【スプリンターズS】複回収率179%の穴男、距離短縮ローテに悲願かける牝馬…… データで導く穴馬候補3頭

鈴木ユウヤ

2023年スプリンターズS、データで導く穴馬候補,ⒸSPAIA

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データで見る「穴候補3頭」

今週からいよいよ秋のGⅠシーズンが開幕する。日曜の中山メインはスプリンターズS。下半期の国内最速馬を決める一戦だ。

コースに占めるコーナー部の割合が多い中山芝1200mが舞台とあって、過去に人気薄で好走した馬は大半が道中インコースを立ち回っていた。やはり枠順が重要なレースには違いない。

とはいえせっかくのGⅠ週、金曜日の枠順決定まで指をくわえて待つというのも味気ない。今回は様々な切り口のデータから、3頭の穴馬候補を導き出した。

「オーシャンS好走馬」がとにかく走る! エイシンスポッター

まず1頭目はエイシンスポッターの名前を挙げておきたい。重賞未勝利馬の身ではあるが、常に鋭く追い込んでくる末脚はロマンの塊だ。当初は出走順17番目だったが、トウシンマカオが熱発により回避を表明したことで、ギリギリ滑り込みが叶った。

同年オーシャンSでの着順別成績(過去10年),ⒸSPAIA


スプリンターズSでは、3月に同舞台で行われるGⅢ・オーシャンSの好走馬がよく穴を開ける。過去10年で、同年オーシャンSの3着以内馬は【2-3-1-6】勝率16.7%、複勝率50.0%、単回収率556%、複回収率220%だ。これには14年新潟代替時のスノードラゴン(オーシャンS2着→スプリンターズS13番人気1着)も含まれるのでちょっと眉唾の部分もなくはないが、仮にそれを除いても単複回収率は180%を超えている。

反対に、オーシャンSで4着以下に敗れた馬は【0-1-1-21】で複勝率わずか8.7%。トリッキーなコースゆえに、適性がある馬は何度も好走し、そうでない馬はなかなか克服できないようだ。

エイシンスポッターはそのオーシャンSで3着と結果を出した。ここ2走は着順こそ崩しているが、CBC賞は開幕週の中京、異常な前残り馬場での上がり最速6着。セントウルSもやはり開幕週の前残り馬場で、上がり32.5秒を使うも7着と内容は決して悪くない。

GⅠで徹底逃げタイプも複数いる今回はハイペース濃厚であり、上手に捌ければという注文はつくが、一気に差し切るシーンがあっても驚けない。

中山芝1200mの穴男・丸田恭介が相棒を導く ナランフレグ

2頭目は昨年の高松宮記念勝ち馬・ナランフレグをチョイスした。こちらはなんと言っても15戦連続で手綱を執る予定の相棒、丸田恭介騎手が心強い味方だ。

丸田恭介騎手の中山芝1200m成績(過去5年),ⒸSPAIA


過去5年の中山芝1200mで、丸田騎手は勝率10.8%、複勝率29.7%、単回収率261%、複回収率179%という見事な成績を残している。ここで興味深いのは、単勝オッズ100倍以上の馬【0-0-0-6】は仕方ないとして、単勝オッズ10倍未満の人気馬で【0-1-0-6】と苦戦傾向にあること。単勝オッズが2桁になる「ほどよい伏兵」でこそ、その騎乗が冴え渡る。「中山芝1200mの穴男」と呼ぶにふさわしいデータだ。

ナランフレグ自身、高松宮記念を勝った後はあまり着順はよくないが、斤量不利のGⅢは叩きとして使っている、安田記念は距離が合わない、という事情もあった。22年高松宮記念8番人気1着、22年スプリンターズS5番人気3着、23年高松宮記念9番人気4着と、国内のスプリントGⅠなら人気以上に走ってくる存在だ。前走のキーンランドCは外伸びの馬場で1枠2番を引いてしまい、荒れた内を突いての不発。その大敗で見限られるようなら、古豪健在の姿に期待するのも面白い。

「マイルからの得意距離戻り」に激走あり! メイケイエール

最後は9度目のGⅠ挑戦で悲願の初制覇を狙うヒロイン・メイケイエールを推す。重賞6勝、昨年セントウルSでは後の高松宮記念勝ち馬ファストフォースを子ども扱いするなど、馬力がGⅠ級なのは誰しもが知る通りだ。

反面、とにかく気性面が難しく、直近4走は14着、5着、12着、15着と大敗続き。応援するファンは多かれど、馬券的にはそろそろ人気を落としてくる頃合いだろう。しかしそれならばむしろ好都合。私は今回こそメイケイエールの買い時だと見ている。

前走距離別成績(過去10年),ⒸSPAIA


過去10年のスプリンターズSにおいて、前走が1600mだった馬は【2-2-1-8】で複勝率38.5%。といっても、パターンとしてはグランプリボス(13年3番人気7着)やシュネルマイスター(22年3番人気9着)のような「マイラーの参戦」ではなく、スプリンターが番組の都合で仕方なくヴィクトリアマイルや安田記念を使われてからの「得意距離戻り」が狙い目だ。実際、前記のうち1200m戦初出走だった馬を除くと【2-2-1-5】複勝率50.0%、複回収率175%にアップする。

メイケイエールにとっても、その強すぎる前進気勢からして距離短縮は当然プラス材料だ。そもそも春は高松宮記念で不良馬場に泣き、その後フレグモーネでヴィクトリアマイルを回避、安田記念は「最終追い切りなし」の奇策がハマらなかっただけとも解釈できる。“衰えた”と見限るのは早計だ。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、X(Twitter)やブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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