【凱旋門賞】スルーセブンシーズ快挙なるか 「ステイゴールドの血、海外遠征に強い説」を検証してみた

鈴木ユウヤ

父ステイゴールド系の主な海外遠征実績,ⒸSPAIA

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日本代表・スルーセブンシーズの勝算は?

10月1日にフランスのパリロンシャン競馬場で凱旋門賞(GⅠ・芝2400m)が行われる。日本からはただ1頭、スルーセブンシーズ(牝5・尾関知人厩舎)が出走を予定している。

年初にはまだ3勝クラスに在籍していた同馬だが、1月の初富士Sを勝ってOP入りすると、続く中山牝馬Sを好タイムで勝ち、重賞初制覇。3か月後には春のグランプリ・宝塚記念で10番人気の下馬評をくつがえして2着に入った。このところの本格化は目覚ましい。

ブックメーカーでの1番人気は無敗のフランスダービー(ジョッケクルブ賞)馬・エースインパクトで、“キングジョージ”を制したフクムがそれに続く。スルーセブンシーズは他出走予定馬の動向にもよるが、7番人気前後になると目される。GⅠ勝ちの勲章こそないものの、「世界最強馬」イクイノックスに肉薄した実績は現地でも一定の評価を得ているようだ。

創設以来、未だ欧州馬以外に勝利を許さない凱旋門賞。1969年スピードシンボリに始まり、エルコンドルパサー、ディープインパクト、ナカヤマフェスタ、オルフェーヴル、キズナ……といった、半世紀以上にわたる日本馬の挑戦を跳ね返し続けてきた。今年こそ、その重い扉をこじ開けることはできるのか。

そんなスルーセブンシーズを後押しするものがある。それが、祖父ステイゴールドが持つ「血の力」だ。

「ステイゴールドの血は海外遠征に強い」は本当か?

スルーセブンシーズの父はドリームジャーニー。その全弟が凱旋門賞2着2回(特に2012年は本当に惜しかった……)のオルフェーヴルという血統だ。そのドリームジャーニー、オルフェーヴル兄弟を輩出した大種牡馬がステイゴールドである。

ステイゴールドは現役時代、長らく重賞すら未勝利のままGⅠ戦線での活躍を続け“シルバーコレクター”的人気を博したのち、晩年にドバイシーマC(当時はGⅡ)でファンタスティックライトを差し切り、ラストランの香港ヴァーズで悲願のGⅠ制覇。海外遠征で掴んだ栄冠とともに種牡馬入りした。

初めて目にする異国の地でも物怖じしない、その強い闘争心が遺伝するから……かどうかは分からないが、しばしばステイゴールドの血を持つ馬は「海外に強い」と評される。

父ステイゴールド系の海外遠征での主な活躍,ⒸSPAIA


例を挙げると、産駒のナカヤマフェスタが凱旋門賞で2着、オルフェーヴルも前記の通り2着2回。なお、前哨戦のGⅡ・フォワ賞では連覇を果たしている。日本ではGⅠに届かなかったウインブライトが香港で春秋王者になり、孫世代からはマルシュロレーヌがBCディスタフを制して日本馬初のアメリカダートGⅠ勝ちという偉業を達成。ウシュバテソーロが今年のドバイワールドCを勝ち、約9億円の賞金を手にした。ほかにもシルヴァーソニック(レッドシーターフH)など、海外での実績は枚挙にいとまがない。

この「ステイゴールドの血、海外遠征に強い説」を実際にデータでも検証してみた。

父ステイゴールド系の海外遠征成績,ⒸSPAIA


父ステイゴールド系のJRA所属馬が海外レースに出走した際の全成績は【10-7-1-18】勝率27.8%、複勝率50.0%。JRAでの馬券発売があったレースに限って回収率も計算すると、単回収率143%、複回収率81%となる。ちなみに、JRA発売がなかったBCディスタフのマルシュロレーヌは現地オッズで単勝50.9倍のビッグショット。データで見ても、たしかにファンの想像を超えた走りを見せていることが分かる。

焦点はこの成績が「非・ステイゴールド系」より有意に高いかどうかだろう。期間を(父ステイゴールド系と同じ)2010年以降として地道に数えてみる。すると、そちらの海外成績は【60-42-40-323】勝率12.9%、複勝率30.5%。単回収率50%、複回収率56%だった。やはり父ステイゴールド系の方が勝率で15%、複勝率で20%ほど高く、馬券妙味の面でも圧倒的だった。説立証といっていいだろう。

そんな「血の力」と、日本のファンの期待を一身に背負って、スルーセブンシーズが決戦に向かう。大海原を越えて臨む、凱旋門賞制覇という夢への旅路。今年こそ黄金色のメダルを手にして、その旅程を無事に終えてくれることを心待ちにしたいと思う。

<ライタープロフィール>
鈴木ユウヤ
東京大学卒業後、編集者を経てライターとして独立。中央競馬と南関東競馬をとことん楽しむために日夜研究し、Twitterやブログで発信している。好きな馬はショウナンマイティとヒガシウィルウィン。

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