【クイーンS】圧倒的内枠有利で注目すべき「機動力型の血脈」を持つ馬とは 有力馬の血統解説
坂上明大
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傾向解説
札幌競馬2週目に行われる牝馬重賞・クイーンS。2015~19年は開幕週に行われていましたが、2週目に戻った近年も綺麗な馬場状態での開催が続いています。ただ、2020年1着レッドアネモス(11番人気)など穴馬の激走が多い点も本レースの特徴。本記事では血統面を中心に、クイーンSで求められる適性を整理していきます。
まず紹介したいデータは枠番別成績。1週目開催の頃から継続しているのが内枠有利の傾向です。札幌芝1800mという機動力が求められるコースのうえ、前述の通り綺麗な馬場状態で行われるクイーンSでは内枠から器用に立ち回る競馬が理想となっています。特に1~2枠の成績は特筆すべきもので、今年も内枠を引いた馬には大注目です。
血統面ではネオユニヴァース系の活躍が目立ちます。同馬は母母Silken WayがSt. Simon系の血筋を豊富に引き継ぎ、母ポインテッドパスはHyperionの5・7×4やFair Trialの7×5などを持つイギリス産馬。長い繋と曲飛節が大きな特徴で、瞬発力自慢が揃ったサンデーサイレンス産駒では珍しい機動力タイプの活躍馬でした。
代表産駒ヴィクトワールピサもトリッキーな中山コースを得意としており、その仔であるスカーレットカラー(2019年2着、2020年3着)とレッドアネモス(2020年1着)は本レースでも好走。今年は該当馬がいませんが、ネオユニヴァース→ヴィクトワールピサ系の分析はクイーンSの予想にとって大きなヒントとなりそうです。
ネオユニヴァースが内包する血の中で最も注目しているのがFair Trial。同馬は機動力や粘り強さを子孫に伝えており、ネオユニヴァースが子孫に伝える機動力の源泉となっていると考えています。
この血を内包する有力種牡馬はBlushing Groom、Danzig、Lyphardなど。どの血も6代以前に隠れることが多いため、昨年の1、2着馬のようにこれらを組み合わせてFair Trialの血を増幅した機動力型が本レースでは狙い目といえるでしょう。また、Nureyev≒Sadler's Wellsなどと組み合わせるパターンも要注目です。
血統解説
・ドゥーラ
父ドゥラメンテ、母父キングヘイローからFair Trial血脈を豊富に受け継ぎ、同コースで行われた札幌2歳Sでも勝利。洋芝適性や小回り適性については疑う必要はないでしょう。ただ、2400mのオークスでも後方からになった追い込み馬。1800mなら道悪になった方が好走率が上がりそうです。
・ライトクオンタム
母イルミナントは2016年ゲイムリーS優勝馬。Danzigの血を母方に持つディープインパクト産駒にはジェンティルドンナ、サトノダイヤモンド、ダノンプレミアムなど機動力タイプが多く、これはLyphardとDanzigを中心にFair Trial血脈が強調された結果といえるでしょう。オークスからの距離短縮も間違いなくプラスで、前走から大幅なパフォーマンスアップが期待できる一頭です。
・ジネストラ
母は産駒全9頭が3勝以上を挙げる名繁殖牝馬ハッピーパス。ロードカナロア産駒の本馬はコディーノ(2012年朝日杯FS2着、2013年皐月賞3着)、チェッキーノ(2016年オークス2着)などの3/4同血の妹。母母がLady Juror(Fair Trialの母)血脈を豊富に持ち、キングカメハメハ父系との組み合わせで機動力型の活躍馬を量産しています。本馬も機動力に優れ、札幌でも1戦1勝。自分の競馬ができれば十分にチャンスのある良血馬です。
ライタープロフィール
坂上明大
1992年生まれ、岐阜県出身。元競馬専門紙トラックマン(栗東)。2019年より競馬情報誌サラブレにて「種牡馬のトリセツ」「新馬戦勝ち馬全頭Check!」などの連載をスタートさせ、生駒永観氏と共同執筆で『血統のトリセツ』(KADOKAWA)を上梓。現在はYouTubeチャンネル『競馬オタク』を中心に活動し、パドック解説や番組出演、映像制作、Webメディアでの連載もこなす。
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