3、4着馬には3秒3という大差をつけた。

走破タイム1分45秒7は古馬を含めて同週の札幌ダ1700mではNO.1。上がり3Fタイム36秒9も古馬を含めて同週の札幌ダ中距離でNO.1だ。ラスト2F12秒3-12秒3はダート中距離としてはかなり優秀と言えるだろう。

走破タイムは2年前のペリエールが勝利した札幌新馬戦と同タイムだが、当時よりも今年のほうが時計がかかる馬場で、テンの入りもナチュラルライズの新馬戦のほうが遅い。よって指数はペリエールよりも明らかに上。結局、今回のナチュラルライズの指数は2年前の小倉新馬戦で驚異の高指数勝ちをしたヤマニンウルスと同等なものとなった。

新馬戦で古馬3勝クラス通用級の破格の指数を記録したナチュラルライズ。ただあまりにも優秀な指数を新馬戦で記録することは競走馬に大きな疲労を残すことが多い。今後の懸念点はヤマニンウルスの新馬戦後に述べたことと同じで、ここからは大事に大事に使ってほしい。

7月21日(日) 札幌1R 優勝馬 ミッドナイトゲイル 指数-12(ダート) 評価B
7番枠から好スタートを切り、減量騎手起用だったこともあってダッシュが速く、ハナを主張して逃げた。しかし、内からラヴィングユーが激しく抵抗。4角まで併走状態だったが、直線に向くと楽に競り落として直線序盤で3馬身リードを広げた。ラスト1Fでさらに差を広げて5馬身差で勝利した。

ミッドナイトゲイルも6月函館のカルプスペルシュが勝利した新馬戦でクビ+クビ差の3着でなかなか良い指数を記録していた。次走は連闘で使われ1番人気に支持されたが、新馬戦時ほどの指数では走れず2着だった。今回はデビュー3戦目で初ダート。それでも近2走の芝での走りが評価され、ダートの好成績馬を差し置いて1番人気に支持されていた。

今回はその人気に応えて初ダートながら好指数勝ち。これは高く評価できることだが、ダ1000m戦で、かつ減量騎手起用でのもの。また使い詰めており、今後の上積みにはやや疑問が残る。体調面が万全となったところで真価を問いたい馬だ。

7月21日(日) 札幌5R 優勝馬 キングスコール 指数-5 評価A
5番枠から好スタートを決め逃げそうな勢いだったが、1角で内のショウナンサムデイが上がってきたので、同馬を行かせてその外2番手を追走した。向正面でもコントロールしながら追走していたが、3角手前で外からテリオスララらにマクられ、それに抵抗する形で先頭を奪い返してペースアップ。そこから11秒台のラップを刻み続けた。最後の直線でも先頭を譲らず、直線序盤で1馬身のリードを奪うと、ラスト1Fでさらに差を広げて3馬身差で完勝した。

上がり3F34秒8、ラスト2Fは11秒6秒-11秒5でともにまずまず。走破タイムが1分47秒8のレコード勝ちなので過剰評価を受けてしまっているようだが、今回の指数は秀逸と言うわけではなく普通に強いレベル。ソダシが記録したレコードを更新したということで同馬と比較されているが、函館新馬戦時の走りが当時の計測法でラスト2F11秒7-11秒6と秀逸だったソダシとの比較から、現状ではまだ厳しい印象がある。そうは言っても競走馬を着実に成長させる矢作芳人厩舎の所属馬だ。使われながら着実に上昇していくだろう。

2024年7月3週目の2歳馬PP指数②,ⒸSPAIA


※パワーポイント指数(PP指数)とは?
●新馬・未勝利の平均勝ちタイムを基準「0」とし、それより価値が高ければマイナスで表示
例)ナチュラルライズの指数「-21」は、新馬・未勝利の平均勝ちタイムよりも2.1秒速い

ライタープロフィール
山崎エリカ
類い稀な勝負強さで「負けない女」の異名をとる競馬研究家。独自に開発したPP指数を武器にレース分析し、高配当ゲットを狙う! netkeiba.com等で執筆。好きな馬は、強さと脆さが同居している、メジロパーマーのような逃げ馬。

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